労働問題172 労働契約法19条は、従来の雇止め法理と同じ内容ですか。
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厚生労働省通達は、労契法19条が従来の雇止め法理の内容・適用範囲を変更しないと説明している 東芝柳町工場事件・日立メディコ事件等の判例の蓄積は、そのまま参照できると解されています。 |
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法的構造は「解雇権濫用法理の類推適用」から「承諾みなし」に変わったが、判断基準は実質的に同じ 雇止めを検討する場合は、条文と従来の判例の両方を踏まえて評価することが必要です。 |
労契法19条と従来の雇止め法理の関係とは、労働契約法19条が東芝柳町工場事件・日立メディコ事件等の最高裁判決で確立していた判例法理(雇止め法理)を制定法化したものであるという法的性質をいい、内容・適用範囲は変更されていないと解されています。労働契約法19条は、従来の雇止め法理と実質的に同じ内容と考えてよいのでしょうか。この点について、厚生労働省通達では「内容や適用範囲を変更しない」と説明されていますが、法的構造については違いがあります。
実務上は判例の蓄積をそのまま参照できると解されていますが、正確な理解が必要です。本ページでは、労契法19条と従来の雇止め法理の関係について、会社側専門の弁護士が解説します。
01厚生労働省通達の立場|内容・適用範囲は変更なし
結論:厚生労働省通達(基発0810第2号・平成24年8月10日「労働契約法の施行について」)は、労契法19条が従来の雇止め法理の内容や適用範囲を変更することなく規定したものであると説明しており、判例の蓄積はそのまま参照できると解されています。同通達では、「法第19条は、次に掲げる最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)の内容や適用範囲を変更することなく規定したものであること」と説明されています。
つまり、労契法19条は従来の雇止め法理(東芝柳町工場事件・日立メディコ事件等の最高裁判決)を制定法化したものであり、内容や適用範囲を変更するものではないとされています。したがって、雇止め法理に関する判例の蓄積はそのまま参照できると解されています。
02法的構造の違い|濫用論から承諾みなしへ
結論:従来の雇止め法理は解雇権濫用法理の類推適用(濫用論)で処理されていましたが、労契法19条は「使用者が申込みを承諾したものとみなす」という承諾みなしの構成を採用しており、法的構造は異なります。従来の雇止め法理では、解雇権濫用法理の類推適用(濫用論)で処理されていました。つまり「雇止めが権利の濫用にあたり無効」という構成でした。
これに対し、労契法19条は「使用者が労働者からの申込みを承諾したものとみなす」という承諾みなしの構成を採用しており、従来の法的処理とは構造が異なります。ただし、この構造上の違いが実際の判断基準に大きな影響を与えるとは考えられていません。
03実務上の含意|判断基準は実質的に同じ
結論:法的構造の違いはあるものの、実際の解釈にあたっては従来の雇止め法理に関する判例(東芝柳町工場事件・日立メディコ事件を中心とする多数の裁判例)を参照して判断することが実務上の基本となります。労契法19条の立法趣旨(雇止め法理を制定法化して明確化)からすれば、この点は明らかです。
雇止めを検討する場合は、労契法19条の条文と従来の判例(東芝柳町工場事件・日立メディコ事件を中心とする多数の裁判例)の両方を踏まえて、実質無期・合理的期待の有無と雇止めの合理性を評価することが必要です。有期契約社員の雇止め可否の法的評価・対応方針については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。
法的評価の比較|適切な対応/NGな対応
| ○ 適切な対応 | ✕ NGな対応(法的評価を誤るリスク) |
|---|---|
| 従来の判例(東芝柳町工場事件・日立メディコ事件等)を踏まえて判断する | 「法律が変わったから昔の判例は関係ない」と誤解する |
| 承諾みなしという法的構造の変化も理解した上で対応する | 法的構成の違いを無視して従来通りの対応のみを行う |
| 労契法19条の施行時期を踏まえて適用関係を確認する | 施行前後の適用関係を確認せず対応する |
| 疑義がある場合は弁護士に相談する | 通達の解釈を自己判断のみで行う |
04よくある質問(FAQ)
Q. 労契法19条施行前に結んだ有期契約にも同条は適用されますか。
労契法19条は平成25年4月1日施行ですが、施行後の更新から適用されます。施行前に締結・更新された有期労働契約については従来の雇止め法理が適用されますが、施行後に更新された契約については労契法19条が適用されます。いずれにせよ従来の雇止め法理と内容は変わらないとされています。
Q. 法的構造が「承諾みなし」に変わったことで、実務上何か変わりますか。
法的構造が「承諾みなし」となったことで、理論上は更新後の有期労働契約の存在が擬制されることになります。実務上の判断基準は従来の雇止め法理と変わらないとされていますが、法的構造の変化がどのような影響を与えるかについては今後の判例の蓄積によって明確になっていく部分があります。具体的な対応については弁護士に相談することをお勧めします。
Q. 東芝柳町工場事件と日立メディコ事件の違いを教えてください。
東芝柳町工場事件(最高裁昭和49年7月22日判決)は長年にわたって更新が繰り返された事案であり、実質無期(労契法19条1号相当)のケースの先例です。日立メディコ事件(最高裁昭和61年12月4日判決)は季節的業務で更新回数が比較的少ない事案であり、合理的期待(労契法19条2号相当)のケースの先例です。これらの判例が現在の労契法19条の解釈に直接参照されます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。有期契約社員の雇止め法理・法的評価でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年7月10日