労働問題891 希望退職者を募集する際の注意点を教えてください。

この記事の結論
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条件は不合理でなければ自由に決定でき、性別限定は不可

募集の条件は、退職金が自己都合退職の場合より明らかに低い等の不合理な内容でなければ、使用者が自由に決定できます。ただし、対象者を性別で限定することは違法性があるとみなされ、希望退職そのものが無効になるリスクがあるためお勧めできません。

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使用者の承認制にすることで有能な社員の大量離脱を防げる

希望退職には強制力がなく、辞退した社員に退職を強制することもできません。使用者の承認制とし、承認した者のみ受け入れる仕組みにしておくことをお勧めします。

 整理解雇に踏み切る前段階として、あるいは組織のスリム化を図る手段として、希望退職者の募集は多くの会社で活用されています。しかし、その設計・運用を誤ると、意図しない結果(有能な社員の大量流出等)を招くリスクがあります。

 会社側専門の弁護士の立場から、希望退職者を募集する際の注意点を解説します。

01募集条件は使用者が自由に決定できる

 希望退職者募集にあたっては、募集時期、募集人員、募集対象者、退職上積金等の条件を労働者に提示します。条件は、退職金が自己都合退職の場合より明らかに低い等の不合理な内容でなければ、使用者が自由に決定することができます。

02募集対象者の限定に関する注意点

 ここでよく問題となるのが、募集対象者の限定です。希望退職者募集は、使用者が早期の退職希望を募っているものであって、労働者の退職の意思表示を誘引しているに過ぎず、強制力はありません。名指しで希望退職を促したり、60歳以上の労働者に限定しても問題ありません。

 ただし、募集対象者を男性もしくは女性と性別で限定することは、違法性があるとみなされ希望退職そのものが無効になるリスクがあるので、お勧めできません。

03使用者の承認制をお勧めする理由

 希望退職を募集したところ多くの有能な社員が退職を希望し、経営が更に悪化してしまうということが考えられます。このような事態を回避するためにも、使用者の承認制とし、希望退職者に対して、使用者が承認した者のみ希望退職を受け入れることができるようにしておくことをお勧めします。承認制にしておけば、会社にとって重要な人材からの申出を、選別的に不承認とすることが可能になります。

04辞退の自由と強制力の欠如

 希望退職者制度は、あくまでの社員の希望により行われるものですので、退職を希望した社員が後になって退職を辞退したとしても、使用者から退職を強制することはできません。希望退職は、あくまで労働者側の自発的な申出に基づく制度であるため、一度申し出た後に翻意した場合でも、これを強制的に退職させる法的根拠は存在しないということです。

05会社側が押さえておくべき視点

 会社側が希望退職を募集する際には、募集要項に、募集時期・人員・対象者・条件(退職上積金の額等)を明確に定め、あわせて使用者の承認制であることを明記しておくことをお勧めします。承認制であることが不明確なまま募集を行うと、応募者全員に対して退職を認める義務が生じたと誤解されるリスクがあります。

 募集対象者の限定にあたっては、年齢や勤続年数等、性別以外の合理的な基準を用いることが重要です。性別による限定は、男女雇用機会均等法上の問題を招き、制度全体の有効性を損なうリスクがあるため、絶対に避けるべきです。

06よくある質問(FAQ)

Q. 60歳以上の社員に限定して希望退職を募集してもよいですか。

問題ありません。希望退職は労働者の退職意思を誘引するにすぎず強制力がないため、年齢による対象者の限定は認められます。

Q. 女性社員だけを対象に希望退職を募集してもよいですか。

お勧めできません。性別による限定は違法性があるとみなされ、希望退職そのものが無効になるリスクがあります。

Q. 希望退職に応募した社員が翻意した場合、退職させることはできますか。

できません。希望退職はあくまで社員の希望により行われるものであり、辞退した社員に退職を強制することはできません。

経営上のポイント 希望退職者募集の条件は、不合理な内容でなければ使用者が自由に決定できます。名指しや年齢による限定は問題ありませんが、性別による対象者限定は違法性があるとみなされ、制度全体が無効になるリスクがあるためお勧めできません。使用者の承認制とし、承認した者のみ受け入れる仕組みにしておくことで、有能な社員の大量離脱による経営悪化を防ぐことができます。希望退職はあくまで社員の希望に基づく制度であり、辞退した社員に退職を強制することはできません。会社側としては、募集要項に承認制であることを明記し、性別以外の合理的な基準で対象者を設定することが重要です。希望退職の制度設計は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。希望退職制度の設計でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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