労働問題222 1日の所定労働時間を9時間と合意することはできるか|変形労働時間制・上限規制を会社側弁護士が解説
1日の所定労働時間を9時間と合意することはできるか
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原則として1日9時間の所定労働時間は設定できない 労基法32条の法定労働時間は1日8時間。これを超える合意は同法13条により無効となる |
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例外は変形労働時間制・フレックスタイム制の適法な活用のみ 1ヶ月単位・1年単位の変形労働時間制を活用すれば、特定日に9時間以上の所定労働時間を設定できる場合がある |
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就業規則に9時間と記載していても8時間超の1時間分は時間外扱い 仮に就業規則に「所定労働時間9時間」と定めていても、8時間を超える1時間分は法定時間外労働として割増賃金が発生する |
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時間外労働の上限規制(月45時間等)の遵守も必要 2019年施行の上限規制により、時間外労働は原則月45時間・年360時間が上限。違反すれば罰則の対象 |
目次
01労基法上の法定労働時間と所定労働時間の違い
労働時間には「法定労働時間」と「所定労働時間」の二つがあります。法定労働時間は労働基準法第32条が定める上限であり、1日8時間・1週間40時間(特例措置対象事業場は週44時間)です。所定労働時間は会社が就業規則や雇用契約書で定める労働時間のことで、法定労働時間を超えない範囲で自由に設定できます。
多くの会社は所定労働時間を法定労働時間と同じか、それより短い時間(例:7時間30分・8時間)に設定しています。所定労働時間を超えた分は「残業」ですが、法定労働時間内の残業(法内残業)には25%の割増義務はなく、法定労働時間を超えた部分のみ25%以上の割増賃金が必要です。
021日9時間の所定労働時間は原則として無効
労働基準法第13条は「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とし、この法律で定める基準による」と定めています。つまり、法定労働時間(1日8時間)を超える所定労働時間を就業規則や雇用契約に定めても、その部分は無効となります。
仮に就業規則に「所定労働時間9時間」と記載していた場合、8時間を超える1時間分は法定時間外労働となり、25%以上の割増賃金が発生します。「就業規則に書いてあるから所定内だ」という主張は通りません。この誤解から、気づかないうちに未払い残業代が積み上がっているケースがあります。
経営者が見落としやすいポイント
「8時間以上働いてもらうのは当たり前」と思っていても、8時間を超えた分には割増賃金の支払い義務があります。就業規則の記載と実際の支払いが一致しているか確認することが重要です。なお、残業代の時効は2020年改正で3年(原則5年)に延長されており、過去3年分の未払い残業代を退職者から請求されるリスクがあります。
03変形労働時間制を使えば特定日に9時間設定できる
例外として、変形労働時間制を適法に導入すれば、特定の日や週に法定労働時間を超える所定労働時間を設定することができます。代表的なものが以下の制度です。
1ヶ月単位の変形労働時間制:労使協定または就業規則により1ヶ月を平均して週40時間以内になるよう設定することで、特定日に8時間超の所定労働時間を定めることができます。
1年単位の変形労働時間制:繁忙期と閑散期がある業種に向いており、労使協定を締結することで1年間を平均して週40時間以内になるよう設定できます。特定日に10時間まで所定労働時間を設定することが可能です。
いずれも導入の要件(労使協定の締結・就業規則への記載・労基署への届出)が厳格に定められています。要件を満たさない変形労働時間制は無効となるため、導入前に必ず弁護士・社会保険労務士に確認してください。
04時間外労働の上限規制と経営者が注意すべきこと
2019年4月(中小企業は2020年4月)から、時間外労働の上限規制が法定化されました。原則として時間外労働は月45時間・年360時間が上限です。36協定を締結していても、特別条項で認められる上限は年720時間・月100時間未満(休日労働含む)です。
1日9時間働かせることを常態化すると、1時間分の時間外労働が毎日積み上がります。月22日出勤の場合、毎月22時間の時間外労働となり、原則上限の月45時間の約半分を占めます。他の残業と合算すると上限規制に抵触しやすくなります。
また上限規制に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となります。経営者として、労働時間管理の体制を整備することが不可欠です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 特例措置対象事業場(小売業・飲食業等)は週44時間まで認められていますが、1日の上限はどうなりますか。
A. 特例措置対象事業場でも、1日の法定労働時間は8時間です。週の法定労働時間が44時間に延長されているのは週単位のルールだけであり、1日8時間を超えた分には25%の割増賃金が必要です。
Q2. 社員の同意があれば1日9時間の所定労働時間を設定できますか。
A. できません。労基法13条により、法定労働時間を超える合意は無効となります。社員が同意していても、8時間を超える分は時間外労働として割増賃金が発生します。
Q3. 変形労働時間制を導入すれば、残業代を払わなくてよくなりますか。
A. そうではありません。変形労働時間制を適法に導入すれば、予め定められた時間割の範囲内で法定労働時間を超えても割増賃金が不要になりますが、その範囲を超えた部分には割増賃金が発生します。また変形労働時間制の要件を満たしていなければ、全ての残業に割増賃金が必要です。
Q4. 就業規則に「所定労働時間9時間」と記載しています。このまま運用するリスクはありますか。
A. 大きなリスクがあります。退職者から「毎日1時間分の残業代が未払い」として3年分(2020年改正後)の請求を受ける可能性があります。就業規則の記載を直ちに是正し、過去の未払い状況について弁護士に確認することをお勧めします。
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最終更新日:2026年5月28日
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