労働問題862 就業規則で普通解雇事由を定めている場合、定めた事由以外の解雇は認められないのですか。

この記事の結論
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限定説と例示説が対立しており、一概には言えない

就業規則の解雇事由を定めた以上それ以外の事由による解雇は制限されるべきだとする説と、解雇権の行使は民法上原則自由であり解雇事由は例示的な定めと考えるべきという説が対立しており、一概には言えません。

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一般条項を設けておくことで問題を回避できる

就業規則の普通解雇事由の最後に、「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由があるとき」という一般条項を設けておくことをお勧めします。

 861の記事で解説した解雇理由の追加可否とも関連しますが、そもそも「就業規則に列挙されていない事由で解雇できるのか」という、より根本的な問題があります。この問題は、学説上長らく争いのある論点です。

 会社側専門の弁護士の立場から、就業規則の普通解雇事由が限定列挙か例示列挙かを解説します。

01限定列挙説と例示列挙説の対立

 就業規則で普通解雇事由を定めている場合、就業規則に解雇事由を定めた以上、それ以外の事由による解雇は制限されるべきだとする説(限定列挙説)と、解雇権の行使は民法の規定により原則として自由であり、就業規則の解雇事由は例示的な定めと考えるべきという説(例示列挙説)が対立しており、一概には言えません。

 限定列挙説によれば、就業規則に列挙されていない事由による解雇は、原則としてできないことになります。一方、例示列挙説によれば、就業規則の解雇事由は典型例を示したものにすぎず、それ以外の合理的な理由があれば解雇が可能ということになります。この2つの説のどちらが妥当するかは、判例上も明確に統一されておらず、事案や就業規則の規定の仕方によって判断が分かれ得る、不安定な論点です。

02実務上の対応策(一般条項)

 このような問題が生じないよう、就業規則の普通解雇事由の最後に、「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由があるとき。」という一般条項を設けておくことをお勧めします。この一般条項があれば、限定列挙説をとった場合であっても、個別具体的な事由が列挙された号のいずれにも該当しない場合でも、「準ずる事由」として解雇の余地を確保することができます。

 この一般条項の考え方は、789の記事で解説した懲戒事由における包括条項(「その他これに準ずる場合」)とも共通する発想です。ただし、懲戒事由の包括条項が合理的限定解釈を受けるのと同様、この一般条項も無制限に拡張して解釈されるわけではなく、他の列挙事由と同程度の重大性・悪質性が求められる点に注意が必要です。

03会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、自社の就業規則に、この一般条項が設けられているかを確認することが第一歩です。設けられていない場合には、就業規則の改定にあわせて、この一般条項を追加することをお勧めします。既存の就業規則を変更する場合には、不利益変更に該当しないかの検討(原則として解雇の対象範囲を拡張するものではなく、確認的な規定にとどまる限り、大きな問題は生じにくいと考えられます)も必要です。

 実際に解雇を検討する場面では、対象となる労働者の行為・事情が、既存の列挙事由に該当するか、該当しない場合には一般条項の「準ずる事由」として整理できるかを、慎重に検討することが重要です。

04よくある質問(FAQ)

Q. 就業規則に列挙されていない理由で、従業員を解雇することはできますか。

見解が対立しており、一概には言えません。列挙されていない事由による解雇を制限すべきとする説と、例示にすぎないとする説があります。一般条項があれば、この問題を回避しやすくなります。

Q. 「その他前各号に準ずる事由」という条項は、どのような効果がありますか。

限定列挙説をとった場合でも、この一般条項によって、個別列挙事由に該当しない場合の解雇の余地を確保することができます。

Q. 一般条項があれば、どんな理由でも解雇できますか。

できません。一般条項も、他の列挙事由と同程度の重大性・悪質性が求められるという限定的な解釈を受けるため、無制限な拡張は認められません。

経営上のポイント 就業規則の普通解雇事由が限定列挙か例示列挙かについては、それ以外の事由による解雇を制限すべきとする説と、例示にすぎないとする説が対立しており、一概には言えません。この不安定な論点への実務的な対応策として、就業規則の普通解雇事由の最後に「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由があるとき」という一般条項を設けておくことをお勧めします。この一般条項は、789の記事で解説した懲戒事由の包括条項と同様、合理的な限定解釈を受けるため、無制限な適用はできません。会社側としては、自社の就業規則にこの一般条項があるかを確認し、なければ追加を検討することが重要です。就業規則の解雇事由の整備は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。就業規則の整備でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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