労働問題1035 診断書なく欠勤を繰り返す社員
本ページの基となる解説動画
本ページの解説内容は、以下の藤田進太郎弁護士による解説動画を素材として、当事務所が文章化しているものです。本ページの記載と動画の内容に齟齬がある場合や、より詳しい解説をご覧になりたい場合は、動画を直接ご視聴ください。
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最初の分岐点は「出勤した時に働けているか」 出勤してもまともに働けない場合は体調が相当悪い可能性が高く、休ませる方向で話を進める。出勤時は問題なく働けている場合はサボりの疑いも視野に入れた確認が必要になる |
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「大丈夫、働ける」と言い張る社員には具体的な事実で説得する 単に「働けていませんよね」と評価的に言っても納得しない。「今日この仕事を3時間かけても終わらなかった、通常30分の仕事だ」という具体的な事実を示して話すことで説得力が生まれる |
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継続的な欠勤には診断書の提出・定期面談を求めることができる 半年も毎週2日休み続けているなら診断書の提出を求めることは正当。会議室で行う定期的な面談も有効。しっかり確認されると嘘をつき続けることは辛く、休まなくなるか退職するかというケースが多くなる |
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サボりかと思っていたら本当に体調が悪かったこともある 決めつけはトラブルの原因。確認するのは本人を守るためでもある。本当に体調が悪いなら休ませることが本人のためであり、会社の安全配慮義務でもある |
目次
01最初に確認すること——出勤した時に働けているか
診断書もなく体調不良を理由とした欠勤が週2日程度、継続的に繰り返されているというケース。まず最初に考えなければならないのは「出勤した時に働けているのかどうか」という点です。この一点が、その後の対応の方向性を大きく左右します。
出勤してもまともに仕事らしきことができていないという状況であれば、体調が相当悪い可能性が高くなります。そのまま無理に働かせていると体調をどんどん悪化させるかもしれません。だとすれば、本人の健康を守るために、まず休ませる方向で話をしっかり進めなければいけません。
一方、出勤した日は問題なく働けているのに週2日程度の欠勤が続いているということになると、本当に体調が悪くて休んでいるのか、それともサボっているのではないかという確認をしていく必要が出てきます。
02出勤してもまともに働けない場合の対応
出勤してきても仕事らしきことができていないという状況は、体調が深刻な可能性が高いです。何よりも、本人の体調を守ることが最優先になります。
まず受診を勧め、本人の納得を得る
最初のステップは、お医者さんに見てもらうように勧め、本人の納得を得た上で受診してもらい、あるいは休んでもらうという努力をすることです。会社が一方的に判断するのではなく、本人に状況を丁寧に伝えながら進めることが大切です。
「大丈夫、働ける」と言い張る場合——具体的な事実で説得する
中には「大丈夫、働ける」と言い張る方もいます。そういった場合は、単に「働けていませんよね」と評価的に言うだけでは納得してもらえません。具体的な事実を踏まえて説得することが大事です。
たとえば「今日、誰々さんからこういう仕事をやってと言われてやっていたけれど、3時間経っても終わらなかったよね。この仕事は通常30分あれば終わる仕事だ。こういった状況を見ると体調が悪いのではないかと心配している」というように、具体的な事実を示しながら話してください。こういった実際に起きた出来事をしっかり認識してメモに取り、面談の場で事実を踏まえた説得を行うことが大事です。
その上で、それでも働けるというのであれば、働けるという根拠を示すよう求めることが次のステップです。「そんなに問題なく働けているという根拠を、お医者さんに見てもらって診断書という形で出してもらえますか」という流れで求めることも考えられます。
産業医面談を活用する
産業医がいる会社では、産業医面談を活用してください。仕事内容を把握している産業医に、出勤してきた時の仕事の様子も情報提供した上で「このまま働かせても大丈夫でしょうか」という意見を求めてください。
