労働問題393 セクハラの定義を教えて下さい。
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「職場におけるセクシュアルハラスメント」はセクハラ指針により定義されており、「職場において行われる性的な言動」に対し、①労働条件につき不利益を受ける(対価型)または②就業環境が害される(環境型)の2類型がある パワハラとは異なり、「職場の優位性」という要件はなく、同僚間・顧客からのセクハラも成立し得ます |
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会社(使用者)には、職場におけるセクハラに関する措置義務がある。加害者個人だけでなく会社自体が責任を問われる構造を理解することが重要 「社員同士の問題だから関係ない」という発想は通用しません |
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セクハラは被害者の主観(不快感)だけでなく、「被害を受けた」という客観的事実の有無で判断される。ただし客観的に評価されやすい行為の類型を正確に理解することが必要 紛争の実態については394番参照 |
目次
01セクハラ指針による定義
「職場におけるセクシュアルハラスメント(セクハラ)」の定義は、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(いわゆる「セクハラ指針」)に定められています。
同指針は、「職場におけるセクシュアルハラスメント」を「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定義しています。
この定義は2つのパターンに分かれます。
02対価型セクハラとは
対価型セクハラは、性的な言動に対する拒否・抵抗等を理由として、解雇・降格・減給・不利益な配置転換・契約更新の拒否等といった労働条件上の不利益を課す行為です。「性的な要求を断ったら仕事を回さなくなった」「拒否したら昇格を見送られた」といったケースが典型例です。
会社経営者・管理職にとって特に注意すべきは、自らが加害者となる可能性があるという点です。部下への性的な言動と、その後の人事上の不利益取扱いが組み合わさった場合は対価型セクハラと評価されるリスがあります。
03環境型セクハラとは
環境型セクハラは、性的な言動によって職場環境が不快なものとなり、労働者の就業環境が害されることをいいます。セクハラの多くはこの環境型に当たります。
「性的な言動」には、性的な発言(卑猥な冗談・性的な話題等)・性的な視線・性的な文書・画像の展示・身体への接触等が含まれます。これらが繰り返されることで、被害者の就業環境が害される状態になれば環境型セクハラと評価されます。
環境型セクハラに関しては、被害者の主観的な不快感だけで直ちに成立するわけではなく、「通常の労働者が就業する上で看過できないほど不快」という客観的評価が必要とされています。しかし、性的な言動の内容・頻度・態様によっては、比較的少ない言動でも成立することがあります。
04パワハラとの違い。「優位性」要件がない
パワハラ(392番参照)と比較したセクハラの大きな特徴は、「職場内の優位性を背景とした行為」という要件がない点です。
セクハラは、上司から部下への行為に限らず、同僚間・後輩から先輩への行為・顧客や取引先からの行為なども「職場におけるセクハラ」に該当し得ます。また、被害者が女性に限られるわけではなく、男性が被害者となるケースや、同性間でのケースも含まれます。
会社経営者としては、「上司・管理職が注意すれば足りる」という発想ではなく、職場全体のあらゆる関係においてセクハラが発生しうることを認識した上で体制を整えることが必要です。
05会社の責任。措置義務と使用者責任
会社(使用者)は、職場におけるセクハラに関し、①方針の明確化・周知、②相談・苦情への対応体制の整備、③迅速かつ適切な事後対応、④プライバシーの保護・不利益取扱いの禁止、といった雇用管理上の措置を講ずる義務(措置義務)を負っています(男女雇用機会均等法11条)。
これに加え、職場内でセクハラが発生した場合、会社は使用者責任(民法715条)または職場環境配慮義務違反(労契法5条)に基づく損害賠償責任を問われる可能性があります。「社員同士の問題だから会社には関係ない」という発想は通用しません。会社経営者としては、セクハラを組織の問題として捉え、予防体制・対応体制の整備を行うことが不可欠です。
06まとめ
セクハラ指針は「職場におけるセクシュアルハラスメント」を、性的な言動に対する労働者の対応により不利益を受ける「対価型」と、性的な言動により就業環境が害される「環境型」の2類型で定義しています。パワハラと異なり「職場内の優位性」という要件はなく、同僚間・顧客からの行為も含まれます。会社には措置義務があり、セクハラ発生時には使用者責任が問われる場合があります。セクハラ問題への対処については使用者側弁護士のサポートを受けることをお勧めします。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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Q&Aよくある質問
Q1. 取引先の担当者から自社の女性社員がセクハラ被害を受けたと申し出がありました。会社として対応が必要ですか。
A. 対応が必要です。セクハラは社内の関係に限られず、取引先・顧客・派遣社員等からの行為も「職場におけるセクハラ」に含まれ得ます。会社は雇用管理上の措置義務を負っており、申し出を受けた場合は事実確認・対応等を速やかに行う必要があります。使用者側弁護士に相談しながら適切に対応することをお勧めします。
Q2. 職場の飲み会での発言もセクハラになりますか。
A. 会社の関係者が参加する飲み会は「職場」に含まれると解されることがあるため、飲み会での性的な発言・行為もセクハラと評価される可能性があります。「プライベートの場だから」という主張が認められないケースも存在します。職場の延長線上にある場面での言動について会社経営者・管理職は特に注意が必要です。
最終更新日:2026年5月31日