労働問題1023 嘘の報告を繰り返す社員を懲戒処分・解雇することはできますか
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業務上の嘘は懲戒処分の対象になる——仕事の遂行や職場秩序に関わる嘘がポイント 仕事と無関係なプライベートの嘘は基本的に会社が介入できない。業務上の進捗報告・経費申告・業務記録等の虚偽報告が問題 |
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「嘘」の追及はパワハラにならない——事実確認は上司・社長の正当な職務 業務に関する嘘の確認・追及は業務命令として正当。「追及するのはパワハラだ」という社員の主張に屈する必要はない |
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懲戒処分・解雇には「虚偽報告の具体的事実」の積み重ねが必要 「嘘をつく人だ」という評価だけでは不十分。いつ・何について・どのような虚偽報告をしたかの具体的事実が必要 |
業務上の嘘と私生活の嘘——何が問題になるか
嘘をつく社員への対応を考える際、まず区別しなければならないのが「業務に関連する嘘」と「業務と無関係な私生活の嘘」です。
労働契約は「給料と引き換えに仕事をしてもらう契約」ですから、会社が社員に求められるのは業務遂行に関することに限られます。プライベートの話で嘘をついたとしても、仕事の遂行に何の支障もなければ、会社が介入できる問題ではありません。
一方、以下のような業務上の虚偽報告は、懲戒処分の正当な対象になります。
懲戒処分の対象になる業務上の虚偽報告の例
- 業務の進捗・結果について虚偽の報告をする
- 経費・交通費・通勤手当の虚偽申告
- タイムカード・業務日報等の虚偽記録
- 顧客対応の結果を偽って報告する
- 自分のミス・失敗を隠蔽するための嘘
「パワハラ」と言われても追及をやめない——事実確認は正当な職務
嘘を繰り返す社員の中には、怪しい点を追及すると「それはパワハラだ」と言い返してくるタイプがいます。こうした場合でも、業務に関する事実確認を行うことは上司・経営者の正当な職務であり、適切に行えばパワハラにはなりません。
ただし、「嘘をついたでしょ?」という評価的な追及ではなく、「○月○日の○○について、あなたはどのような対応をしましたか?」という事実ベースの確認が重要です。事実についての議論であれば生産性が高く、相手も言い逃れしにくくなります。
また、重大な虚偽報告があった場合は、事情聴取書を作成することも有効です。質問に対して回答してもらい、その内容を書面にまとめてサインをもらうことで、後の処分の根拠となる証拠を確保できます。
懲戒処分・解雇の可否——具体的な判断基準
虚偽報告を理由とした懲戒処分・解雇が有効になるためには、以下の要素が必要です。
| 懲戒処分・解雇の有効性を左右する要素 | |
| 虚偽報告の具体的事実 | いつ、何について、どのような嘘をついたかが具体的に特定できること |
| 業務への影響・悪質性 | 虚偽報告が業務遂行・職場秩序・会社の損益にどの程度の影響を与えたか |
| 繰り返しの有無 | 一度だけか、注意指導後も繰り返されているか。繰り返しであれば重い処分が正当化されやすい |
| 注意指導の実施 | 以前に注意指導・懲戒処分を行っていたかどうか。事前の指導なしに重い処分は難しい |
横領・経費の不正申告など金銭的な不正を伴う虚偽報告は、比較的重い懲戒処分(懲戒解雇を含む)が認められやすい類型です。一方、業務報告の嘘だけで懲戒解雇まで行うのは難しいことが多く、段階的な処分の積み重ねが必要です。具体的な判断は弁護士への相談をお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、団体交渉、労働組合対応、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。団体交渉対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 嘘をついていることを確認する際に、「パワハラだ」と言われた場合、追及を中止しなければなりませんか?
A. 業務に関する事実確認を適切な方法で行うことはパワハラにはなりません。ただし、怒鳴る・長時間の圧迫面談・感情的な攻撃的発言は問題になりえます。事実ベースで冷静に確認を行い、面談の記録を残してください。不安な場合は弁護士に相談しながら対応してください。
最終更新日:2026年5月7日