労働問題319 行政解釈は、店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かをどのように判断するものとしていますか。

この記事の要点

平成20年9月9日基発第0909001号(多店舗展開の小売業・飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化)という行政解釈が存在する

多店舗展開企業のチェーン店長等における名ばかり管理職問題に対応するために発出された重要な通達です

店舗の店長等の管理監督者該当性は、職務内容・責任と権限・勤務態様・賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断される

314番〜318番で解説した行政解釈の判断枠組みが、チェーン店の店長等にも適用されます

小売業・飲食業等の多店舗展開企業において、チェーン店長等に残業代を支払わずに管理監督者として扱っている場合は、このガイドラインに基づきリスクが評価される

「店長」という肩書のみで管理監督者とする運用は、このガイドラインと相容れません

320番では、このガイドラインが「職務内容、責任と権限」の判断要素として採用・解雇・人事考課・労働時間の管理の4点を具体的に示していることが解説される

320番と合わせて読むことで、実務上の判断基準が具体的に分かります

01平成20年9月9日基発第0909001号の背景——多店舗展開企業の名ばかり管理職問題

 コンビニエンスストア・ファストフード・ファミリーレストラン等の多店舗展開企業において、チェーン店舗の店長に管理監督者として扱い残業代を支払わないという問題が社会的に注目されました。こうした背景を受けて、厚生労働省は平成20年9月9日基発第0909001号「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(以下「本ガイドライン」といいます)を発出しました。

 本ガイドラインは、多店舗展開の小売業・飲食業等の店舗における管理監督者の範囲を適正化するため、店舗の店長等の管理監督者該当性の判断基準をより具体的に示したものです。

02店舗の店長等の管理監督者該当性の判断方法

 行政解釈は、本ガイドラインにおいて「店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かについては、昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号に基づき、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとなる」としています。

 この記述は、314番〜318番で解説した行政解釈の判断枠組みを店舗の店長等に適用する際の基本的な考え方を整理したものであり、内容的には従来の行政解釈の立場を再確認・具体化したものです。

03総合的判断の枠組み——4つの考慮要素

 本ガイドラインが示す総合的判断のための考慮要素は以下のとおりです。

番号 考慮要素 本ガイドラインの関連する説明
職務内容、責任と権限 採用・解雇・人事考課・労働時間管理に関する実質的な権限の有無(320番で詳解)
勤務態様 遅刻・早退等に関する不利益取扱いの有無・労働時間管理の状況等(本ガイドライン次項で解説)
賃金等の待遇 年収水準・基本給・役付手当等の設定状況(本ガイドライン次項で解説)
(経営者との一体性) 上記を踏まえた総合判断の前提としての「経営者と一体的な立場にある者かどうか」の評価

 これらの要素を踏まえた総合的な判断が求められており、いずれか一つの要素だけで管理監督者性の有無が決まるわけではありません。ただし、318番で解説したとおり、①②が管理監督者として相応しくないと評価されれば、③を検討するまでもなく管理監督者には当たらないとされる構造は、本ガイドラインにおいても同様です。

04実務上の意味——チェーン店長への残業代不払いのリスク

 本ガイドラインが発出された背景(多店舗展開企業の名ばかり管理職問題)からすると、小売業・飲食業等の多店舗展開企業において「店長だから管理監督者」として残業代を支払わずに運用している場合は、本ガイドラインの判断枠組みに基づいてリスクが評価されることになります。

 チェーン店の店長であっても、採用・解雇・人事考課・労働時間管理に関する実質的な権限がない場合(320番参照)や、出退勤の実態的な自由がない場合は、管理監督者に当たらないと判断され、未払残業代の請求を受けるリスがあります。

05まとめ

 行政解釈(平成20年9月9日基発第0909001号)は、店舗の店長等の管理監督者該当性を、職務内容・責任と権限・勤務態様・賃金等の待遇を踏まえ総合的に判断するとしています。この判断枠組みは314番〜318番で解説した行政解釈の立場を小売業・飲食業等の多店舗展開企業の店舗に即して具体化したものです。320番では、このガイドラインが「職務内容、責任と権限」の判断要素として採用・解雇・人事考課・労働時間管理の4点について具体的に解説しています。自社の店長等の管理監督者性については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。店長等の管理監督者性の判断・残業代の取り扱い・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 平成20年9月9日基発第0909001号とはどのような通達ですか。

A. 「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」という行政解釈(厚生労働省通達)です。チェーン店の店長等に管理監督者として残業代を支払わない「名ばかり管理職」問題が社会的に注目されたことを背景に、店舗の店長等の管理監督者該当性の判断基準をより具体的に示した通達です。

Q2. 店舗の店長等の管理監督者該当性はどのように判断されますか。

A. 「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間等の規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるか」を、職務内容・責任と権限・勤務態様・賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断するとされています。

Q3. 飲食店の店長には残業代を支払わなくてよいですか。

A. 「店長」という肩書のみでは管理監督者として残業代の支払を免れることはできません。行政解釈は、職務内容・責任と権限(採用・解雇・人事考課・労働時間管理の実質的な権限等)・勤務態様・賃金等の待遇を総合的に判断するとしており、実態として管理監督者の要件を満たさない「名ばかり管理職」への残業代不払いは未払残業代請求を受けるリスがあります。

Q4. この通達は小売業・飲食業以外にも適用されますか。

A. 本ガイドラインは「多店舗展開する小売業、飲食業等」を対象としていますが、管理監督者性の判断基準として示している内容(職務内容・責任と権限・勤務態様・賃金等の待遇を踏まえた総合判断)は、小売業・飲食業に限らず他の業種においても参考となるものです。また、314番〜318番で解説した従来の行政解釈の立場は業種を問わず適用されます。

最終更新日:2026年5月10日



労働問題FAQカテゴリ


Return to Top ▲Return to Top ▲