労働問題734 労働審判規則2条で規定されている当事者の責務とはどういうものですか?
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当事者には、早期の主張・証拠提出と、迅速な進行への協力義務がある 労働審判規則2条は、当事者の責務として、①早期の主張・証拠の提出、②計画的かつ迅速な手続進行への努力、③信義に従った誠実な手続追行を定めています。3回以内での審理終結は、当事者の協力なしには実現できません。 |
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これらの責務は、他の具体的な規定と結びついて機能する 早期の主張・証拠提出義務は、申立書・答弁書の記載事項や証拠提出の期限に関する規定(規則9条・16条・27条)と結びついています。抽象的な理念ではなく、具体的な手続ルールの根拠となっている点が重要です。 |
労働審判規則2条は、当事者の責務として、①早期に主張および証拠を提出し、②労働審判手続の計画的かつ迅速な進行に努め、③信義に従い誠実に労働審判手続を追行しなければならないと定めています。この規定は、労働審判が原則3回以内の期日で審理を終結する迅速な手続であることを支える、当事者側の心構えを示すものです。
会社側専門の弁護士の立場から、この3つの責務が実際の手続の中でどのように機能しているかを解説します。
01早期の主張・証拠提出義務
1つ目の責務は、早期に主張および証拠を提出する義務です。これは、労働審判委員会が速やかに争点および証拠の整理を行えるようにするために定められたものです。労働審判規則9条、16条、27条では、申立書や答弁書の記載事項、証拠書類の提出等について、具体的な定めが置かれています。
すなわち、申立書には、申立ての趣旨・理由を明確に記載することが求められ(規則9条)、答弁書にも、これに対する認否や、答弁を理由づける具体的な事実など、充実した記載が求められます(規則16条)。そして、主張・証拠書類の提出は、やむを得ない事由がある場合を除き、第2回期日終了までに終えなければなりません(規則27条)。早期の主張・証拠提出義務は、こうした個別の規定を貫く基本理念として位置づけられています。
02計画的かつ迅速な手続進行への努力義務
2つ目の責務は、労働審判手続の計画的かつ迅速な進行に努める義務です。当事者は、3回以内の期日において審理を終えられるよう、計画的に準備を行い、迅速な手続進行に努める義務を負います。
これは、当事者だけに課された義務ではありません。労働審判委員会や労働審判官の側にも、手続の段階ごとに具体的な手続指揮に関する規定が設けられています。たとえば、第1回期日は申立てから40日以内に指定され(規則13条)、第1回期日では争点・証拠の整理と可能な範囲での証拠調べが行われます(規則21条1項)。当事者の努力義務と、裁判所側の手続指揮の枠組みとが、両輪となって迅速な審理を支えているということです。
03信義に従った誠実な手続追行義務
3つ目の責務は、信義に従い誠実に労働審判手続を追行する義務です。これは、当事者の手続追行に民法1条2項の信義則の適用があることを前提に、当事者が信義誠実に手続を追行すべき義務を、労働審判規則の中で明文化したものです。
労働審判手続は、3回以内の期日において審理を終結しなければならないという厳格な制約のもとで運営されています。これは、当事者が協力しなければ達成することが難しいものです。たとえば、根拠のない主張の蒸し返しや、不必要に手続を長引かせるような対応は、この責務に反するものとして評価される可能性があります。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側にとって、この3つの責務は、単なる努力目標ではなく、実務対応の指針として機能します。第一に、答弁書と証拠は、第1回期日までに可能な限り出し切ることを基本方針とすべきです。第二に、期日の進行に協力的な姿勢を示すことは、労働審判委員会の心証にも影響し得ます。第三に、補充書面の多用や、根拠の乏しい主張の繰り返しは、誠実な手続追行義務との関係でも避けるべき対応です。
経営者が見落としやすいポイント
労働審判は、会社側が防御に徹すればよいという発想だけでは、必ずしもうまくいきません。当事者には手続進行への協力義務があるため、真摯に手続に向き合い、早期に主張・証拠を出し切る姿勢そのものが、労働審判委員会からの信頼、ひいては望ましい解決につながります。
05よくある質問(FAQ)
Q. 労働審判規則2条は、具体的にどのような義務を定めていますか。
当事者の責務として、①早期に主張・証拠を提出する義務、②労働審判手続の計画的かつ迅速な進行に努める義務、③信義に従い誠実に手続を追行する義務の3つを定めています。
Q. 早期の主張・証拠提出義務は、他のどの規定と関係していますか。
申立書の記載事項(労働審判規則9条)、答弁書の記載事項(同16条)、主張・証拠書類の提出期限(同27条)と結びついています。抽象的な理念にとどまらず、具体的な手続ルールの根拠となっています。
Q. 信義誠実手続追行義務は、どのような場面で問題になりますか。
根拠のない主張の蒸し返しや、不必要に手続を長引かせるような対応は、この義務に反するものとして評価される可能性があります。労働審判は3回以内の期日で審理を終結する厳格な制約があり、当事者の協力が不可欠だからです。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日