労働問題1038 遅刻を注意すると逆ギレして改善しない社員

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この記事の要点

まず原因を突き止める——原因が違えば対応方針が変わる

逆ギレする背景には「遅刻の既得権化」「社長が種を蒔いている」「舐められている」という典型的なパターンがある。原因が違うと対応が違ってくるため、まず原因の特定が大事

既得権化している場合——いきなり重い処分は失敗しやすい

長年認められてきた遅刻が「既得権」になっている場合、反発は強くなる。まず「これからはこういうわけにはいかない」という新しいルールを書面でしっかり説明してから、段階的に対応していくことが重要

社長が種を蒔いている場合——やってほしいことを素直に伝え直す

「成果さえ出してくれれば時間はこだわらなくていい」と社長が言い続けていた結果、遅刻が当然視されているケース。やってほしいことをはっきり伝え直すことが先決。ルール違反を黙認すると真面目な社員が「ばかばかしい」と思ってやめていく

一旦舐められると対応の難易度が上がる——弁護士に相談しながら進める

「言い返せばすぐ引いてくれる」と計算して逆ギレしているケース。物分かりのよいふりをしていると、ズルい社員はサボり始める。一旦舐められた場合、自力での秩序回復は難しいことがあるため、弁護士と一緒に対応方針を準備した上で臨むことが有効

01まず原因を突き止める——原因が分からないと的外れな対応になる

 そもそも就業時刻に出社して仕事を始めるのは当然のことです。遅刻は、本来就業時刻に出社しなければならないのにそれに遅れたということですから、改めなければいけません。にも関わらず逆ギレして遅刻を繰り返すというのは非常にイレギュラーな問題ケースです。

 ではなぜそんなことになっているのか——まずその原因を突き止めることが大事です。原因が分からないと適切な対応ができません。違った原因であるにも関わらず、別の原因があった場合の対応をしてしまうと、そもそも的外れになってしまうからです。

 よくある典型的な原因は大きく3つあります。①遅刻が「既得権」化している、②社長自身が種を蒔いている、③軽く見られている(舐められている)——です。それぞれの原因と対応を解説します。

02原因①:遅刻が「既得権」化している

 最もよくあるパターンの一つが、遅刻が「既得権」化しているケースです。前の上司が甘くて遅刻しても何も注意しなかった、あるいは見て見ぬふりをしていたために、「うちの会社は多少遅刻しても問題ない」という認識が定着してしまっているものです。

 その前の上司は「理解のあるいい上司だ」として割と評判が良かったりするわけです。しかし上司が変わったり方針が変わったりしたとたん、就業時刻に仕事を始めるのが当然なのに仕事を始めようとしない——10分・15分遅刻してやってきても注意しても反省していない——ということになります。

 こういった場合の反発が強くなりがちな理由は、いわば既得権を侵害される形になるからです。長年認めてもらってきたことを突然ダメだと言われると、反発が強くなるのは心理的にも分かります。こちらは正当なことを言っているつもりでも、反発を受けてしまうことがあります。

対応:新しいルールを書面でしっかり告知してから段階的に

 この場合の対応の方針として、まず「これからはこういうわけにはいかない」ということを書面でしっかり説明することが最初のステップです。

 「前の上司はそうだったのかもしれないけれど、これからは就業時刻までにしっかり仕事を開始してください。就業時刻になったらもう仕事を始めなければいけませんよ。今後それを守っていただけない方には、注意指導・懲戒処分などの対応をしていきます。また、万が一遅刻した時間分の給与を差し引いていなかったということであれば、今後は差し引いていきます」という形で、新しいルールを明確に告知してください。

 ノーワーク・ノーペイの原則として、遅刻した時間分の給与を差し引くことは当然の対応です。これを合わせて行うことで、遅刻することのデメリットを具体的に示すことができます。

「既得権化」対応の手順 STEP 1 「これからはこういうわけにはいかない」という新ルールを書面で告知
STEP 2 遅刻した時間分の給与控除を開始(ノーワーク・ノーペイの徹底)
STEP 3 それでも改善しない場合は注意指導・懲戒処分を段階的に実施

 ここで注意が必要なのは、いきなり重い処分に踏み切ることは失敗しやすいということです。反発が強い状況でいきなり重い処分に走ると、処分の相当性が争われたり、余計な紛争を招くことがあります。まず新しいルールをしっかり説明することが大事で、それでも守られなければ段階的に対応していくことが原則です。

03原因②:社長自身が種を蒔いている

 もう一つよくあるパターンが、社長自らが種を蒔いているケースです。「うちは成果さえ出してくれれば自由な社風だから、時間とかあまりこだわらなくていいよ。結果さえ出してもらえればいい」という方針で社長が対応し、実際にそういった発言を繰り返していたりすることがあります。

