労働問題804 合意退職(合意解約)とはどういうものなのかについて教えてください。
合意退職(合意解約)とは、使用者と労働者との合意により労働契約を将来に向けて解約することをいいます。この場合、使用者は解雇予告手当を支払う必要はありません。合意退職(合意解約)の典型は、希望退職募集制度に基づく退職や、退職勧奨に基づく退職ですが、労働者が合意退職(合意解約)を申し込み、使用者がこれを承諾することで、退職が成立する場合もあります。
合意退職(合意解約)は、使用者の承諾の意思表示が労働者に到達した時に成立されますので、合意退職(合意解約)の申込みは、使用者の承諾の意思表示が到達するまでの間は撤回することができます。使用者の承諾があったというためには、承諾権限を有する者による意思表示が必要です。
裁判例では、退職承認の決定権のある人事部長による退職願の受領が承諾の意思表示となるとした大隈鐡工所事件(最高裁三小昭和62年9月18日判決)、常務取締役観光部長には退職承認決定権がないとして、同部長による退職届受領後の撤回を認めた同山電気軌道事件(岡山地裁平成3年11月19日判決)があります。なお、退職届の受理のみならず、更に内部的決裁手続きを要する場合には、その手続が行われた本人に通知されることが必要です(泉州学園事件大阪地裁昭和57年8月25日判決)。
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