労働問題804 合意退職(合意解約)とはどういうものなのかについて教えてください。

この記事の結論
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合意退職は使用者と労働者の合意により成立し、予告手当は不要

合意退職(合意解約)とは、使用者と労働者との合意により労働契約を将来に向けて解約することをいいます。この場合、使用者は解雇予告手当を支払う必要はありません。

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承諾権限を有する者による意思表示が到達するまで撤回できる

合意退職は使用者の承諾の意思表示が労働者に到達した時に成立するため、承諾が到達するまでは申込みを撤回できます。承諾には、承諾権限を有する者による意思表示が必要です(大隈鐵工所事件、最高裁三小昭和62年9月18日判決)。

 退職には、労働者の一方的な意思表示による辞職(803の記事参照)のほかに、使用者と労働者の合意によって成立する「合意退職」という類型があります。会社側の対応を左右する重要な違いがあります。

 会社側専門の弁護士の立場から、合意退職(合意解約)の基本的な仕組みを解説します。

01合意退職(合意解約)とは

 合意退職(合意解約)とは、使用者と労働者との合意により労働契約を将来に向けて解約することをいいます。この場合、使用者は解雇予告手当を支払う必要はありません。合意退職は、使用者による一方的な意思表示である解雇とは異なり、当事者双方の合意に基づくものである点が特徴です。

02合意退職の典型例

 合意退職(合意解約)の典型は、希望退職募集制度に基づく退職や、退職勧奨に基づく退職ですが、労働者が合意退職(合意解約)を申し込み、使用者がこれを承諾することで、退職が成立する場合もあります。801の記事で解説した希望退職者募集も、この合意退職の一場面です。

03成立時期と撤回可能期間

 合意退職(合意解約)は、使用者の承諾の意思表示が労働者に到達した時に成立します。したがって、合意退職(合意解約)の申込みは、使用者の承諾の意思表示が到達するまでの間は撤回することができます。この点は、757の記事で解説した合意解約の申込みと辞職の違いと共通する考え方です。

04承諾権限を有する者による意思表示(大隈鐵工所事件等)

 使用者の承諾があったというためには、承諾権限を有する者による意思表示が必要です。裁判例では、退職承認の決定権のある人事部長による退職願の受領が承諾の意思表示となるとした大隈鐵工所事件(最高裁三小昭和62年9月18日判決)、常務取締役観光部長には退職承認決定権がないとして、同部長による退職届受領後の撤回を認めた同山電気軌道事件(岡山地裁平成3年11月19日判決)があります。

 この2つの裁判例の違いから分かるように、退職届を受け取った人物が、実際に会社を代表して退職を承諾する権限を持っているかどうかが、決定的に重要です。なお、退職届の受理のみならず、さらに内部的決裁手続を要する場合には、その手続が行われたことが本人に通知されることが必要です(泉州学園事件、大阪地裁昭和57年8月25日判決)。

05会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、まず、社内における退職承認の権限を誰が持っているのかを、あらかじめ明確に定めておくことが重要です。人事部長や特定の役職者に承諾権限を委任している場合には、その旨を社内規程等で明確にしておくと、後の紛争予防に役立ちます。

 労働者から退職の申込みがあった際には、権限を有する者による承諾の意思表示を速やかに行い、その到達を明確に記録しておくことが重要です。承諾が遅れると、その間に労働者から撤回される可能性が残ります。内部的な決裁手続を経る運用をとっている場合には、決裁完了後、速やかに本人へ通知することも忘れてはなりません。

06よくある質問(FAQ)

Q. 合意退職の場合、解雇予告手当は必要ですか。

必要ありません。合意退職(合意解約)は、使用者と労働者の合意により労働契約を将来に向けて解約するものであり、解雇には当たらないため、解雇予告手当の支払義務は生じません。

Q. 誰が退職届を受け取れば、承諾したことになりますか。

退職承認の決定権限を有する者による受領・意思表示が必要です。権限のない者が受け取っただけでは、承諾があったとは認められない場合があります(同山電気軌道事件)。

Q. 退職届を提出した労働者は、いつまで撤回できますか。

使用者の承諾の意思表示が労働者に到達するまでの間は、撤回することができます。承諾権限のある者による承諾が到達すれば、以後は撤回できません。

経営上のポイント 合意退職(合意解約)とは、使用者と労働者との合意により労働契約を将来に向けて解約することをいい、解雇予告手当は不要です。典型例は希望退職募集や退職勧奨に基づく退職ですが、労働者からの申込みを使用者が承諾する形でも成立します。合意退職は、使用者の承諾の意思表示が労働者に到達した時に成立するため、それまでは申込みを撤回できます。承諾には、承諾権限を有する者による意思表示が必要で、権限のない者が受領しただけでは承諾とは認められません(大隈鐵工所事件、同山電気軌道事件)。会社側としては、社内の承諾権限の所在を明確にし、権限者による速やかな承諾の意思表示とその記録化が重要です。退職手続の整備は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。従業員の退職対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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