 その結果、その社員1人だけでなく、他の方々も割と遅刻しても何も注意されないという状態になっている会社がたまにあります。そういった会社において、後から遅刻を注意されても、なかなか納得できないのは当然です。「こちらも注意する理由はある、結果を出していれば時間は気にしなくていいよって社長が言っていたではないか」という反発は、ある意味筋が通っています。

対応:やってほしいことをはっきり伝え直す

 この場合の対応は、やってほしいことをはっきり伝え直すことが先決です。本当は就業時刻に出てきてほしいのであれば、「時間なんか気にしなくていいよ」などという発言をしてはいけません。やってほしいことを素直に伝えていれば、こういった行き違いも生じにくくなります。

 もしかしたら社長自らがハードルを上げている結果こうなっているのだと気づかれた場合は、「今まで自分が言ってきたことと変わってしまって申し訳ない」という部分を認めた上で、新しい方針を明確に伝え直すことが必要です。

 「いやいや、今まで通りでいいんだ」と言うなら、それはそれで会社の方針ですが、遅刻を容認する方針を取るという覚悟の上でやっているんだということは、明確に自覚しておいていただく必要があります。

結果を出せていない社員への対応の難しさ

 「成果さえ出してくれれば」という方針の場合でも、実際には結果を出せていない社員もいるわけです。結果が悪くてパフォーマンスが本当に良くない方に対して遅刻を注意したいのに、会社の方針として「遅刻はあまりこだわらない、結果を出してもらえればいい」という方針を取っていると、なかなか納得してもらいにくいところがあります。同じ雇用区分であるにも関わらず「自分だけ違う扱いを受けている」と言われると対応の難易度が上がります。

 それでも十分な理由をしっかり説明して対応すれば何とかなることもありますが、こういったケースは個別に弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。

04原因③:軽く見られている(舐められている)

 部下との関係を良好に保つために物分かりのよいふりをしている方が結構います。下手にやるべきことをしっかり伝えてしまうと反発を受けて人間関係が悪くなるから、物分かりがよさそうに「いいよいいよ」と振る舞っていれば、向こうも分かってくれてその分返してくれるだろう——そういった期待感でやっているケースです。

 そうやって物分かりがよさそうにしていれば、しっかりやってくれる方もいるかもしれません。しかし、ちょっとだらしない方、ずるい方だと、物分かりのよさそうな上司であれば「サボり始める」のです。「言い返したり威嚇すればすぐ引いてくれるだろう」というぐらいの計算で、逆ギレしてみたりすることもよくあります。

一旦舐められると対応の難易度が上がる

 まず、上司として・社長として、守ってほしいこと・やってほしいことをしっかり伝えられているかを今一度よく考えてみてください。「自分は物分かりがよすぎたのではないか」「相手に舐められる状況を自分で作ってしまったのではないか」という振り返りが大事です。

 一旦舐められてしまうと対応の難易度は上がります。自力でその秩序を回復するのが困難になることもあります。そういった場合はご相談ください。相手の言ってくることへの対応方針を弁護士と一緒に準備した上で臨むことで、秩序を回復できるケースは結構あります。相手は怒ることも多いですが、きちんと対応してれば道は開けます。

05採用難だからといってルール違反を容認してはいけない理由

 最近の状況からすると、売り手市場の中で単に社長や管理職の性格で軽く見られているというだけでなく、「採用するのにもお金かかりますよね。このぐらいのわがまま聞いてくれないんだったら他行っちゃうかも。やめられたら困るでしょ」——そんなぐらいのつもりで会社を軽く見てくるケースもあります。

 こういった場合は、ある意味本当に辛いですよね。実際に採用なかなかできない中でのことで、立場が弱くなっているわけです。

 しかし、遅刻してもいいよというところまで認めてしまうと、ルール違反をしてもいいですよということになります。ルール違反を容認すると、やっぱりその会社はルールを守らなくていいんだという雰囲気が蔓延します。その結果どうなるでしょうか。他の真面目に働いている社員たちがばかばかしくなってやめてしまうケース、あるいは自分もじゃあサボろうと思って自分もルールを守らなくなってしまうケースもあります。

人材獲得競争ではルール以外の魅力で勝負する

 人材獲得競争においては、ルールは守ることを前提として、他の魅力を提示して人を集め・保持できるようにすべきです。例えば給料が高いことが魅力だ、自分の経験を積んで色々スキルを身につけられる職場だ、あるいは上司・社長の対応が非常に透明で気分で叱るようなことがほとんどない、前言ってたことと逆なことを言ってるじゃないかなんてことがない——そういったところを見せてあげていい職場にしていく、そういった対応をすべきであって、「ルール違反オーケー」というところをアピールポイントにするべきではありません。かえって人がいなくなってしまうことがありますので、採用が難しい時代とはいえ、ルールを守ることはきっちりやらなければいけません。他のところで獲得競争に勝てるよう頑張っていきましょう。

