労働問題313 管理職に残業代(時間外・休日割増賃金)を支払う必要があるかどうかの判断が難しい理由を教えて下さい。

 労基法も労基法施行規則も、労基法412号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)の具体的内容について明確に定めていません。また、管理監督者性の具体的判断基準について判断した最高裁判例も存在しません。このため、現状では、管理監督者に関する行政解釈の内容を理解するとともに、管理監督者性について判断した多数の下級審裁判例を分析して裁判所の判断の傾向を分析するほかないことになります。
 しかし、行政解釈が裁判所を拘束しないことは明らかですし、下級審裁判例も裁判官が判決を書く際に参考にすることはあっても最高裁判例のように裁判官の判断を事実上拘束するほどの強い影響力はありません。また、管理監督者に関する行政解釈や下級審裁判例において示されている管理監督者性の判断基準は、様々な要素(主に3要素)を総合考慮して結論を導くものであるため、事案ごとの判断は必ずしも容易ではなく、同じ判断基準を用いたとしても判断する裁判官によって異なる結論となることも十分に考えられます。
 このため、管理職が労基法412号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)に該当するかどうかを判断する難易度が高くなる結果、管理職に残業代(時間外・休日割増賃金)を支払う必要があるかどうかの判断も難しくなります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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