労働問題315 行政解釈は管理職と管理監督者の関係をどのように考えていますか。
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行政解釈は、労基法の規制を超えて労働させる場合に割増賃金を支払うことを「すべての労働者に共通する基本原則」としている 管理監督者への適用除外はあくまで「例外」であり、原則は全労働者への割増賃金支払です |
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企業が人事管理上等の必要から任命する職制上の役付者であれば、すべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではない 「役付者=管理監督者」という自動的な等号は成り立ちません |
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割増賃金支払が「基本原則」である以上、その例外である管理監督者の範囲は限定的に解されている 「例外は限定的に」という発想が行政解釈の基本的スタンスです |
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この発想からすると、「管理職には全員残業代不要」という運用は行政解釈と相容れず、多額の未払残業代請求を招くリスがある 行政解釈・裁判例ともに、管理監督者への該当性は慎重・厳格に判断されています |
目次
01割増賃金支払は「すべての労働者に共通する基本原則」——行政解釈の出発点
行政解釈は、管理職と管理監督者の関係について検討するに先立ち、まず大前提として次のとおり述べています。
「法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則」である。
この記述は、労基法41条2号の管理監督者性の判断における行政解釈の出発点として極めて重要です。労基法の労働時間・休憩・休日の規制は最低基準であり、これを超えて労働させる場合に割増賃金を支払うことは「すべての労働者に共通する基本原則」である——つまり、管理職であれ一般社員であれ、原則として割増賃金を支払うべきことが大前提とされています。
行政解釈が割増賃金の支払を「すべての労働者に共通する基本原則」と表現していることは、管理監督者への適用除外(労基法41条2号)はその「例外」に過ぎないことを明示しています。法解釈の一般原則として「例外規定は限定的に解釈する」という考え方と整合するものです。
02職制上の役付者であっても全員が管理監督者に当たるわけではない
この「基本原則」を前提とした上で、行政解釈は次のとおり続けています。
「企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。」
ここで行政解釈が明示していることは、企業側の都合(人事管理上・営業政策上の必要等)で任命した「役付者」(部長・課長・マネージャー等の肩書を持つ者)が、そのまま自動的に管理監督者として割増賃金の適用除外を受けられるわけではない、ということです。
「役付者=管理監督者」ではない——実務上の重要なポイント
「部長に昇進させたから、そのポジションの人間には残業代は払わなくてよい」という発想は、行政解釈と相容れません。企業が人事上の理由で「部長」という肩書を与えたとしても、それだけでは管理監督者としての例外的取扱いは認められません。管理監督者に当たるかどうかは、肩書ではなく実態によって判断されます(314番参照)。
03「例外は限定的に」——管理監督者性の範囲に関する行政解釈の基本的発想
管理職の管理監督者性を判断する際の基本的発想として、行政解釈は割増賃金を支払うことが「すべての労働者に共通する基本原則」であるとしています。このことからすると、その例外である管理監督者性については、限定的に考えているものと思われます。
04実務上の意味——「管理職全員に残業代不要」は危険
以上の行政解釈の立場からすると、「管理職(部長・課長等の肩書がある社員)には全員残業代を支払わなくてよい」という運用は行政解釈と相容れず、危険です。
実際の裁判においても、「部長」「課長」等の肩書を持つ者が管理監督者に当たるかどうかを、肩書ではなく実態(職務内容・権限・勤務態様・処遇等)に基づいて慎重・厳格に判断した事例が多数あります。行政解釈が「基本原則の例外として限定的に解釈する」というスタンスを取っているため、裁判所も管理監督者への該当性を広く認める方向ではなく、むしろ限定的に判断する傾向があります。
05まとめ
行政解釈は、労基法の規制を超えて労働させる場合に割増賃金を支払うことを「すべての労働者に共通する基本原則」とした上で、職制上の役付者(部長・課長等の肩書を持つ者)であっても全員が管理監督者として例外的取扱いが認められるわけではないとしています。この発想からすると、管理監督者の範囲は限定的に解釈されるべきものとされており、「管理職なら全員残業代不要」という運用は行政解釈とも相容れません。自社の管理職が管理監督者に当たるかどうかの判断については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理職の管理監督者性の判断・残業代の取り扱い・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。
Q&Aよくある質問
Q1. 行政解釈は管理職と管理監督者の関係をどのように考えていますか。
A. 行政解釈は、割増賃金支払が「すべての労働者に共通する基本原則」であるとした上で、職制上の役付者であってもすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるわけではないとしています。管理監督者への適用除外は「基本原則の例外」であり、限定的に解されます。
Q2. 「すべての労働者に共通する基本原則」とはどういう意味ですか。
A. 労基法の規制を超えて労働させる場合に割増賃金を支払うことは、管理職・一般社員を問わず、すべての労働者について共通して適用される原則であるという意味です。管理職だからといって自動的にこの原則の適用が除外されるわけではなく、管理監督者(労基法41条2号)に該当する場合に限り例外として適用除外が認められます。
Q3. 「職制上の役付者であれば管理監督者」とは言えないのですか。
A. 言えません。行政解釈は「企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではない」と明示しています。「部長」「課長」等の肩書があっても、実態として管理監督者の要件(経営者との一体性・勤務態様の自由性・処遇の相当性)を満たさない場合は管理監督者に当たりません。
Q4. 「管理職には全員残業代を払わなくてよい」という運用は問題がありますか。
A. 大きな問題があります。行政解釈は管理監督者を「基本原則の例外」として限定的に解釈しており、「役付者全員が管理監督者に当たる」という前提での運用は行政解釈と相容れません。管理監督者の実態を伴わない管理職(名ばかり管理職)への残業代不払いは、後に多額の未払残業代請求を受けるリスがあります。
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最終更新日:2026年5月10日