06その他の原因——長時間労働・生活上のイライラ

極端な長時間労働でクタクタになっている場合

 他にも特殊な原因が色々ありえます。例えば極端な長時間労働をしていてクタクタになっている社員が遅刻した場合、「ちょっと遅刻したぐらいで文句を言うのはおかしいんじゃないか」という反発が出ることもあります。明け方まで仕事をさせられて、家に帰ってシャワーを浴びて仮眠を取るぐらいでまた出社したのに15分遅れたら、それで注意されると言い返したくなりますよね。ましてや残業代がちゃんと支給されていないような事態になったら、ますます言いたいことを言いたくなります。

 こういったケースでは、まず会社の側として長時間労働を解消する努力をするとか、残業代をきちんと払うとか、理解を示す対応が必要になってきます。社員の言い分に正当な部分がある場合は、その部分については向き合うことが大事です。

生活上のイライラがある場合

 会社でいくら配慮したとしても、やっぱりプライベートな時間があります。家庭の問題でうまくいかないことや、悲しいことや色々あった場合、イライラするというのは人間としてしょうがないところがあります。そういった事情が本人から話されたら、ある程度考慮しつつ、それでも「それはそれとして、ある程度ルールは守らなければいけない」と伝えていくことになります。どこまでそういった特別な事情を考慮するのかは、個別に考えていく必要があります。

07遅刻が続くことの職場への影響と対応の基本姿勢

 遅刻を繰り返す社員がいると、周りの社員はその方の仕事をやってもらうことを当てにしているのに当てが外れます。そして、しっかり注意もされずそのまま働けているということになると「ずるい」「この会社は公平ではない」「ルールが行き届いていない」と思われてやめてしまうかもしれませんし、自分もズルをしようと思って自分もルールを守らなくなってしまうかもしれません。

 ですから、この方に多めに見ればいいというものではなく、他の社員たちとの公平さも考えていかなければなりません。問題があればしっかり対応していかなければいけないのです。

 対応したいとは思っているのだけれど、もう既得権化して対応の難易度が高い、あるいは軽く見られていてもう言うことを聞かなくなってしまって自力ではどうにもならない——そんなことになったらご相談ください。オンラインなどで一緒に作戦会議をしながら対応していきましょう。そうすればほとんど解決できます。いい方向には必ず行きます。現状を色々こちらも準備して対応しっかりやっていきましょう。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。欠勤・遅刻問題でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 前の上司が遅刻を黙認していたので、今更注意しても「なぜ今になって」と言われます。どうすればよいですか。

A. まず「これからはこういうわけにはいかない」という新しいルールを書面で明確に告知することが最初のステップです。「前の上司はそうだったかもしれないが、これからは就業時刻に仕事を開始することを求める。今後遅刻した場合は注意指導・懲戒処分を行う。また遅刻した時間分の給与を控除していなかった場合は今後は控除する」という内容を書面で伝えてください。反発が強くなりがちですので、告知した上で段階的に対応していくことが重要です。いきなり重い処分に踏み切ることは失敗しやすいです。

Q2. 遅刻した時間分の給与を今まで差し引いていませんでした。今から控除を始めてもよいですか。

A. ノーワーク・ノーペイの原則として、遅刻した時間分の給与を控除することは正当な対応です。今まで控除していなかった場合は、今後から控除することを書面で告知した上で実施してください。突然告知なしで控除すると、賃金未払いの主張につながる可能性がありますので、必ず事前告知を行ってください。なお、過去分を遡って控除することは、過去の慣行を変えることになりますので、弁護士に相談した上で進めることをお勧めします。

Q3. 注意しても逆ギレされてしまい、自力ではどうにもならなくなっています。どうすればよいですか。

A. 一旦舐められてしまうと対応の難易度は上がります。自力でその秩序を回復するのが困難な場合は、弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。相手の言ってくることへの対応方針を弁護士と一緒に準備した上で臨むことで、秩序を回復できるケースは多くあります。ZoomやTeamsでのオンライン打ち合わせを活用しながら、都度の状況に応じたアドバイスを受けながら進めていきましょう。

Q4. 採用が難しいので、多少の遅刻は目をつぶるしかありませんか。

A. ルール違反を容認することはお勧めしません。遅刻を黙認すると、真面目に働いている他の社員が「ばかばかしい」と思ってやめていくリスクがあります。また、職場全体にルールを守らなくてもいいという雰囲気が広がります。採用難の時代でも、ルールは守ることを前提として、給与水準や職場環境・スキルアップの機会など別の魅力で人を集めることが正解です。

最終更新日:2026年5月10日

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