労働問題335 仕事の合間に食事したり喫煙したりおしゃべりしたり居眠りしたりしている時間を労働時間から差し引いてもらうことはできないでしょうか。

この記事の要点

仕事の合間に食事・喫煙・おしゃべり・居眠りをしていた場合でも、まとまった時間、仕事から離脱したような場合でない限り、所定の休憩時間を超えて労働時間から差し引くことはできないのが通常

「合間の数分の息抜き」を細かく差し引くことは実務上困難です

「まとまった時間、仕事から離脱したような場合」であれば差し引くことができる場合がある——ただし立証の困難さもある

ある程度の長さ・連続性のある休憩・離席であれば問題となり得ます

居眠り等が目に余る場合は、その都度、上司が注意指導して仕事をさせることが本筋——上司が注意指導を怠っていたのでは、無駄な残業はなくならない

「居眠りしているから残業代を差し引く」という対応ではなく、居眠りそのものをさせないことが正しい対応です

残業代の差し引きよりも、上司が日々の勤務態度を適切に管理・指導することが、無駄な残業を減らすための本質的な対策

333番・334番と合わせて、残業時間管理の実践的な対応が整います

01仕事の合間の食事・喫煙・おしゃべり・居眠りは原則として差し引けない

 社員が仕事の合間に食事をしたり、喫煙したり、おしゃべりをしたり、居眠りをしたり、仕事とは関係のない本を読んだりしていることがあります。これらの時間を労働時間から差し引いて残業代の計算をしたいと考える使用者も多いと思います。

 しかし、これらの行為が仕事の合間に行われた場合であっても、まとまった時間、仕事から離脱したような場合でない限り、所定の休憩時間を超えて労働時間から差し引いてもらえないのが通常です。つまり、「仕事の合間の数分の息抜き」のような細かい時間を積み上げて労働時間から差し引くことは、実務上困難です。

状況 労働時間からの差し引き
仕事の合間の数分の喫煙・おしゃべり・居眠り等(まとまった時間ではない) 通常は差し引けない
まとまった時間、仕事から完全に離脱した場合 差し引ける場合がある(立証が必要)

02「まとまった時間、仕事から離脱したような場合」は差し引ける場合がある

 「まとまった時間、仕事から離脱したような場合」(例えば、業務時間中に1時間以上休憩している場合等)であれば、労働時間から差し引くことが認められる可能性があります。ただし、以下の点に注意が必要です。

差し引きを主張する際の注意点
・「まとまった時間、仕事から離脱していた」という事実は、使用者側が立証する必要がある(334番で解説したとおり、事業場にいる時間は原則として労働時間と推認されるため)
・「合間に少し休んでいた」という程度では差し引きの根拠にはなりにくい
・労基法34条は1日6時間超の労働の場合は少なくとも45分、8時間超の場合は少なくとも1時間の休憩を与えることを義務づけているため、所定の休憩時間内の休憩は当然労働時間に含まれない
・所定の休憩時間を超えた「まとまった休憩」を立証できれば、その分を差し引くことが認められる可能性がある

03居眠り等には上司が注意指導することが本筋

 居眠り等が目に余る場合は、その都度、上司が注意指導して仕事をさせることが本筋です。「居眠りした時間を残業代から差し引く」という事後的な対応ではなく、居眠りそのものを即座に注意指導して仕事をさせることが正しい対応です。

 そもそも勤務時間中の居眠り・おしゃべり・仕事と関係のない行為は、就業規則上の勤務態度の問題として注意指導・懲戒処分の対象となり得ます。「残業代から差し引けるか」という観点ではなく、「勤務態度として問題のある行為を止めさせる」という観点で対応することが重要です。

04上司の注意指導を怠ると無駄な残業はなくならない

 上司が部下の注意指導を怠っていたのでは、無駄な残業はなくなりません。333番で解説したとおり、残業時間の管理は上司の責任であり、日々の業務管理の中で以下のことを実践することが求められます。

上司(管理職)に求められる日々の管理

・勤務時間中の居眠り・おしゃべり等に気づいたら、その都度注意指導する(放置は「黙認」となりうる)
・注意指導しても改善しない場合は、口頭注意の記録を残し、就業規則に基づく段階的な指導・懲戒処分を検討する
・業務効率の悪い社員には業務の優先順位・進め方を具体的に指示し、所定労働時間内に終わる業務量に調整する
・「残業=仕事熱心」という誤った評価を払拭し、所定労働時間内に業務を完了できることを評価する職場文化を作る

05まとめ

 仕事の合間に食事・喫煙・おしゃべり・居眠りをしていた場合でも、まとまった時間、仕事から離脱したような場合でない限り、所定の休憩時間を超えて労働時間から差し引いてもらえないのが通常です。居眠り等が目に余る場合は、その都度、上司が注意指導して仕事をさせることが本筋であり、上司が注意指導を怠っていたのでは無駄な残業はなくなりません。残業時間の管理・抑制は日々の上司による適切な業務指示・注意指導の積み重ねにより実現されるものです(333番・334番も合わせてご参照ください)。具体的な対応については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業時間の管理・残業代トラブルの予防・問題社員対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 仕事の合間に居眠りしている社員の時間を残業代から差し引けますか。

A. まとまった時間、仕事から離脱したような場合でない限り、所定の休憩時間を超えて労働時間から差し引くことはできないのが通常です。「仕事の合間の居眠り」程度では差し引きの根拠にはなりにくいです。対応の本筋は「残業代から差し引く」ことではなく、「上司がその都度注意指導して仕事をさせる」ことです。

Q2. 「まとまった時間、仕事から離脱した場合」とはどれくらいの時間を指しますか。

A. 具体的な時間の基準は法律上明示されていませんが、単に「仕事の合間に数分休んだ」という程度では不十分であり、明確に業務を中断して一定時間以上仕事から離脱した場合(例えば、所定の休憩時間以外に30分以上食事や休憩をしていた場合等)が典型的に想定されます。ただし、この主張を行う場合は使用者側が立証する必要があります。

Q3. 勤務時間中に居眠りしている社員を懲戒処分することはできますか。

A. 就業規則に「職務専念義務」「勤務態度に関する服務規律」の規定があれば、勤務時間中の居眠りを理由とした懲戒処分が可能です。ただし、いきなり重い懲戒処分を行うのではなく、まず口頭での注意指導→書面による警告→軽い懲戒処分(けん責・減給等)という段階的な対応が必要です。具体的な対応については使用者側弁護士への相談をお勧めします。

Q4. 上司が居眠り等を黙認していた場合、後で残業代を差し引くことはできますか。

A. 困難です。上司が居眠り等を黙認していた場合、使用者として当該時間の業務の中断を認識・容認していたことになりかねません。後から「実は居眠りしていたから差し引く」という主張は、黙認していたという事実と矛盾するため認められにくいです。日頃から上司が注意指導を行い、問題のある勤務態度を記録しておくことが重要です。

最終更新日:2026年5月10日



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