労働問題108 退職勧奨の法的性質とは?「申込みの誘引」の意味と合意成立の3ステップ
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退職勧奨は法的に「合意退職の申込みの誘引」と位置づけられる——退職勧奨自体では労働契約は終了しない 退職勧奨は「退職という選択肢を検討してほしい」と働きかける段階にとどまるものであり、この時点ではまだ労働契約の終了という法的効果は生じていません |
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退職届(申込み)+会社の承諾によって初めて合意退職が成立する ①退職勧奨(誘引)→②社員の退職届(申込み)→③会社の承諾、という3ステップを経て初めて合意退職が成立します |
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「申込みの誘引」という性質により、会社は解雇権濫用リスクを回避しながら人員調整を実現できる 社員が自発的に退職届を提出し会社がそれを承諾することで成立する合意退職であれば、解雇無効リスクを回避できます |
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社員の自由な意思が確保されていることが前提——執拗性・脅迫的言動は退職強要となる 「申込みの誘引」の範囲を超えた執拗・脅迫的な退職勧奨は、退職強要として不法行為となります |
目次
01退職勧奨の法的位置づけ——「申込みの誘引」とは何か
退職勧奨の法的性質を理解するうえで重要なのは、退職勧奨がそれ自体で労働契約を終了させる行為ではないという点です。民法上の契約理論に基づけば、退職勧奨は一般に「合意退職の申込みの誘引」と位置づけられます。これは、会社が社員に対して退職という選択肢を提示し、社員自身から退職の申込みを行うよう働きかける行為を意味します。
退職勧奨は「退職という選択肢を検討してほしい」と働きかける段階にとどまるものであり、この時点ではまだ労働契約の終了という法的効果は生じていません。労働問題を専門とする弁護士のもとには、「退職勧奨をしたが社員が応じなかった場合はどうすればよいか」「退職勧奨の後に退職届をもらうまでの流れはどうなるか」という相談が多く寄せられます。法的な仕組みを正確に理解することが適切な対応の出発点になります。
02「申込みの誘引」という形をとるメリット——解雇リスクの回避
退職勧奨が「申込みの誘引」という形式をとる最大のメリットは、雇用契約を終了させる意思表示の主体を会社ではなく社員側に置くことができる点にあります。解雇は会社の一方的な意思表示であり、解雇権濫用法理(労契法16条)により客観的合理性と社会通念上の相当性が認められなければ解雇は無効と判断されます。解雇が無効と判断された場合には長期間のバックペイの支払いなど重大な経営リスクを負うことになります。
社員が自発的に退職届を提出し会社がそれを承諾することで成立する合意退職であれば、契約自由の原則のもとでその効力は広く認められる傾向があります。これが退職勧奨を「申込みの誘引」として位置づける実務上の重要な意義です。
「申込みの誘引」であることの落とし穴
退職勧奨は「申込みの誘引」なので、会社は退職を強制できない
社員には拒否する完全な自由があります。拒否されても不利益な取扱いをしてはなりません。
「申込みの誘引」の範囲を超えた執拗・脅迫的な退職勧奨は退職強要として不法行為となる
退職勧奨の適法性の境界線を越えると、損害賠償請求の対象となります。事前に会社側弁護士に相談してください。
03裁判実務上の評価——適法な退職勧奨の基準
裁判所は退職勧奨そのものを違法な行為とは考えておらず、社員の自由な意思が尊重されている限り適法な企業活動として認める傾向にあります。社会通念上相当な範囲で行われているかどうかが重要な判断基準です。
具体的には、①社員が退職するかどうかを自由に判断できる状況が保たれているか、②会社側の説明が威圧的なものになっていないか、③面談の回数や方法が過度な圧力となっていないか——といった事情が総合的に検討されます。一方、執拗な説得や威圧的な言動によって退職を迫った場合には、「申込みの誘引」の範囲を超え、退職強要やハラスメントと評価される可能性があります。
04合意成立までの3ステップと実務上の注意点
退職勧奨の進め方・退職合意書の作成については、使用者側弁護士・会社側弁護士に依頼することをお勧めします。適法かつ実効性の高い退職勧奨を実現するために、会社側弁護士への早期相談が重要です。
05まとめ——会社側弁護士が示す退職勧奨の法的要点
退職勧奨は法的に「合意退職の申込みの誘引」と位置づけられます。退職勧奨自体では労働契約は終了せず、①退職勧奨(誘引)→②社員の退職届(申込み)→③会社の承諾、という3ステップを経て初めて合意退職が成立します。
「申込みの誘引」という形をとることで会社は解雇権濫用リスクを回避しながら合意による契約終了という安定した形で人員調整を実現できる可能性があります。ただし社員の自由な意思が確保されていることが前提であり、執拗性・脅迫的言動は退職強要として違法となります。退職勧奨を検討する際は事前に会社側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。退職勧奨の法的性質・進め方・退職合意書の作成でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 退職勧奨は法的にどのように位置づけられますか。
A. 退職勧奨は「合意退職の申込みの誘引」と位置づけられます。退職勧奨自体では労働契約は終了せず、社員の退職届(申込み)と会社の承諾によって初めて合意退職が成立します。
Q2. 退職勧奨で社員を確実に退職させることはできますか。
A. できません。退職勧奨は「申込みの誘引」であり、社員には拒否する完全な自由があります。強制的な退職は違法となります。
Q3. 退職届を受け取った後に取消しされるリスクはありますか。
A. あります。退職届が「合意退職の申込み」と評価された場合、会社が承諾するまでは撤回可能です。また退職勧奨において心理的圧力があったと評価された場合、錯誤・強迫を理由とした取消しが主張され得ます。
Q4. 退職勧奨と解雇では法的リスクがどう違いますか。
A. 解雇は会社の一方的意思表示であり、解雇権濫用として無効となるリスクがあります(労契法16条)。退職勧奨は合意による退職を目指すため、適切に進めた場合は解雇無効リスクを回避できます。
最終更新日:2026年5月10日