労働問題287 労働時間の規制緩和制度・労働時間規定の適用除外制度にはどのようなものがありますか。


この記事の要点

労働時間の規制緩和のための制度は4種類——変形労働時間制・フレックスタイム制・みなし労働時間制・裁量労働制

これらは労働時間の「算定・管理方法」を変える制度であり、残業代支払義務が完全になくなるわけではありません

管理監督者及び機密事務取扱者(労基法41条)は、そもそも労働時間等に関する規定の適用が除外される

①〜④とは異なり、時間外・休日労働の割増賃金規定が適用されません(ただし深夜割増賃金は別途発生)

管理監督者(労基法41条2号)は法律上の厳格な要件があり、「管理職」という肩書があっても要件を満たさない場合は残業代が発生する

名ばかり管理職の問題は残業代請求トラブルの典型例です

各制度を適法に活用するには、就業規則・労使協定等の適正な手続きが必要

手続きを欠いた制度の運用は、後に多額の残業代請求につながります

01労働時間の規制緩和と適用除外の概要

 労基法は原則として「1日8時間・週40時間」の法定労働時間を定めていますが(労基法32条)、業種・職種・業務の性質によっては、この原則をそのまま適用することが適切でない場合があります。そのため、労基法は以下のような労働時間の規制緩和制度(①〜④)と適用除外制度(⑤)を設けています。

番号 制度の名称 根拠条文 性質
変形労働時間制 労基法32条の2・32条の4・32条の5 規制緩和
フレックスタイム制 労基法32条の3 規制緩和
事業場外労働のみなし労働時間制 労基法38条の2 規制緩和
裁量労働制 労基法38条の3・38条の4 規制緩和
管理監督者及び機密事務取扱者 労基法41条 適用除外(より強力)

02①変形労働時間制(労基法32条の2・32条の4・32条の5)

 変形労働時間制とは、一定の単位期間(1か月・1年・1週間)を平均して1週の労働時間が法定労働時間(週40時間)を超えない範囲であれば、特定の日・週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。繁閑の差が大きい業種・業態において、業務量に応じた柔軟な労働時間の配分を可能にします。

変形労働時間制の3つの種類
1か月単位の変形労働時間制(労基法32条の2):1か月以内の期間を平均して週40時間以内となるよう所定労働時間を配分する
1年単位の変形労働時間制(労基法32条の4):1年間を通じて平均して週40時間以内となるよう労働時間を配分する(繁忙期・閑散期のある業種に適する)
1週間単位の非定型的変形労働時間制(労基法32条の5):常時30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店のみ適用可能

03②フレックスタイム制(労基法32条の3)

 フレックスタイム制とは、一定の期間(清算期間:最大3か月)の総労働時間を定めておき、その範囲内で労働者が日々の始業・終業時刻を自由に決定できる制度です。コアタイム(必ず出勤しなければならない時間帯)とフレキシブルタイム(出退勤を自由に選択できる時間帯)を組み合わせることが多い形態です。

 フレックスタイム制の場合、清算期間の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えた部分が時間外労働となります。1日単位では時間外労働の判断はされず、清算期間全体での総労働時間で判断されます。

04③事業場外労働のみなし労働時間制(労基法38条の2)

 事業場外労働のみなし労働時間制とは、労働者が事業場外で業務に従事する場合に、実際の労働時間を把握することが困難なときに、所定労働時間または労使協定で定めた時間を労働時間とみなす制度です。

 外回りの営業職・出張業務等、使用者の指揮命令の下で労働時間を管理することが難しい業務に適用されます。ただし、事業場外であっても上司と常に連絡を取りながら業務を行っている場合(携帯電話等による随時指示がある場合等)は、この制度の適用が否定されることがあります。

05④裁量労働制(労基法38条の3・38条の4)

 裁量労働制とは、業務の性質上、業務の遂行手段や方法・時間配分等を労働者の裁量に委ねる必要がある場合に、実際の労働時間にかかわらず、労使協定(または労使委員会の決議)で定めた時間を労働時間とみなす制度です。