産業医が「全然問題ない、元気に働けますよ」という意見であれば、その意見を踏まえた上で会社としての判断をします。産業医が「この仕事は無理だ、休ませるべきだ」という意見であれば、休ませる方向で進めます。
産業医がいない中小企業の場合でも、外部の産業保健総合支援センターへの相談や、主治医への問い合わせ(本人の同意を得た上で)を試みることが考えられます。
それでも出社し続けようとする場合——就労拒絶
本人が「働ける」と言い張り、受診もせず出社し続けようとする場合、「客観的に体調が悪くてこのまま働かせたら悪化するとわかっていたのに働かせた」という安全配慮義務違反の問題が生じる可能性があります。そういった状況になったら、出社してきても会社の中に入れない——就労を拒絶する——ということが必要になる場合もあります。
ただしこの就労拒絶という判断は慎重に行わなければなりません。次のセクションで説明する給与の問題とも直結しますので、このステップに進む際には必ず弁護士に相談してください。
03就労を拒絶する場合の注意点——給与の扱い
就労を拒絶するとなると、給与を払うかどうかという問題が出てきます。ここは非常に重要な点です。
会社が就労を拒絶した場合、「会社都合で働かせなかった」となれば休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが必要になります。一方、「労働者側の事情(体調不良)で労務提供ができない状態になっている」と評価できれば、給料を払わなくてよいことになります。
では、どちらになるかはどう決まるのか。それは「労働契約で予定されている程度の労務提供ができているかどうか」が基準になります。客観的に見て仕事ができていない状態——具体的な事実として「この仕事ができていない、この程度しかできていない」と立証できる状態——であれば、労働者側の事情で労務提供ができないと評価されます。その場合は給料を払わなくて済むことになります。
逆に、「休ませるほどではなかった」と後の心理で判断されてしまうと、給料を払うことになってしまいます。不確実な状況の中での判断ですが、判断できないからといって放置しているわけにもいきません。この難しい判断を会社として下すにあたっては、医師・産業医・弁護士の意見を取りながら進めてください。
「具体的な事実として仕事ができていないと立証できる状態」→ 労働者側の事情(体調不良)として給料を払わなくてよい可能性
※ どちらに当たるかの判断は難しく、弁護士に相談しながら進めることが必要
04出勤時は問題なく働けている場合——サボりの確認
出勤してきた日は生き生きと問題なく働けている。仕事のスピードも遅くないし大した問題もない。でも休むことが問題なのだ——というケースがあります。こういった場合は、「本当に体調が悪くて休んでいるのか、それともサボっているのか」という確認が必要になってきます。
ただし、ここで大事なのは「決めつけてはいけない」ということです。さっさとサボりと決めつけて動くと、後でトラブルになることがあります。また、サボりかと思っていたら実際は本当に体調が悪かった、ということも珍しくありません。
たまたまその週だけそういう状態になったのであれば、そんなに大きな問題として扱う必要はないかもしれません。しかし、これが3か月も4か月も半年も毎週毎週2日休み続けられているとなれば、周りで一緒に働く人たちも困りますし、仕事の戦力として当てにできないという状況が続くことになります。そういった継続的な状況になっているなら、ある程度チェックをしなければいけません。
05面談・診断書請求・定期確認の進め方
会議室での面談——具体的に事情を聞く
まず行うべきは、会議室に呼んで面談を行い、状況を直接確認することです。「どういった病気で休んでいるのか。病名がついていない場合でもどういった種類の体調不良なのか」を具体的に聞いてください。
しっかり会議室で面談を行うと、その場で嘘をつくというのはよっぽどのことで、なかなかやりにくいものです。体調不良だと言っているけれど怪しいなと感じている場合でも、丁寧に確認されることで、やがて休まなくなるか、嘘をつき続けられなくてやめていくかというケースが多くなります。普通、嘘をつくのは辛いものですから、しっかり確認する場を設けるだけで状況が変わることが多いです。
診断書の提出を求める
継続的に週2日程度の欠勤が続いているのであれば、診断書の提出を求めることも十分正当です。「もう半年も毎週2日休み続けているのだから、いくらなんでも診断書を出してください」と言っても、これは全くおかしなことではありません。
