労働問題324 訴訟における管理監督者に該当するかどうかの一般的な判断基準はどのようなものですか。
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訴訟における管理監督者性は①職務の内容・権限及び責任の程度 ②実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無・管理の程度 ③待遇の内容・程度——の3要素の総合考慮で判断される 行政解釈(314番〜323番)と基本的に整合した判断枠組みです |
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①②の要素を充足しない場合は、③待遇が相当高くても管理監督者性が否定される傾向にある——①②が主要要素・③は補完的要素 行政解釈(318番)の「①②をクリアして初めて③を検討」という立場と整合します |
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②勤務態様では、タイムカード等による始業終業時刻管理の有無・欠勤控除の有無等が具体的なチェック項目となる 「タイムカードで打刻している+遅刻で給与が減る」なら②の否定方向に働きます |
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③待遇では、役職手当・賃金額が役職に見合っているか・社内賃金順位・管理職昇進前後の賃金総額の比較等が考慮される 「管理職になっても賃金が実質増えていない」という事情は③の否定方向に働きます |
目次
01訴訟における管理監督者性の一般的判断基準——3要素の総合考慮
312番〜323番では行政解釈における管理監督者性の判断について解説しましたが、本記事では実際の訴訟(裁判)における管理監督者性の一般的な判断基準を解説します。
管理監督者は、一般に「労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者」をいうとされ、管理監督者であるかどうかは、以下の3要素を総合的に考慮して判断されます。
02判断要素①——職務の内容・権限及び責任の程度
①職務の内容・権限及び責任の程度を検討するに当たっては、以下のような事項が考慮されます。
①職務の内容・権限及び責任の程度における考慮事項
・労務管理を含む事業経営上重要な事項にかかわっているか
・事業経営に関する決定過程にどの程度関与しているか
・現場業務(管理監督以外の仕事)にどの程度従事していたか
・他の従業員の職務遂行・労務管理に対する関与の程度
・管理監督者として扱われている社員の割合等
「管理監督者として扱われている社員の割合」という考慮事項は重要です。例えば、全従業員の80%が「管理職」として管理監督者扱いとなっているような場合は、実態として管理監督者という立場の希少性・特別性がなく、管理監督者性を否定する方向に働き得ます。
03判断要素②——実際の勤務態様における労働時間の裁量・管理の程度
②実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無・労働時間管理の程度を検討するに当たっては、以下のような事項が考慮されます。
②実際の勤務態様における考慮事項
・タイムカード等による始業終業時刻管理の有無
・欠勤控除の有無等
タイムカードや出退勤管理システムによって始業・終業時刻が記録・管理されている場合、「実際には労働時間の規制になじまないような立場」(316番参照)にあるとはいいにくく、②の要素として否定方向に働き得ます。ただし321番で解説したとおり、過重労働防止・深夜割増賃金支払のための時刻記録は否定要素とならない場合があります。
欠勤控除とは、欠勤した場合に給与から控除される仕組みのことです。欠勤控除がある場合、実質的に出勤義務を課されている(=労働時間を自由に決定できない)ことを示し、②の否定方向に働きます。
04判断要素③——待遇の内容・程度
③待遇の内容・程度を検討するに当たっては、以下のような事項が考慮されます。
③待遇の内容・程度における考慮事項
・役職手当や賃金の額が役職に見合っているか
・社内における賃金額の順位
・管理職になった後の賃金総額と管理職になる前の賃金総額との比較等
「管理職になった後の賃金総額と前の賃金総額の比較」という視点は実務上重要です。管理職に昇進することで役職手当が付く一方、時間外割増賃金(残業代)の支払がなくなるため、実質的に賃金総額が減少している(または増えていない)という場合は、③の観点から否定方向に働き得ます。322番で解説した「時間単価の計算」と組み合わせて評価されることになります。
05①②と③の関係——①②が主要要素・③は補完的要素
①②の要素を充足しない場合には、③待遇が相当高かったとしても、管理監督者性が否定される傾向にあります。したがって、まずは①②が管理監督者に相応しいものであることが必要となるものと考えられます。
この関係性は、318番で解説した行政解釈の立場(「①②をクリアした場合に初めて③を検討するものと考えられる」)と基本的に整合しています。訴訟においても、①職務の内容・権限・責任、②勤務態様における労働時間の裁量という実態面での要件が主要要素であり、③待遇は補完的要素として位置づけられています。
06行政解釈の判断基準との比較
訴訟における判断基準と行政解釈の判断基準は、基本的な考え方や①②③の優先順位において整合しています。ただし、313番で解説したとおり行政解釈は裁判所を拘束しないため、具体的な事案においては行政解釈とは異なる判断がなされる可能性があります。
07まとめ
訴訟における管理監督者性の一般的な判断基準は、①職務の内容・権限及び責任の程度、②実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無・管理の程度、③待遇の内容・程度——の3要素の総合考慮です。①②が主要要素であり、①②を充足しない場合は③待遇が相当高くても管理監督者性が否定される傾向にあります。この点は行政解釈の立場と基本的に整合しています。具体的な管理職の管理監督者性の判断については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理職の管理監督者性の判断・残業代の取り扱い・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。
Q&Aよくある質問
Q1. 訴訟における管理監督者性の一般的な判断基準は何ですか。
A. ①職務の内容・権限及び責任の程度、②実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無・管理の程度、③待遇の内容・程度——の3要素を総合的に考慮して判断されます。①②が主要要素であり、①②を充足しない場合は③待遇が相当高くても管理監督者性が否定される傾向にあります。
Q2. タイムカードで出退勤を記録している場合、訴訟では②の否定要素となりますか。
A. タイムカード等による始業終業時刻管理は②の考慮事項として否定方向に働き得ます。ただし、過重労働防止・深夜割増賃金支払のための記録は否定要素とならない場合があります(321番参照)。実際に遅刻・早退等で欠勤控除が行われているかどうかも重要な確認事項です。
Q3. 「管理監督者として扱われている社員の割合」はなぜ考慮されるのですか。
A. 管理監督者(労基法41条2号)の趣旨は、経営者と一体的な立場にある「特別な存在」に対して労働時間規制の適用を除外するというものです。全従業員の大多数が管理監督者扱いとなっている場合は、この「特別な存在」としての実態がなく、形式的に管理監督者に分類しているだけの疑いが強くなるため、否定方向に働き得ます。
Q4. 訴訟における判断基準と行政解釈の判断基準はどのように違いますか。
A. 基本的な考え方や①②③の優先順位において概ね整合しています。ただし行政解釈は裁判所を拘束しないため、具体的な事案において行政解釈とは異なる判断がなされる可能性があります。また、訴訟では「管理監督者として扱われている社員の割合」など行政解釈では明示されていない考慮事項が評価される場合もあります。
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最終更新日:2026年5月10日