労働問題223 残業代計算の基礎となる「時間外労働時間」とは|1日・週単位の判定・上限規制を会社側弁護士が解説
残業代計算の基礎となる「時間外労働時間」とは何か
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時間外労働時間とは法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間 「所定労働時間を超えた時間」ではなく「法定労働時間を超えた時間」が25%割増賃金の対象 |
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時間外労働は「1日単位」と「1週間単位」の二つで判定する 1日の判定(8時間超)と1週間の判定(40時間超)を別々に行い、どちらかで超えれば時間外となる |
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月60時間超の割増率は50%——2023年4月から中小企業も対象 時間外労働時間が月60時間を超えた部分は割増率50%が適用される |
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上限規制(月45時間・年360時間)の遵守も必要——違反は罰則あり 2019年施行の働き方改革関連法による上限規制。割増賃金の支払いとは別に遵守が必要 |
目次
01時間外労働時間の定義——法定労働時間を超えた時間
残業代(割増賃金)の計算対象となる「時間外労働時間」とは、労働基準法第32条が定める法定労働時間を超えて労働させた時間を指します。法定労働時間は1日8時間・1週間40時間です(特例措置対象事業場は1週間44時間)。
「所定労働時間を超えた時間」と混同されることがありますが、この二つは異なります。例えば所定労働時間が7時間30分の会社で1時間残業した場合、法定労働時間の8時間との差は30分のみです。この場合、法定時間外労働は30分であり、残りの30分は法内残業(法定時間外割増不要)となります。
021日単位と1週間単位の二つで判定する
時間外労働時間の判定は、1日単位と1週間単位の両方で行います。どちらかで法定労働時間を超えた時間が、割増賃金の対象です。
1日単位の判定:その日の労働時間が8時間を超えた分が時間外労働です。例えばある日に10時間働いた場合、2時間が時間外労働です。
1週間単位の判定:その週の総労働時間が40時間を超えた分のうち、1日単位で既に時間外労働と判定された時間を除いた部分が追加の時間外労働となります。例えば月〜金の5日間、毎日ちょうど8時間(合計40時間)働いた週は時間外労働ゼロですが、毎日8時間30分(合計42時間30分)働いた場合は、1日単位で各日30分(計150分)が時間外に加えて、週単位での超過分も計算します。
二重カウントに注意
1日単位で時間外労働と判定した時間を、1週間単位でも重複してカウントする「二重カウント」は誤りです。1日単位の判定が優先され、1週間単位の判定ではその分を除いた計算をします。計算方法を誤ると、会社側に不利な(過大な)残業代が算定されることがあります。
03月60時間超の50%割増と2019年施行の上限規制
時間外労働時間が月60時間を超えた場合、超えた時間分の割増率は50%以上となります。2023年4月1日からは中小企業にも適用されており、月60時間超の残業が常態化している場合は賃金計算の見直しが必要です。
また2019年4月(中小企業は2020年4月)施行の働き方改革関連法により、時間外労働には上限規制が設けられています。原則として月45時間・年360時間が上限です。特別条項付き36協定を締結しても、年720時間・月100時間未満(休日労働含む)が上限です。
上限規制に違反した場合は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となります。割増賃金を支払っていても、上限超過は別途罰則の対象になる点に注意が必要です。
04時間外労働時間の把握義務と記録整備
2019年4月施行の労働安全衛生法改正により、会社は全ての労働者の労働時間を客観的に把握する義務を負っています。タイムカード・ICカード・パソコンのログ記録などによる客観的な把握が必要であり、自己申告制は原則として認められません。
時間外労働時間の記録が不十分な場合、退職者から残業代を請求された際に、会社側で実際の労働時間を反証する術がなくなります。労働者側が主張する時間が採用されやすくなるため、正確な記録の整備は会社側の防衛手段として不可欠です。
また、残業代の時効は2020年改正で原則5年・当分の間3年に延長されています(改正前は2年)。記録の保存期間も少なくとも3年以上とする必要があります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 所定労働時間を超えた時間と時間外労働時間は同じですか。
A. 異なります。時間外労働時間(25%割増の対象)は法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間です。所定労働時間が7時間30分の場合、8時間までの30分は法内残業(割増不要)であり、8時間を超えた部分のみが25%割増の対象です。
Q2. 1日単位と1週間単位の両方で時間外労働が発生した場合、両方分の割増賃金を払う必要がありますか。
A. 重複しない部分についてはどちらも支払う必要があります。ただし1日単位で既に時間外労働と判定した時間を、1週間単位で重複カウントすることはしません。二重計算にならないよう注意が必要です。
Q3. 36協定を締結すれば時間外労働をいくらでもさせられますか。
A. できません。2019年施行の上限規制により、36協定を締結しても時間外労働は原則月45時間・年360時間が上限です。特別条項があっても年720時間・月100時間未満(休日労働含む)が絶対的な上限です。違反した場合は罰則の対象となります。
Q4. タイムカードがなく労働時間を把握していませんでした。退職者から残業代を請求されたらどうなりますか。
A. 客観的な労働時間記録がない場合、退職者が主張する時間が採用されやすくなります。メール送信時刻・入退館記録・周囲の証言などから労働時間が推認されることもあります。記録がなくても法的な反論手段はありますので、まず会社側専門の弁護士に相談してください。
最終更新日:2026年5月28日
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