労働問題892 法人の解散に伴い解雇する場合でも、解雇権の濫用になることはありますか。

この記事の結論
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整理解雇の4要素ではなく事業廃止の必要性等で判断される

法人の解散手続の際に行われた解雇が解雇権の濫用になるかは、整理解雇の4要素ではなく、事業廃止の必要性と解雇手続きの妥当性を総合的に考慮して判断されます。雇用継続の基盤がなくなるため、原則として有効です。

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手続的配慮を著しく欠けば権利濫用になり得る

手続的配慮を著しく欠き、解散の経緯を考慮してもなお著しく不合理で社会通念上相当として是認できないときには、解雇権の濫用と判断されることがあります(石川タクシー富士宮ほか事件、東京高裁平成26年6月12日判決)。

 法人の解散は、通常の整理解雇とは異なる特殊な場面です。事業自体が消滅する以上、解雇の必要性自体は明白に見えますが、それでもなお解雇権の濫用が問題になる余地があることを、正確に理解しておく必要があります。

 会社側専門の弁護士の立場から、法人の解散に伴う解雇が解雇権の濫用になり得るかを解説します。

01法人解散による労働契約の自動終了

 法人が解散する場合、清算の結了により労働契約は自動的に終了します。もっとも、解散手続の過程で、清算結了に先立って労働者を解雇するケースが一般的であり、この解雇の有効性が問題になります。

02整理解雇とは異なる判断枠組み

 法人の解散手続の際に行われた解雇が解雇権の濫用になるかどうかについては、整理解雇の4要素により判断されるのではなく、事業廃止の必要性と解雇手続きの妥当性を総合的に考慮して判断されることになります。人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続の妥当性という整理解雇の4要素とは異なる、より簡略化された判断枠組みが用いられるということです。

 会社が解散する場合、社員の雇用を継続する基盤が存在しなくなりますので、その社員を解雇する必要性が認められ、客観的に合理的な理由を有するものとして原則として有効です。

03石川タクシー富士宮ほか事件が示す例外

 ただし、会社が社員を解雇するにあたっての手続的配慮を著しく欠き、会社が解散したことや解散に至る経緯などを考慮してもなお解雇することが著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できないときには、解雇権の濫用と判断されることがあります(石川タクシー富士宮ほか事件、東京高裁平成26年6月12日判決)。

 この判例が扱った事案は、解散当日に突然、労働者への説明もなく事業用資産を運び去り、解雇を通告するという、極めて手続的配慮に欠けるものでした。会社解散という事業廃止の必要性自体は認められる場合でも、労働者への説明や配慮を著しく欠いた乱暴な進め方をすると、解雇自体が無効とされるリスクがあるということです。

04会社側が押さえておくべき視点

 会社側が事業を解散する際には、解雇の必要性自体は認められやすい一方で、その進め方(労働者への説明のタイミング・方法、解雇予告の履行、再就職支援の有無等)が、後の紛争の帰趨を大きく左右することを理解しておく必要があります。858の記事で解説した解雇予告手当の支払いを含め、法律上求められる最低限の手続を確実に履行することはもちろん、可能な範囲で、労働者への十分な説明・情報提供を行うことが重要です。

 特に、解散の意思決定から実際の解雇通告までの経緯において、労働者に不意打ちを与えるような進め方(資産の隠匿・搬出、説明のないままの事業所閉鎖等)は、たとえ経営上のやむを得ない事情があったとしても、後に「著しい手続的配慮の欠如」として問題視されるリスクが高いため、避けるべきです。

05よくある質問(FAQ)

Q. 会社を解散する場合、整理解雇の4要素をすべて満たす必要がありますか。

整理解雇の4要素ではなく、事業廃止の必要性と解雇手続きの妥当性を総合的に考慮して判断されます。事業消滅により雇用継続の基盤自体がなくなるため、原則として有効です。

Q. 事業廃止の必要性が明白であれば、どのように解雇しても問題ありませんか。

問題があります。手続的配慮を著しく欠き、著しく不合理で社会通念上相当と是認できない場合には、解雇権の濫用と判断されることがあります。

Q. 解散時の解雇で、どのような手続的配慮が求められますか。

解雇予告手当の支払い等の法律上の最低限の手続に加え、労働者への十分な説明・情報提供を、不意打ちにならない形で行うことが重要です。

経営上のポイント 法人解散に伴う解雇は、整理解雇の4要素ではなく、事業廃止の必要性と解雇手続きの妥当性を総合的に考慮して判断され、雇用継続の基盤がなくなるため原則として有効です。ただし、手続的配慮を著しく欠き、解散の経緯を考慮してもなお著しく不合理で社会通念上相当と是認できない場合には、解雇権の濫用と判断されることがあります(石川タクシー富士宮ほか事件、東京高裁平成26年6月12日)。会社側としては、解雇の必要性自体は認められやすくても、その進め方(説明のタイミング・方法、解雇予告の履行等)を丁寧に行うことが、紛争予防のうえで極めて重要です。会社解散に伴う解雇の実施は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。会社解散に伴う解雇の実施でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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