労働問題758 退職金の性質について教えて下さい。

この記事の結論
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退職金には、支払義務があるものと、裁量に委ねられるものがある

退職金には、使用者に支払義務があると考えられる「賃金」に該当するものと、就業規則等に根拠がなく支給が使用者の裁量に委ねられている「任意的恩給的給付」とがあります。

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支給要件・基準が就業規則で定められていれば「賃金」に該当する

支給要件や支給基準が就業規則で定められ、退職金の支給が労働契約の内容になっている場合には、労働の対償としての「賃金」に該当し、通貨払・直接払・全額払等の賃金支払の原則が適用されます。

 退職金は、労働基準法上の「賃金」に該当するかどうかで、法的な取扱いが大きく異なります。退職金制度の設計や運用を検討するにあたっては、まず、この性質の違いを正確に理解しておく必要があります。

 会社側専門の弁護士の立場から、退職金の性質と、その法的な取扱いを解説します。

01退職金の2つの性質

 退職金には、使用者に支払義務があると考えられるものと、就業規則などに根拠がなく、支給するか否かが使用者の裁量に委ねられているものとがあります。両者は、外見上は同じ「退職金」という名称であっても、法的な性質はまったく異なります。

02任意的恩給的給付とは

 退職金の支給について、もっぱら使用者の裁量に委ねられており、退職金の支給が労働契約の内容になっているとは認められないものは、任意的恩給的給付と位置づけられ、労働基準法上の「賃金」には該当しません。会社が功労に報いる目的で、その都度任意に支給を決定するようなケースが、これに当たります。この場合、労働者には、退職金を当然に請求する権利はなく、会社が支給するかどうか、いくら支給するかを、個別に判断することができます。

03賃金に該当する退職金とは

 これに対し、支給要件や支給基準などについて就業規則で定めているなどして、退職金の支給が労働契約の内容になっている場合には、その退職金は、労働の対償としての「賃金」に該当します。この場合、退職金は、労働者が労働契約上当然に請求できる権利となり、会社は、就業規則等で定めた要件を満たす限り、支払いを拒むことはできません。

04賃金に該当する場合の支払原則

 退職金が「賃金」に該当する場合には、労働基準法上の賃金の支払に関する原則が適用されます。具体的には、「通貨払」(通貨で支払わなければならない)、「直接払」(労働者本人に直接支払わなければならない)、「全額払」(全額を支払わなければならず、一方的な相殺は原則として許されない)などの原則です。これらの原則に反する取扱いは、労働基準法違反となり得るため、注意が必要です。

05会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、退職金制度をどのような性質のものとして運用したいのかを、あらかじめ明確にしておくことが重要です。退職金の支給を確定的な労働条件として位置づけたいのであれば、就業規則や退職金規程に、支給要件・支給基準を明確に定めておく必要があります。逆に、あくまで会社の裁量による任意の給付として位置づけたいのであれば、就業規則等に規定を置かないか、置く場合にも支給の裁量性が明確に分かる記載にしておくことが重要です。

 どちらの性質にするかを曖昧にしたまま運用すると、実際の支給実績の積み重ねなどから、「支給が労働契約の内容になっていた」と評価され、意図せず賃金該当性が認められてしまうこともあります。退職金制度を設計・運用する際には、この点を意識した規程の整備が不可欠です。

06よくある質問(FAQ)

Q. 退職金は、必ず「賃金」に該当しますか。

必ずしも該当しません。支給要件や基準が就業規則で定められ、労働契約の内容になっている場合には「賃金」に該当します。他方、支給がもっぱら使用者の裁量に委ねられている場合には、任意的恩給的給付として「賃金」には該当しません。

Q. 退職金が「賃金」に該当すると、何が変わりますか。

通貨払・直接払・全額払等の、労働基準法上の賃金支払の原則が適用されます。また、労働者は当然に退職金を請求できる権利を持ち、会社は就業規則等の要件を満たす限り、支払いを拒むことができません。

Q. 退職金の性質を任意の給付にしたい場合、何に気をつけるべきですか。

就業規則等に支給要件・基準を明確に定めないことが重要です。曖昧な運用や支給実績の積み重ねによって、意図せず労働契約の内容として賃金該当性が認められてしまうことがあるため、規程の整備段階から注意が必要です。

経営上のポイント 退職金には、使用者に支払義務があると考えられる「賃金」に該当するものと、就業規則などに根拠がなく支給が使用者の裁量に委ねられている「任意的恩給的給付」とがあります。支給がもっぱら使用者の裁量に委ねられ、退職金の支給が労働契約の内容になっているとは認められないものは、労基法上の「賃金」に該当しません。これに対し、支給要件や支給基準が就業規則で定められ、労働契約の内容になっている場合には「賃金」に該当し、通貨払・直接払・全額払等の賃金支払の原則が適用されます。会社側としては、退職金制度をどちらの性質として運用したいのかを明確にし、就業規則・退職金規程の整備を通じてその意図を反映させることが重要です。曖昧な運用は、意図せず賃金該当性が認められるリスクにつながります。退職金制度の設計・運用は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。退職金制度の設計・運用でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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