労働問題163 労働契約法第5条(安全配慮義務)の内容と会社側の実務対応【会社側弁護士が解説】
労働契約法第5条は、平成20年3月1日から施行された法律で、使用者の安全配慮義務を明文化した重要な規定です。それ以前から判例上認められていた安全配慮義務が、法律の条文として明示されました。
本ページでは、労働契約法第5条の条文内容・立法趣旨・「必要な配慮」の具体的内容・違反した場合の法的効果について、会社側・使用者側専門の弁護士が解説します。
01労働契約法第5条の条文内容
労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)は、次のとおり規定しています。「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
労働契約法第5条は、平成20年3月1日から施行されました。それ以前から判例上認められていた安全配慮義務(陸上自衛隊事件・川義事件等の最高裁判例)を法律の条文として明文化したものです。
02立法趣旨
同条が設けられた趣旨について、厚生労働省(平成24年8月10日付け基発0810第2号)は「通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、こうした労働の性質に由来する危険から労働者を保護するよう配慮すべき義務を負っている。この趣旨を確認的に規定したものである」と説明しています。
つまり、労働関係においては使用者が職場環境を管理・支配する立場にある以上、労働者の安全を確保する義務を負うことは当然であり、同条はそのことを確認的に明文化したものといえます。
03「必要な配慮」の具体的内容
「必要な配慮」の具体的内容は、業種・業態・労働環境・個々の労働者の状況等によって異なりますが、精神疾患との関係では、長時間労働の解消・時間外労働の管理・メンタルヘルス不調のサインへの早期対応(受診勧奨・業務軽減等)・ハラスメントの防止・解消・産業医との連携などが含まれます。
特に、東芝うつ病解雇事件最高裁判決(平成26年3月24日)は、「使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている」と判示しており、社員からの申告がない場合でも能動的な配慮が必要であることが示されています。
04違反した場合の法的効果
安全配慮義務違反があった場合、使用者は債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償責任を負います。不法行為(民法709条・715条)に基づく請求と競合する場合は、労働者にとって有利な構成が選択されます。
なお、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、不法行為の場合の3年ではなく、債務不履行の場合の5年(民法166条1項)が適用されます(最高裁平成19年4月26日判決)。この点は、会社側にとって重要なリスク要因です。安全配慮義務違反リスクへの対応・精神疾患社員への対応方針の設計については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働契約法第5条・安全配慮義務の履行でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 労働契約法第5条に違反した場合、どのような法的責任を負いますか。
A. 労働契約法第5条(安全配慮義務)違反があった場合、使用者は債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償責任を負います。損害の範囲は、治療費・休業損害・後遺障害逸失利益・慰謝料などに及びます。また、消滅時効は5年(民法166条1項)が適用されますので、長期間にわたってリスクが続くことになります。
Q2. 精神疾患との関係で「必要な配慮」として何が求められますか。
A. 精神疾患との関係では、長時間労働の解消・時間外労働の適切な管理・メンタルヘルス不調のサインへの早期対応(受診勧奨・業務軽減等)・ハラスメントの防止・解消・産業医との連携などが求められます。また、東芝事件最高裁判決により、社員からの申告がなくても能動的な配慮が必要であることが示されています。
Q3. 安全配慮義務の消滅時効が5年であることはどのような意味を持ちますか。
A. 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効が5年であることは、不法行為の場合(原則3年)と比べて請求できる期間が長いことを意味します。会社としては、安全配慮義務違反のリスクが長期間にわたって続くことを念頭に置いた上で、日常的なリスク管理体制を整備することが重要です。
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最終更新日:2026年5月10日