労働問題396 パワハラとセクハラの主な違いを教えて下さい。


この記事の要点

最大の違いは「業務上の必要性」。性的言動(セクハラ)は業務上不要であるのに対し、注意指導・業務命令等(パワハラ)は業務上必要なものを含む

この違いが法的評価の分水嶺となります

業務上必要な注意指導等は、業務上不要な性的言動と比較して「違法」とまで評価されにくい。パワハラよりセクハラの方が「違法」と評価されやすい傾向がある

「どちらも同じハラスメントだから同じリスク」という発想は誤りです

セクハラは個人的な問題が多いが、パワハラは会社の意向を受けた注意指導・業務命令等が違法となるかが問題になることもある。会社組織としての管理責任の問われ方が異なる

パワハラは「会社の問題」として論じられやすい構造があります

01違い①:「業務上の必要性」の有無

 パワハラとセクハラの最も本質的な違いは、問題とされる言動に「業務上の必要性があるかどうか」という点にあります。

 性的な言動(セクハラの問題となる行為)は、職場での業務を遂行する上で不要なものです。業務上の必要性がある性的言動は、原則として存在しません。したがって、性的言動があれば、それは業務外の行為として評価される可能性が高くなります。

 一方、注意指導・業務命令等(パワハラの問題となる行為)は、業務を遂行する上で必要なものです。上司が部下の業務上のミスを指摘し、改善を求めること、業務命令を発することは、適切な経営・労務管理として本来必要な行為です。問題は、その指導や命令の方法・内容が業務上の適正な範囲を超えているかどうかにあります。

比較項目 パワハラ(注意指導等) セクハラ(性的言動)
業務上の必要性 あり(業務遂行上必要) なし(業務遂行上不要)
「違法」と評価されやすさ 比較的評価されにくい(必要性・相当性の審査がある) 比較的評価されやすい(業務上不要であるため)
問題の性質 組織的問題となることも多い 個人的問題となることが多い

02違い②:「違法」と評価されやすさの差

 業務上の必要性の有無という違いは、「違法」と評価される際の難易度の差に直結します。

 注意指導・業務命令等(パワハラの問題)は、業務を遂行する上で必要なものです。そのため、業務上の必要性があり、方法が社会通念上相当な範囲内であれば、違法(不法行為等)とまでは評価されにくい傾向があります(392番・395番参照)。

 一方、性的な言動(セクハラの問題)は業務上不要です。性的な言動を行う業務上の必要性という抗弁は成立しにくいため、性的な言動の存在が認定されれば、比較的「違法」と評価されやすい傾向があります。会社経営者・管理職にとっては、セクハラはパワハラよりも発生させないことへの注意が特に求められます。

03違い③:個人的問題か組織的問題か

 セクハラは、特定の個人の性的な言動が問題とされる場面がほとんどです。個人の不適切な行動として、加害者個人の問題として論じられることが多くなります。

 これに対してパワハラは、会社の意向を受けて行った注意指導・業務命令等が違法となるかどうかが問題となることが珍しくありません。例えば、会社が退職勧奨として実施した強い働きかけが、パワハラとして問題とされるケース・業績不振の部署への過度な厳しい管理が組織的パワハラとして問題とされるケースなどがあります。

 この違いは、紛争の構造にも影響します。セクハラは「誰がやったか」という個人の問題として処理される側面が強いのに対して、パワハラは「会社としてどう指示・管理していたか」という組織の問題として論じられる側面があります。会社経営者としては、パワハラが「会社の問題」として問われる構造を理解した上で、組織全体の労務管理体制を整えることが必要です。

043つの違いを踏まえた実務上の対応

 パワハラとセクハラの違いを正確に理解することは、それぞれに対する実務的対応の設計にも影響します。

 セクハラについては、発生させないこと(予防)が最優先です。業務上の必要性がないため、発生した時点で法的リスクが顕在化しやすく、事後の対応よりも事前の防止措置の整備が重要となります。具体的には、ハラスメント研修の実施・相談窓口の設置・方針の明確化等です。

 パワハラについては、「適正な業務指導との区別」という視点が重要です(395番参照)。業務上必要な指導を萎縮させず、一方で業務上不要な不合理な言動を排除するという二面的な対応が求められます。会社の組織的な意向・指示がパワハラと評価されるリスクを意識した体制づくりも必要です。

05まとめ

 パワハラとセクハラの主な違いは3点あります。①性的言動(セクハラ)は業務上不要であるのに対し、注意指導・業務命令等(パワハラ)は業務上必要なものである。②業務上不要な性的言動より、業務上必要な注意指導等の方が「違法」と評価されにくい。③セクハラは個人的問題となることが多いのに対し、パワハラは会社の意向を受けた行為が問題となることもある。これらの違いを理解した上で、それぞれに適切な対応体制を設計することが会社経営者に求められます。具体的な対応については使用者側弁護士のサポートを受けることをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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Q&Aよくある質問

Q1. 退職勧奨が強引すぎるとしてパワハラと主張された場合、会社としてはどう対応すればよいですか。

A. 退職勧奨は会社の意向を受けた組織的な行為であり、パワハラとして問題とされやすい類型の一つです。退職勧奨が違法(不法行為等)と評価されるかどうかは、回数・頻度・方法・言動の内容等を総合考慮して判断されます。「業務上の必要性がある(人員削減等)」「方法が相当(一定の配慮をした上で誘導等)」という事情は考慮されますが、過度な圧力や断れない状況の作出等は違法評価のリスクを高めます。具体的な状況については使用者側弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年5月31日

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