労働問題174 労契法19条の「更新申込み」要件が規定された理由と実務上の注意点【会社側弁護士が解説】
労働契約法19条では、有期労働契約者による有期労働契約の更新または締結の申込みが要件として規定されています。従来の雇止め法理では申込みは要件とされていませんでしたが、なぜ労契法19条では新たに要件として明示されたのでしょうか。
本ページでは、労契法19条に「更新申込み」要件が規定された理由と実務上の注意点について、会社側・使用者側専門の弁護士が解説します。
01従来の雇止め法理との比較
従来の雇止め法理では、解雇権濫用法理の類推適用(濫用論)で処理されていたため、有期契約労働者からの有期労働契約の更新または締結の申込みは要件とされていませんでした。雇止めが権利の濫用として「無効」という効果が生じる構成だったからです。
02労契法19条が申込みを要件とした理由
労契法19条は「有期労働契約の申込みに対する使用者の承諾を擬制(みなす)することにより有期労働契約の更新または成立を認める」という承諾みなしの構成を採用しています。承諾みなしという法的構成上、承諾の対象となる「申込み」が存在することが論理的に不可欠です。申込みのない承諾はあり得ないからです。そのため、有期契約労働者による有期労働契約の更新または締結の申込みが新たに要件として明示されることになりました。
03「申込み」の要件は緩やかに解釈されます
「更新の申込み」や「締結の申込み」があったといえるためには、有期契約労働者が雇止めに対し異議を表明したと評価できれば足りるとされています。明示的な申込みの意思表示である必要はなく、雇止めに対する反対の意思表示が使用者に伝われば足りると解されています。
例えば、「辞めたくない」「続けたい」などの発言も申込みと評価される可能性があります。逆に、「分かりました」「了解しました」と何も異議を述べなかった場合は、申込みがなかったと評価される可能性があります。
04実務上の注意点:申込みの有無の記録化
実務上は、雇止めに際して労働者から異議が申し立てられた場合は、その事実を記録に残すことが重要です。「異議が申し立てられた」→「申込みあり」→「労契法19条の要件を満たした」というフローで雇止めが争われる可能性があるため、対応を慎重に進める必要があります。
有期契約社員の雇止めの進め方・労契法19条の要件の評価については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。使用者側専門の弁護士として、会社側の立場から実務的なアドバイスを提供しています。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。有期契約社員の雇止め・労契法19条の要件でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 労働者が「辞めたくない」と口頭で言った場合、「申込み」があったといえますか。
A. 「辞めたくない」「続けたい」などの発言は、雇止めに対する異議の表明として「申込み」と評価される可能性があります。ただし、発言の内容・文脈・時期によって判断が異なります。雇止めの際に労働者から異議の表明があった場合は、その内容・状況を書面で記録しておくことが重要です。
Q2. 雇止めを円満に進めるためにはどのような対応が必要ですか。
A. 雇止めを円満に進めるためには、早めに雇止めの方針を伝えること・雇止めの理由を丁寧に説明すること・退職金や再就職支援等の配慮を検討することが有効です。また、書面で予告・説明を行い、本人の署名や受領確認を取得しておくことで、後の「申込みがなかった」という主張の根拠を作ることができます。具体的な進め方については弁護士に相談することをお勧めします。
Q3. 労契法19条の適用により雇止めが制限された場合、どのような法的効果が生じますか。
A. 労契法19条の適用により雇止めが制限された場合、「使用者が従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」という効果が生じます。つまり、従前と同一労働条件での有期労働契約の更新または成立が擬制されます。この結果、社員は引き続き同一条件で就労する権利を有することになります。
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最終更新日:2026年5月10日