労働問題733 労働審判の「主文」及び「理由の要旨」について教えてください。

この記事の結論
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主文は「判決主文型」と「調停条項型」のいずれでもよい

労働審判委員会は、主文において、権利関係の確認や、金銭の支払等の給付を命じ、解決に相当な事項を定めることができます(労働審判法20条2項)。表現形式は、判決に似た「命じる」型と、合意に似た「支払う」型のいずれでもよいとされています。

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理由の要旨は、定型的で簡潔なものになることが多い

労働審判は迅速な解決を目的とする手続であり、異議申立てにより失効する性質を持つため、理由の要旨は、判決の理由のような詳細な記載ではなく、定型的で簡潔なものになることが多いと考えられます。

 労働審判が示されるときは、主文および理由の要旨を記載した審判書が作成されます。会社側としては、この主文と理由の要旨が、それぞれどのような性質を持つのかを理解しておくことが重要です。

 会社側専門の弁護士の立場から、労働審判の主文と理由の要旨について解説します。

01主文で定められる内容(労働審判法20条1項・2項)

 労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係および労働審判手続の経過を踏まえて、労働審判を行います(労働審判法20条1項)。そして、労働審判においては、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命じ、その他個別労働関係民事紛争の解決をするために相当と認める事項を定めることができます(同20条2項)。この定められる内容が、審判書の「主文」に記載されることになります。

02判決主文型と調停条項型

 労働審判の主文は、表現形式として2つの型があります。一つは、「相手方は、申立人に対し、○○万円を支払え。」というように、労働審判委員会が当事者に命じる、判決の主文に類似した「判決主文型」です。もう一つは、「相手方は、申立人に対し、○○万円を支払う。」というように、当事者間の合意と同様の表現をとる「調停条項型」です。

 いずれの形式でもよいとされており、労働審判の内容や事案の性質に応じて、適宜使い分けられるのが通常です。実務上は、労働審判委員会が調停段階で当事者双方に示していた調停案の内容を、そのまま労働審判の主文とする調停条項型が用いられる例が多く見られます。これは、調停での話し合いの延長線上にある解決として、労働審判が位置づけられる場合が少なくないことを反映しています。

主文の2つの形式
判決主文型 「○○万円を支払え。」のように、委員会が当事者に命じる形式
調停条項型 「○○万円を支払う。」のように、当事者間の合意と同様の形式

03理由の要旨の性質

 労働審判の理由の要旨については、判決のような詳細な事実認定や法的根拠の説明が展開されるとは限りません。労働審判手続が迅速な解決を目的としている手続であること、そして労働審判が当事者からの適法な異議申立てによって失効するものであることから、理由の要旨は、定型的で簡潔なものになることが多いと考えられます。

 これは、労働審判制度の性質上、合理的な帰結といえます。労働審判に異議が出れば効力を失い、あらためて訴訟で審理が行われることになるため、判決のように、確定した権利関係を将来にわたって拘束する詳細な理由付けを尽くす必要性は、相対的に低いといえるためです。

04会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、労働審判の主文がどちらの形式であっても、その内容が法的効果を持つという点は変わらないことを理解しておく必要があります。「調停条項型」だからといって、拘束力が弱いわけではありません。適法な異議申立てがなければ、いずれの形式であっても、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を持つことになります。

 また、理由の要旨が簡潔であることが多いという性質上、労働審判委員会がどのような理由で結論に至ったのかを、期日でのやり取りの中で見極めておくことが重要です。審判書に詳細な理由が記載されないことを前提に、期日での説明や質疑応答を通じて、労働審判委員会の心証を把握しておくことが、異議申立ての要否を判断するうえでも役立ちます。

05よくある質問(FAQ)

Q. 労働審判の主文には、どのような形式がありますか。

委員会が当事者に命じる形式の「判決主文型」と、当事者間の合意と同様の表現をとる「調停条項型」の2つがあり、いずれの形式でもよいとされています。実務では、調停案の内容をそのまま主文とする調停条項型が多く用いられます。

Q. 調停条項型の主文は、判決主文型よりも効力が弱いのですか。

効力に違いはありません。いずれの形式でも、労働審判は法的な効力を持ち、適法な異議申立てがなければ、裁判上の和解と同一の効力を有します。表現形式の違いにすぎません。

Q. 理由の要旨には、詳しい説明が書かれますか。

詳細な記載になるとは限りません。労働審判が迅速な解決を目的とする手続であり、異議申立てにより失効する性質を持つことから、理由の要旨は、定型的で簡潔なものになることが多いと考えられます。

経営上のポイント 労働審判委員会は、主文において、権利関係の確認、金銭の支払等の給付を命じ、解決のために相当な事項を定めることができます(労働審判法20条1項・2項)。主文の表現形式は、委員会が命じる「判決主文型」と、当事者間の合意に近い「調停条項型」のいずれでもよく、実務では調停案の内容をそのまま主文とする調停条項型が多く用いられます。どちらの形式でも法的効力に違いはありません。理由の要旨は、迅速な解決を目的とする制度の性質と、異議申立てによる失効の可能性から、定型的で簡潔なものになることが多いと考えられます。会社側としては、簡潔な理由の記載を前提に、期日でのやり取りを通じて労働審判委員会の心証を把握しておくことが重要です。異議申立ての要否の判断は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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