労働問題687 企画業務型裁量労働制の対象業務の要件と決議上の注意点【会社側弁護士が解説】
この記事の要点
- 対象業務は4つの要件をすべて満たす必要があり、一部でも欠けると裁量労働制の効果が生じない
- 「企画部・調査課」という部署名称だけでは対象業務と認められない(個々の業務内容で判断)
- 業務の性質上客観的に裁量の必要性が認められることが要件であり、使用者の主観的判断では足りない
- 制度適用後も目的・目標・期限等の基本的指示は行うことができる
企画業務型裁量労働制の対象業務の要件と決議上の注意点【会社側弁護士が解説】
1対象業務の4つの要件
企画業務型裁量労働制の対象業務となるためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。一部でも欠ける場合、その業務に従事する労働者について企画業務型裁量労働制の法的効果は生じません。
① 事業の運営に関する事項についての業務であること
② 企画・立案・調査・分析の業務であること
③ 業務の性質上、その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること
④ 業務の遂行手段および時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
これらの全部または一部に該当しない業務を対象業務として労使委員会で決議しても、裁量労働制のみなし効果は発生しないため注意が必要です。
2要件①:事業の運営に関する事項についての業務
「事業の運営に関する事項」とは、対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼす事項または当該事業場に係る事業の運営に影響を及ぼす独自の事業計画・営業計画をいいます。
事業場における事業の実施に関する事項が直ちにこれに該当するわけではありません。例えば、現場の日常的な業務遂行に関する事項は「事業の運営に関する事項」には該当しないとされています。
3要件②:企画・立案・調査・分析の業務
「企画・立案・調査・分析の業務」とは、「企画」「立案」「調査」「分析」という相互に関連し合う作業を組み合わせて行うことを内容とする業務をいいます。ここでいう「業務」とは、部署が所掌する業務ではなく、個々の労働者が使用者に遂行を命じられた業務をいいます。
注意点:「企画部」「調査課」など、企画・調査に対応する語句をその名称に含む部署で行われる業務のすべてが直ちに対象業務に該当するわけではありません。個々の業務内容を丁寧に確認することが重要です。
実務上、部署名称や職位名称だけで判断するケースが見受けられますが、これは誤りです。個々の業務内容が4要件を満たすかを個別に検討する必要があります。
4要件③:遂行方法を大幅に裁量に委ねる必要がある業務
「業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある」業務であることが求められます。
ここでいう「必要性」は、使用者が主観的に必要と判断しているだけでは足りず、業務の性質に照らして客観的にその必要性が存するものでなければなりません。
したがって、使用者側の一方的な判断で裁量労働制を導入しても、後に業務の内容が問われた際に要件を満たしていないと判断されるリスクがあります。
5要件④:遂行手段・時間配分について具体的指示をしない業務
「当該業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」とは、「企画」「立案」「調査」「分析」という相互に関連し合う作業をいつ・どのように行うか等についての広範な裁量が労働者に認められている業務をいいます。
以下のような業務はこの要件に該当しないとされています。
- 日常的に使用者の具体的な指示のもとに行われる業務
- あらかじめ使用者が示す業務の遂行方法等についての詳細な手順に即して遂行することを指示されている業務
6使用者が行える指示の範囲
企画業務型裁量労働制が適用されている場合であっても、業務の遂行手段および時間配分の決定等以外については、使用者は労働者に対し必要な指示をすることについて制限を受けません。
具体的には、以下のような指示は行うことができます。
- 業務の開始時における目的・目標・期限等の基本的事項の指示
- 業務の中途における経過報告の受領と基本的事項についての変更指示
7指針における注意事項
「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」では、次のように定められています。
「企画業務型裁量労働制の実施に当たっては、これらの指示が的確になされることが重要である。このため、使用者は、業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合には、労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われることがあることに留意するとともに、労働者の上司に対し、これらの基本的事項を適正に設定し、指示を的確に行うよう必要な管理者教育を行うことが適当であることに留意することが必要である。」
業務量が過大だったり期限設定が不適切な場合は、実態として裁量が失われ、制度の適正な運用とみなされなくなるリスクがあります。管理者教育も含めた体制整備が求められます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。第一東京弁護士会所属。労働問題(使用者側)を中心に、企業法務全般を取り扱う。日本全国の会社経営者・人事担当者からのご相談に対応しております。
企画業務型裁量労働制の対象業務の認定は、実務上非常に難しい判断を要します。会社側弁護士として、導入前の適法性チェックから労使委員会の運営支援まで、トータルでサポートいたします。日本全国各地の会社経営者の皆様からのご相談をお待ちしております。
8よくある質問
最終更新日:2026年5月28日