診断書提出の依頼は、単に「出してください」と言うだけでなく、「こんなに長期間にわたってこれほど欠勤が続いているのだから、会社として状況を正確に把握する必要があります。医師に診てもらった上で診断書を提出してください」という形で、理由とともに伝えることが有効です。就業規則に「一定日数以上の欠勤が続いた場合は診断書の提出を求めることができる」という規定がある場合は、その規定も根拠として示してください。
定期的な面談を繰り返す
欠勤が継続的に続いているような場合は、定期的な面談を行うことも有効です。本人のストーリーとしては「体調不良で休んでいる」わけですから、「体調確認のために面談する」と言ってもそれ自体はおかしなことではありません。定期的に状況を確認し続けることで、実態が徐々に見えてきます。
面談の内容は記録に残しておいてください。何月何日に誰が誰に何を聞き、どういう回答があったかを記録することが大事です。
06「サボりかと思ったら本当に体調が悪かった」への対応
確認作業を続ける中で、「サボりかと思っていたら実際は本当に体調が悪かった」ということが判明することがあります。こういった場合は方針を転換して、体調不良の社員への対応——受診勧奨・休ませることの検討・産業医面談——へと進みます。
この方向転換をためらう必要はありません。疑いを持って確認していたとしても、事実として体調不良が確認できたのであれば、それに応じた対応をすることが正しい判断です。むしろ早めに確認して本当のことが分かった方が、その後の対応がスムーズになります。
本当に体調が悪いのに毎週2日だけ休んで出勤し続けているとしたら、体を壊すかもしれません。そうなると本人の今後のキャリアに大きなハンディキャップを負わせることになります。経営者として、「ちょっと困った人だな」と思うような社員であっても、健康を守ってあげなければなりません。そのためには本当の状況を早めに把握して、必要なら休ませることが本人のためでもあります。
また逆に「体調不良だと言っていたけれど確認したらサボりだった」ということが明らかになった場合には、欠勤の事実と注意指導・懲戒処分の方向へと進みます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。欠勤・遅刻問題でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 診断書なしの「体調不良」を理由とした欠勤は、認めなければなりませんか。
A. 欠勤は労働契約上の義務違反ですから、「連絡さえすれば休める権利がある」というものではありません。ただし体調不良が理由である以上、一概に認めないとも言い切れません。まず出勤時に働けているかどうかを確認し、継続的に欠勤が続くようであれば受診・診断書の取得を求めることが正当な対応です。どういった状況なのかを面談で確認した上で、対応方針を決めることが基本です。
Q2. 「体調不良で休んでいる」と言っているのに、出勤した日は元気そうに働いています。どう判断すればよいですか。
A. 出勤時は元気に働けているのに欠勤が繰り返されている場合は、サボりの可能性も視野に入れた確認が必要です。ただし根拠なく「仮病だ」と決めつけることは避けてください。まず会議室で面談を行い、「どういった病気で、どういった症状で休んでいるのか」を具体的に確認してください。診断書の提出も求めた上で、実態を把握してから判断することが大事です。
Q3. 「大丈夫、働ける」と言い張る社員を強制的に帰宅させることはできますか。
A. 状況次第では就労を拒絶することができますが、この判断は慎重に行う必要があります。「客観的に体調が悪く、このまま働かせたら悪化するとわかっていたのに働かせた」と後で評価されることを防ぐためには、就労拒絶が正当だったと言える状況——仕事ができていないという具体的な事実の記録、産業医意見など——を整えた上で行うことが必要です。給与の扱いとも直結しますので、このステップでは必ず弁護士にご相談ください。
Q4. 面談を繰り返していたら、社員が「もう体調が良くなりました」と言い出しました。そのまま普通に働かせてよいですか。
A. 本人が「体調が良くなった」と言う場合は、原則としてその言葉を前提として対応します。ただしその後の実際の欠勤状況・仕事の状況を引き続き注意深く確認することが大事です。「良くなった」と言いながら再び同じパターンの欠勤が繰り返されるようであれば、再び面談を行い、状況を確認してください。改善しない場合は注意指導・懲戒処分の対象となります。
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最終更新日:2026年5月10日