労働問題944 労働時間の概念を整理(法定・所定・実労働・時間外)【会社側弁護士が解説】

 「残業代は何時間から発生するか」「所定労働時間と法定労働時間は何が違うか」——こうした質問は、残業代トラブルが表面化した際に会社側が最初に直面する疑問です。労働時間の概念を正確に整理しておくことは、残業代請求への適切な対応や、就業規則・労務管理の適正化において欠かせない知識です。

 本記事では、法定労働時間・所定労働時間・実労働時間・時間外労働の概念を、使用者側専門の弁護士が経営者・人事担当者向けに整理して解説します。

01法定労働時間とは

 法定労働時間とは、労働基準法が定める「1日および1週の最長労働時間の上限」です。原則として、1日8時間・1週40時間が上限とされています(労基法32条)。なお、常時10人未満の労働者を使用する特例措置対象事業場については、1週44時間まで許容されています。

 「1週」とは日曜日から土曜日までの暦週、「1日」とは午前0時から午後12時までの暦日を指します。ただし、2暦日にわたる連続勤務の場合は1勤務として扱い、始業時刻の属する日の労働として計算します。

 この法定労働時間は、残業代(割増賃金)の発生基準となる重要な概念です。法定労働時間を超えて労働させた場合、原則として25%以上の割増賃金(1か月60時間超は50%以上)の支払が必要になります。

02所定労働時間とは

 所定労働時間とは、就業規則や労働契約によって定められた会社独自の労働時間です。法定労働時間の範囲内であれば、会社が自由に設定できます。

 たとえば、1日の所定就業時間を「9時〜18時(休憩1時間)」と定めた場合、所定労働時間は7時間です。この会社では、法定労働時間(8時間)まで残り1時間ありますが、18時〜19時の1時間については、所定外労働ではあるものの法定時間内の残業となります。

 所定外労働(所定労働時間を超えるが法定労働時間以内の労働)については、法律上25%の割増賃金の支払義務はありませんが、就業規則で「所定外労働にも割増賃金を支払う」旨を定めている場合はその定めに従う必要があります。

03実労働時間とは

 実労働時間とは、社員が現実に労働した時間です。遅刻・早退・欠勤・職務免除などにより実際に労務提供がなされなかった時間は、実労働時間に含まれません。

 実労働時間は所定労働時間と必ずしも一致しません。たとえば、所定労働時間が7時間の社員が遅刻して6時間しか働かなかった場合、実労働時間は6時間です。また、残業して9時間働いた場合、実労働時間は9時間であり、法定労働時間(8時間)を1時間超えるため、その1時間分について割増賃金の支払が必要です。

 残業代請求を受けた際に、「何時間分の残業代が請求対象になるか」を判断するためには、実労働時間の正確な把握が不可欠です。タイムカードや勤怠管理システムによる記録が、会社側の反証の根拠になります。

0436協定と時間外労働の関係

 法定労働時間を超えて時間外労働をさせるには、時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)の締結と労働基準監督署への届出が必要です。36協定なしに法定時間外労働をさせることは労基法違反となります。

 36協定を締結した場合でも、残業代(割増賃金)の支払義務が免除されるわけではありません。また、2019年4月施行の改正労基法により、時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が罰則付きで設けられています。時間外労働の管理は法的義務として重要性が高まっています。

05休憩時間と労働時間の区別

 労働時間から除かれる休憩時間については、法定の付与義務があります。1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、労働時間の途中に一斉に与え、自由に利用させる必要があります。

 会社が「休憩中も電話対応や来客対応をさせている」「休憩室はあるが実質的に業務命令に従わされている」といった状況では、その時間は労働時間とみなされ、残業代の対象になる可能性があります。休憩の実態管理は、労務管理上の重要な課題です。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

06よくある質問

Q1. 所定労働時間が7時間の場合、8時間目の残業に割増賃金は必要ですか?
A. 法定労働時間(8時間)を超えていなければ、割増賃金(25%以上)の支払義務は法律上ありません。ただし、就業規則に「所定外労働にも割増賃金を支払う」と定めている場合はその規定に従う必要があります。

Q2. 36協定を締結すれば、何時間でも残業させられますか?
A. いいえ。36協定には上限規制があり、原則として月45時間・年360時間を超えることはできません。特別条項を設けた場合でも年720時間・複数月平均80時間・単月100時間未満という上限があります。これらに違反すると罰則の対象になります。

Q3. 残業代の計算で「実労働時間」が争われた場合、どう対応すればいいですか?
A. タイムカードや勤怠管理システムの記録、PCのログオン・ログオフ記録、入退館記録などが実労働時間の証拠となります。会社側として正確な勤怠記録を保管しておくことが、残業代請求への有効な反証手段になります。

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最終更新日:2026年5月10日

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