労働問題305 専門業務型裁量労働制の適用要件を教えて下さい。


この記事の要点

専門業務型裁量労働制の適用要件は3つ——①労使協定の締結 ②就業規則・労働協約への規定 ③対象労働者を対象業務に就かせること

3つの要件をすべて満たして初めて適法に専門業務型裁量労働制を適用できます

要件①の労使協定には、労基法38条の3第1項各号が定める6つの事項(対象業務・みなし労働時間・具体的指示をしないこと・健康福祉措置・苦情処理措置・有効期間と記録保存)を定める必要がある

労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要です

要件②の就業規則・労働協約への規定は、専門業務型裁量労働制を適用するための労働契約上の根拠として必要

労使協定の締結だけでは足りません(274番で解説した36協定と残業命令権の関係と同様の構造)

対象業務は厚生労働省令(労基則24条の2の2第2項)で定められた19業務に限定される——自社が希望する業務が対象業務に該当するか事前確認が必要

対象業務以外の業務には専門業務型裁量労働制を適用できません

01専門業務型裁量労働制の適用要件の概要

 専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)を適用するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

番号 要件の内容 根拠
労基法38条の3第1項各号に掲げる事項を労使協定で定め、所轄の労働基準監督署に届け出ること 労基法38条の3第2項
就業規則や労働協約において専門業務型裁量労働制について定めて労働契約の内容とすること 労基法89条等
対象労働者を対象業務(厚生労働省令で定める19業務のうち労使協定で定めたもの)に就かせること 労基法38条の3第1項1号

02要件①——労使協定で定めるべき6つの事項(労基法38条の3第1項各号)

 専門業務型裁量労働制の適用にあたって締結する労使協定には、労基法38条の3第1項各号が定める以下の6つの事項を定める必要があります。

事項 内容の概要
1号 対象業務 専門業務型裁量労働制を適用する業務(19業務のうち対象とするもの)を特定して定める
2号 みなし労働時間 対象労働者の労働時間として「みなす時間」を具体的に定める(例:1日8時間・1日10時間等)
3号 具体的な指示をしないこと 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、対象労働者に対して使用者が具体的な指示をしない旨
4号 健康・福祉確保措置 対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置(健康診断・産業医への相談機会の確保等)
5号 苦情処理措置 対象労働者からの苦情の処理に関する措置(苦情申出窓口の設置・処理手続の整備等)
6号 有効期間と記録保存 労使協定の有効期間(3年以内が望ましい)、及びその期間中の健康福祉確保措置・苦情処理措置に関する記録の保存

 労使協定は、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要です(労基法38条の3第2項)。届出がなければ、専門業務型裁量労働制の適用は認められません。

03要件②——就業規則・労働協約への規定と労働契約の内容化

 就業規則や労働協約において専門業務型裁量労働制について定めて労働契約の内容とすることが必要です。

 労使協定の締結・届出は刑事法上の適法性要件(制度を導入するための前提条件)ですが、個々の労働者に専門業務型裁量労働制を適用するためには、就業規則や労働協約において「専門業務型裁量労働制を採用する」旨を定めることで、これを労働契約の内容とすることが必要です。

274番(36協定と残業命令権)との類比
274番で解説したとおり、36協定の締結・届出(刑事法上の要件)があっても、就業規則等の労働契約上の根拠がなければ残業を命じることができないのと同様に、専門業務型裁量労働制も、労使協定の締結・届出があっても就業規則等に規定がなければ個々の労働者に適用することができません。

04要件③——対象労働者を対象業務に就かせること

 対象労働者を対象業務(厚生労働省令で定める19業務のうち労使協定で定めたもの)に就かせることが必要です。

 専門業務型裁量労働制の「対象業務」は、厚生労働省令(労基則24条の2の2第2項)で定められた19業務に限定されており、自社が希望するすべての業務に適用できるわけではありません。主な対象業務の例は以下のとおりです。

専門業務型裁量労働制の主な対象業務(19業務の例)
研究開発の業務 / 情報処理システムの分析または設計の業務(SE・プログラマー等)/ 新聞・出版・放送における取材・編集の業務 / 衣服・室内装飾等のデザインの考案の業務 / プロデューサーまたはディレクターの業務 / 公認会計士・弁護士・建築士・不動産鑑定士・弁理士・税理士・中小企業診断士の業務 / 広告の新聞・雑誌・TV・放送・インターネットにおける制作の業務 等

(詳細は厚生労働省令・告示でご確認ください)

 対象業務に該当するかどうかは業務の実態・内容に基づいて個別に判断されます。肩書だけでなく実際の業務内容が対象業務に該当するかどうかを事前に確認することが重要です。また、対象業務に従事している労働者であっても、実態として対象業務以外の業務も行っている場合は、専門業務型裁量労働制の適用が否定されることがあります。

05まとめ

 専門業務型裁量労働制を適用するためには、①労基法38条の3第1項各号の6つの事項を定めた労使協定の締結・届出、②就業規則・労働協約への規定と労働契約の内容化、③対象労働者を対象業務(厚生労働省令で定める19業務のうち労使協定で定めたもの)に就かせること——の3つの要件をすべて満たす必要があります。

 要件の充足を欠いた状態で専門業務型裁量労働制を運用すると、実労働時間に基づく残業代請求を受けるリスがあります。専門業務型裁量労働制の適正な導入・要件の確認については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。専門業務型裁量労働制の導入・要件確認・就業規則の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 専門業務型裁量労働制の適用要件は何ですか。

A. ①労基法38条の3第1項各号に掲げる6つの事項を定めた労使協定の締結・届出、②就業規則・労働協約への規定と労働契約の内容化、③対象労働者を対象業務に就かせること——の3つの要件をすべて満たす必要があります。

Q2. 労使協定に定めるべき6つの事項とはどのようなものですか。

A. ①対象業務(19業務のうち適用するもの)、②みなし労働時間(具体的な時間数)、③遂行手段・時間配分について具体的な指示をしない旨、④健康・福祉確保措置、⑤苦情処理措置、⑥有効期間と記録保存——の6つです(労基法38条の3第1項各号)。労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要です。

Q3. 就業規則への規定はどのようにすればよいですか。

A. 就業規則に「専門業務型裁量労働制を採用する」旨と対象業務・みなし労働時間等を定め、労働契約の内容として明確にすることが必要です。就業規則への規定がない場合、労使協定を締結・届出していても個々の労働者に対して専門業務型裁量労働制を適用することができません。

Q4. 対象業務はどのように定められていますか。

A. 厚生労働省令(労基則24条の2の2第2項)で定められた19業務に限定されています。研究開発・情報処理システムの分析・設計・取材記者・デザイナー・プロデューサー・弁護士・公認会計士・税理士等が含まれます。自社が希望する業務が19業務に該当するかどうかを事前に確認することが重要です。

最終更新日:2026年5月10日



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