労働問題179 有期労働契約関係の実態評価に着目すべき要素【会社側弁護士が解説】
有期労働契約の雇止めが争われた場合、裁判所は契約関係の実態を総合的に評価して、実質無期・合理的期待の有無を判断します。その際には複数の要素が考慮されます。
本ページでは、有期労働契約関係の実態を評価する際に着目すべき要素について、会社側・使用者側専門の弁護士が解説します。これらの要素を理解することで、自社の有期契約のリスク評価と対策の方向性を把握することができます。
01有期労働契約関係の実態評価に着目すべき6つの要素
「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告」によれば、裁判例における判断の過程では、主に次の6項目に関して当該契約関係の実態に評価を加えているとされています。
02①業務の客観的内容と②契約上の地位の性格
第1に業務の客観的内容です。従事する仕事の種類・内容・勤務の形態(業務内容の恒常性・臨時性、業務内容についての正社員との同一性の有無等)が考慮されます。業務が恒常的で正社員と同様の内容であるほど、実質無期と評価されやすくなります。
第2に契約上の地位の性格です。契約上の地位の基幹性・臨時性(例えば、嘱託・非常勤講師等は地位の臨時性が認められます)・労働条件についての正社員との同一性の有無等が考慮されます。
03③当事者の主観的態様と④更新の手続・実態
第3に当事者の主観的態様です。継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等(採用に際しての雇用契約の期間や、更新ないし継続雇用の見込み等についての雇主側からの説明等)が考慮されます。「ずっと働いてもらいたい」などの発言はリスク要因となります。
第4に更新の手続・実態です。契約更新の状況(反復更新の有無・回数・勤続年数等)・契約更新時における手続の厳格性の程度(更新手続の有無・時期・方法・更新の可否の判断方法等)が考慮されます。更新手続が形式的なほど実質無期と評価されやすくなります。
04⑤他の労働者の更新状況と⑥その他
第5に他の労働者の更新状況です。同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等が考慮されます。過去に雇止めの前例がある場合は、雇止めリスクが低下します。
第6にその他の要素として、有期労働契約を締結した経緯・勤続年数・年齢等の上限の設定等が考慮されます。これら6つの要素を総合的に評価して、実質無期・合理的期待の有無が判断されます。自社の有期契約のリスク評価については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。有期契約の実態評価・雇止めリスクの診断でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 6つの要素のうち、最も重要なものはどれですか。
A. 特定の一要素が支配的というわけではなく、6つの要素を総合的に評価して判断されます。ただし、実務上特に重視されやすいのは、更新の手続・実態(毎回きちんと契約書を作成しているか)と当事者の主観的態様(継続雇用を期待させる発言があったか)の2点です。これらがリスク管理において最も重要な対策ポイントになります。
Q2. 同種の労働者に過去に雇止めの例がないと、雇止めは難しくなりますか。
A. 同種の労働者に雇止めの前例がない場合は、実質無期・合理的期待ありと評価されやすくなります。しかし、雇止めが不可能になるわけではなく、客観的合理的理由と社会通念上の相当性があれば雇止めは可能です。雇止めの可否は個別事情によりますので、弁護士に相談することをお勧めします。
Q3. 現在の有期契約のリスクを低減するために最優先で取り組むべきことは何ですか。
A. 最優先で取り組むべきことは、更新のたびに毎回きちんと契約書を作成・押印させることです。これだけでも更新手続の厳格性という観点から実質無期と評価されにくくなります。次に、「更新しない場合がある」旨を契約書に明記し、継続雇用を期待させる発言を慎むことが重要です。
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最終更新日:2026年5月10日