労働問題686 企画業務型裁量労働制の労基署への届出と導入手続きの実務【会社側弁護士が解説】

この記事の結論
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みなし効力の発生には①労使委員会決議・届出②就業規則の定め③対象業務への従事の3要件が必要

一つでも欠けた場合、みなし労働時間の効力は発生しません。特に「届出」を失念するケースが実務上見られます。届出なしでは就業規則への定めや労使合意があっても法的効力は発生しません(平成12年基発1号)。

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届出は事業場ごとに必要。他の事業場の決議・届出の流用は不可

企画業務型裁量労働制の適用は事業場単位です。複数事業場を持つ企業の場合、各事業場ごとに手続きを完結させる必要があります。グループ会社全体での一括手続きは認められません。

01労働時間みなし効力の発生要件

 企画業務型裁量労働制を適用してみなし労働時間の効力を発生させるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

① 労使委員会の決議および労働基準監督署長への届出
② 就業規則等における定め
③ 対象労働者を対象業務に就かせること

 いずれか一つでも欠けた場合、みなし労働時間の効力は発生しません。特に「届出」を失念するケースが実務上見られますので注意が必要です。

02労使委員会の決議内容(7事項)

 企画業務型裁量労働制を導入するためには、当該事業場に設置された労使委員会において、委員の5分の4以上の多数による議決により、以下の7事項について決議を行う必要があります(労基法38条の4第1項)。

番号 決議事項
対象業務
対象労働者の範囲
対象労働者の労働時間として算定される時間(みなし労働時間)
健康・福祉確保措置
苦情処理措置
対象労働者の同意および不同意の場合の不利益取扱い禁止
厚生労働省令で定めるその他の事項

これらの決議事項はすべて欠かすことができず、一部でも欠落があれば制度の適用が認められないリスクがあります。

03労働基準監督署長への届出

 労使委員会の決議を行った後、使用者は当該決議を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります(労基法38条の4第1項)。届出が行われなければ、就業規則への定めや労使間の合意があったとしても、企画業務型裁量労働制の法的効力は発生しません。

04指針における留意事項

 企画業務型裁量労働制の実施に関しては、「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」(平成11年12月27日労働省告示第149号)において、留意すべき事項が詳細に定められています。

 指針の「第3 労使委員会が決議する法第38条の4第1項各号に掲げる事項」では、上記①〜⑦の各事項について「当該事項に関し具体的に明らかにする事項」と「留意事項」に分けて詳細な指針が示されています。

重要:指針の「具体的に明らかにする事項」に反した決議がなされた場合は、企画業務型裁量労働制の効果は生じないとする行政解釈があります(平成12年3月28日基発180号)。決議の内容が指針に照らして適切かどうかを事前に確認することが不可欠です。

05届出に関する行政解釈(平成12年基発1号)

 届出に関しては、以下の行政解釈が示されています(平成12年1月1日基発1号)。

「決議は、規則様式第13号の2により、所轄労働基準監督署長に届出をしなければならないこと。この届出を行わなければ、法第38条の4第1項による企画業務型裁量労働制の効力は発生しないこと。」(平成12年1月1日基発1号)

 届出は「規則様式第13号の2」という定められた様式で行う必要があり、様式を誤ると届出が受理されないリスクがあります。事前に所轄労基署に確認しておくことが望ましいでしょう。

06事業場ごとの対応が必要な理由

 企画業務型裁量労働制の適用は事業場単位です。そのため、以下のような状況では制度を適用することができません。

・当該事業場で労使委員会の決議がなされていない場合
・決議が労働基準監督署長に届け出られていない場合
・別の事業場で決議・届出がなされているだけの場合
・就業規則に定めがあっても届出がない場合
・個別の労使合意があるだけで届出がない場合

 複数事業場を持つ企業の場合、各事業場ごとに手続きを完結させる必要があります。グループ会社全体で一括して手続きを行うことはできませんので注意してください。

経営上のポイント 企画業務型裁量労働制のみなし効力発生には、①労使委員会での5分の4以上の多数による7事項の決議②規則様式第13号の2による労基署への届出③就業規則の定め④対象業務への従事の全要件が必要です。届出を失念すると就業規則・労使合意があっても効力は発生しません(平成12年基発1号)。事業場ごとの手続きが必要で、指針(基発180号)に反した決議も効力が生じません。弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。就業規則・裁量労働制の導入・整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 労使委員会の決議をした後、届出を忘れていた場合はどうなりますか。

A. 届出がなければ企画業務型裁量労働制の効力は発生しておらず、その間の労働時間管理は通常の規制に従う必要があります。気づいた時点で速やかに届出を行い、届出前の期間について労働時間の実態を確認することが必要です。未払残業代が発生している可能性もあるため、弁護士に相談することをお勧めします。

Q2. 決議の内容を変更した場合は改めて届出が必要ですか。

A. はい、決議の内容を変更した場合は改めて決議を行い、変更後の決議を労基署に届け出る必要があります。変更届の手続きを怠ると、変更後の内容が法的効力を持たない状態になる可能性があります。

Q3. 反対票があった場合(5分の4以上の多数が得られなかった場合)はどうなりますか。

A. 反対委員が存在して5分の4以上の多数が得られなかった場合、その決議は法的効力を持たず、企画業務型裁量労働制を適法に導入することができません。再度の協議を経て要件を満たす決議を行う必要があります。

Q4. 届出書類の作成について注意すべき点はありますか。

A. 届出は「規則様式第13号の2」による必要があり、決議の内容を正確に記載しなければなりません。記載内容が指針の「具体的に明らかにする事項」(基発180号)を満たしているかどうかの確認が重要です。弁護士・社会保険労務士等の協力を得て作成することをお勧めします。

最終更新日:2026年3月1日

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