裁量労働制の2種類
専門業務型裁量労働制(労基法38条の3):研究開発・取材記者・デザイナー・弁護士・SEなど19の専門的業務が対象。労使協定の締結・届出が必要。
企画業務型裁量労働制(労基法38条の4):事業運営に関する企画・立案・調査・分析を行う一定の労働者が対象。労使委員会の決議・届出が必要(要件が厳しい)。

06⑤管理監督者及び機密事務取扱者——労働時間規定の適用除外(労基法41条)

 管理監督者(労基法41条2号)及び機密事務取扱者(同条3号)については、そもそも、労働時間等に関する規定の適用が除外されます。①〜④の規制緩和制度とは性質が異なり、時間外・休日労働の割増賃金(残業代)の支払義務が生じません(ただし、深夜割増賃金は別途発生します)。

「名ばかり管理職」の問題——肩書だけでは管理監督者にはなれない

労基法上の「管理監督者」であるためには、①労働時間・休憩・休日等の労働条件について経営者と一体的な立場にあること(経営者との一体性)、②労働時間の規制に縛られない自由な勤務態様であること(勤務態様の自由性)、③名称にふさわしい賃金等の待遇を受けていること(処遇の相当性)——という厳格な要件を満たす必要があります。

「部長」「課長」などの肩書があっても、上記の要件を満たさない場合(いわゆる「名ばかり管理職」)は労基法上の管理監督者には当たらず、時間外・休日労働の割増賃金(残業代)の支払義務が生じます。この問題は残業代請求トラブルの典型的なケースです。

07まとめ

 労働時間の規制緩和のための制度としては、①変形労働時間制(労基法32条の2・32条の4・32条の5)、②フレックスタイム制(労基法32条の3)、③事業場外労働のみなし労働時間制(労基法38条の2)、④裁量労働制(労基法38条の3・38条の4)の4種類があります。また、⑤管理監督者及び機密事務取扱者(労基法41条)については、そもそも労働時間等に関する規定の適用が除外されます。

 各制度を適法に活用するためには、就業規則・労使協定・労使委員会の決議等の適正な手続きが必要であり、手続きを欠いた運用は後に多額の残業代請求につながります。特に管理監督者については「名ばかり管理職」の問題があり、肩書だけで管理監督者と扱うことには大きなリスクがあります。各制度の活用については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。変形労働時間制・裁量労働制の導入・管理監督者の要件確認・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 変形労働時間制とはどのような制度ですか。

A. 一定の単位期間(1か月・1年等)を平均して週40時間を超えない範囲であれば、特定の日・週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です(労基法32条の2・32条の4・32条の5)。繁閑の差が大きい業種で活用されます。就業規則または労使協定の締結・届出が必要です。

Q2. フレックスタイム制とはどのような制度ですか。

A. 清算期間(最大3か月)の総労働時間を定めておき、その範囲内で労働者が日々の始業・終業時刻を自由に決定できる制度です(労基法32条の3)。清算期間の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えた部分が時間外労働となります。労使協定の締結が必要です。

Q3. 裁量労働制とはどのような制度ですか。

A. 業務の遂行手段・方法・時間配分等を労働者の裁量に委ねる必要がある場合に、実際の労働時間にかかわらず一定の時間を労働時間とみなす制度です(労基法38条の3・38条の4)。専門業務型(19業務)と企画業務型の2種類があり、それぞれ労使協定・労使委員会の決議等の要件を満たす必要があります。

Q4. 「管理職」なら残業代を支払わなくてよいですか。

A. 「部長」「課長」などの肩書があっても、労基法上の「管理監督者」(労基法41条2号)の要件(経営者との一体性・勤務態様の自由性・処遇の相当性)を満たさない場合は、残業代の支払義務が生じます。いわゆる「名ばかり管理職」の問題として、残業代請求トラブルの典型例です。管理監督者の要件の確認については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年5月10日



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