労働問題251 資格試験の受験時間、受験準備のための勉強時間、講習会参加の時間は、労基法上の労働時間に該当しますか。
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業務命令で受験・受験勉強・講習会参加をさせた場合や、不参加に不利益がある場合は労働時間に該当する 会社の指揮命令下に置かれた時間と評価できるため、時間外に行われた場合は割増賃金の支払いが必要です |
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会社が奨励・支援していても強制しておらず不利益もない場合は、労働時間に該当しない 受験等に要した時間は会社の指揮命令下に置かれた時間と評価することができません |
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資格取得者を優遇するだけで非取得者を不利益に取り扱っていない場合も、労働時間に該当しない 「優遇」と「不利益取扱い」は異なります。取得者を優遇するにとどまる限り、受験時間等は労働時間に該当しません |
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「強制か任意か」「不利益取扱いがあるか」という観点が資格取得支援制度設計の鍵になる 制度設計を誤ると意図せず残業代支払い義務が生じるリスがあります |
目次
01業務命令・不利益取扱いがある場合——労働時間に該当
一定の資格保持者が必要となった等の理由から、会社が社員に対し業務命令で資格試験の受験・受験勉強・講習会への参加等をさせた場合や、参加しないと何らかの不利益を課されるような場合は、これらに要した時間は会社の指揮命令下に置かれた時間と評価できますので、労基法上の労働時間に該当します。
業務上必要な資格(宅建・危険物取扱者・第二種電気工事士等)を取得するよう業務命令を発し受験を義務付けた場合、受験しなかった場合に減給・降格等の懲戒処分が科される場合、受験しなければ現在の担当業務を継続できない旨告知されている場合——これらは会社の指揮命令下にある時間として労働時間に該当します。
この場合、受験・受験勉強・講習会参加に要した時間が所定労働時間外に及ぶ場合は、1日8時間・週40時間を超えた部分について割増賃金(残業代)の支払い義務が生じます(労基法37条1項)。
02奨励・支援しているが強制しない場合——労働時間に非該当
会社が資格取得を奨励しており、何らかの支援措置を採っていたとしても、会社がそれを強制しておらず、資格試験の受験等をしなくても不利益が課されないような場合は、受験等に要した時間は会社の指揮命令下に置かれた時間と評価することができませんので、労働時間には該当しません。
資格取得の奨励や支援措置(受験費用の補助・参考書代の支給・勉強時間の確保など)は、社員の自発的な資格取得を後押しするものであり、それ自体は社員の受験を強制するものではありません。受験するかどうかの選択が社員の自由に委ねられている限り、受験等に要した時間は労働時間には該当しません。
03資格取得者を優遇するだけの場合——労働時間に非該当
会社が一定の資格を取得した社員を労働条件面で優遇しているような場合(例:資格手当の支給・昇給・昇進上の優遇)も、資格を取得していない社員を不利益に取り扱っているわけではありませんので、資格試験の受験・受験勉強・講習会への参加等に要した時間は、労基法上の労働時間には該当しません。
「優遇」と「不利益取扱い」は法的には異なります。資格取得者に対してプラスアルファの待遇を与えることは、非取得者を不利益に取り扱うことではありません。資格取得を選択しなかった社員は、もともとの労働条件のままであり、積極的に不利益を課されるわけではないからです。
資格取得者に資格手当5,000円/月を支給する(非取得者は従来通り)→ 優遇にとどまり、労働時間に非該当。
資格を取得しなかった社員の基本給を引き下げる・降格させる→ 不利益取扱いであり、実質的に受験を強制しているものと評価されるリスがあります。
043つのケースの比較と実務上の注意点
制度設計で陥りやすい落とし穴
「取得しないと次回の昇格審査には通らない」と告げているケース
これは事実上、資格取得を強制するものと評価されるリスがあります。昇格と資格取得を結びつける運用は、実質的に不利益取扱いと判断される可能性があります。
上司から「取るのが当たり前」「みんな受験している」と繰り返し言われるケース
明示的な業務命令がなくても、職場の雰囲気として受験が当然視されている場合は、実質的な強制として評価されるリスがあります。
資格取得支援制度を設計する際は、「会社が支援する」「強制はしない」「不利益は課さない」という3点を明確にし、就業規則等に明記しておくことが残業代トラブル防止の観点から重要です。制度設計については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
05まとめ
資格試験の受験時間・受験勉強時間・講習会参加時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかは、業務命令の有無と不利益取扱いの有無によって判断が分かれます。業務命令または不利益取扱いがある場合は労働時間に該当します。一方、会社が奨励・支援していても強制せず不利益もない場合、および資格取得者を優遇するだけで非取得者を不利益に取り扱っていない場合は、労働時間に該当しません。
「優遇」と「不利益取扱い」は法的に異なる概念です。資格取得支援制度の設計においては、強制性と不利益取扱いの有無を明確にし、就業規則等に適切に規定することが重要です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。資格取得支援制度の設計・研修時間の労働時間該当性・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 業務命令で資格試験を受験させた場合、受験時間は労働時間に該当しますか。
A. 該当します。業務命令で受験・受験勉強・講習会参加を義務付けた場合や、不参加に不利益が課される場合は、会社の指揮命令下に置かれた時間と評価できるため、労基法上の労働時間に該当します。時間外に行われた場合は割増賃金の支払いが必要です。
Q2. 会社が資格取得を奨励し受験費用を補助していれば、受験勉強時間は労働時間に該当しますか。
A. 奨励・支援措置があっても、受験を強制しておらず不利益も課されない場合は、労働時間に該当しません。受験費用の補助や参考書代の支給などの支援は、社員の自発的な資格取得を後押しするものであり、受験を強制するものではないからです。
Q3. 資格取得者に資格手当を支給している場合、受験時間は労働時間に該当しますか。
A. 資格取得者を優遇するだけで非取得者を不利益に取り扱っていない場合は、労働時間に該当しません。「優遇」と「不利益取扱い」は異なります。資格を取得しなかった社員が従来通りの条件のままであれば、積極的に不利益を課されているとはいえないためです。
Q4. 資格取得支援制度を設計する際に残業代トラブルを防ぐにはどうすればよいですか。
A. 「会社が支援する」「強制はしない」「不利益は課さない」という3点を明確にし、就業規則等に適切に規定することが重要です。昇格・昇給と資格取得を結びつける制度設計は、実質的な不利益取扱いと評価されるリスがあります。制度設計については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
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最終更新日:2026年5月10日