労働問題336 本人の能力が低いことや所定労働時間内に真面目に仕事をしていなかったことが残業の原因の場合でも、残業代(割増賃金)を支払わなければなりませんか。
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本人の能力が低いことや所定労働時間内に真面目に仕事していなかったことが残業の原因であっても、現実に残業している場合は残業代(割増賃金)の支払義務が生じる 「自業自得だから払わなくてよい」という考えは法律上認められません |
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能力が低いことや勤務態度の問題は、注意・指導・教育して改善させるとともに、人事考課において考慮すべき問題 「残業代を払わないことによる制裁」ではなく、指導・評価という適切な対応チャンネルが法律上設けられています |
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残業代の支払を免れるためには、「残業そのものを発生させない」対応が必要——333番〜338番で解説する残業時間管理の実践が重要 「残業は発生しているが支払わない」という選択肢は法律上ありません |
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「能力の低い社員に残業代を払いたくない」という場合は、能力・業績に応じた賃金設計(基本給や賞与への反映)によって対応することが適切 賃金制度の設計(332番・329番参照)と人事評価制度の整備が実務的な解決策です |
目次
01残業代支払義務は残業の「原因」によらない——現実に残業していれば支払義務が生じる
「本人の能力が低くて残業が長くなっている」「所定労働時間内に真面目に仕事をしていなかったから残業が発生している」という場合に、「自業自得だから残業代を支払わなくてよい」と考える使用者の方もいらっしゃいます。
しかし、本人の能力が低いことや所定労働時間内に真面目に仕事をしていなかったことが残業の原因の場合であっても、現実に残業している場合は、残業時間として残業代(割増賃金)の支払義務が生じます。労基法37条が定める割増賃金の支払義務は、残業の原因が何であれ、現実に時間外・休日・深夜に労働しているという事実に基づいて発生するものだからです。
「残業の原因」は残業代支払義務の免除理由にはならない
残業代(割増賃金)は、使用者が時間外・休日・深夜に労働者を労働させた場合に支払義務が生じます(労基法37条)。この支払義務は残業の原因や理由とは無関係であり、「能力が低いせいで残業になった」「さぼっていたせいで残業になった」という事情は、残業代支払義務の免除理由にはなりません。
02能力不足・勤務態度の問題に対する適切な対応チャンネル
本人の能力が低いことや、所定労働時間内に真面目に仕事をしていなかったことは、残業代の問題とは別に、以下の適切な対応チャンネルで対処するべき問題です。
これらの問題に対する対応は、「残業代を支払わない」という形ではなく、「指導・教育・懲戒・人事評価」という正当な制度を通じて行うことが、法律上求められている対応です。
03「残業代を払いたくない」ならば残業を発生させない対応が必要
能力の低い社員や勤務態度の悪い社員について「残業代を払いたくない」のであれば、残業代支払義務の免除を求めるのではなく、そもそも残業を発生させない対応が必要です。
・終業時刻になったら、能力の低い社員・勤務態度の悪い社員に対して明確に帰宅を指示する(333番参照)
・口頭指示に従わない場合は物理的に職場から退出させる(334番参照)
・勤務態度の問題(居眠り・おしゃべり等)はその都度注意指導し、仕事をさせる(335番参照)
・残業の事前許可制を採用し、能力の低い社員・勤務態度の悪い社員の残業を事前に許可しない(338番参照)
・以上の対応を適切に行い、不必要な残業を実質的に防ぐことが重要
04能力・業績に応じた賃金設計での対応
「能力の低い社員や勤務態度の悪い社員に高い賃金(残業代を含む)を払いたくない」という使用者の気持ちは理解できます。しかし、これは「残業代を支払わない」という形ではなく、能力・業績に応じた賃金制度の設計という形で対応することが適切です。
具体的には、賞与(ボーナス)の比率を高め(332番参照)、能力・業績評価に応じて賞与額に大きな差をつけることで、能力の低い社員・勤務態度の悪い社員の年収を適正水準に抑えることができます。また、人事考課において低い評価をつけることで、昇給・昇格への反映を通じて長期的な賃金水準の調整も可能です。
05まとめ
本人の能力が低いことや所定労働時間内に真面目に仕事をしていなかったことが残業の原因であっても、現実に残業している場合は残業代(割増賃金)の支払義務が生じます。これらの問題は、残業代不払いという形ではなく、注意・指導・教育による改善と人事考課での考慮という適切な対応チャンネルで対処すべきです。残業代の支払を免れるためには、そもそも残業を発生させないための残業時間管理(333番〜338番参照)を徹底することが必要です。具体的な対応については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業時間の管理・残業代トラブルの予防・賃金制度の設計でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。
Q&Aよくある質問
Q1. 能力が低いことや真面目に仕事していなかったことが原因の残業でも残業代を支払う必要がありますか。
A. 支払う必要があります。残業代(割増賃金)の支払義務は現実に時間外・休日・深夜に労働しているという事実に基づいて発生するものであり、残業の原因が何であれ、現実に残業している場合は支払義務が生じます。能力不足や勤務態度の問題は、残業代不払いではなく注意指導・人事考課という形で対処すべきです。
Q2. 能力が低い社員が残業している場合の適切な対処方法は何ですか。
A. 注意・指導・教育して業務遂行能力の改善を図るとともに、人事考課で能力・業績を適切に評価することが基本的な対応です。「残業代を払いたくない」のであれば、そもそも終業時刻に帰宅させるよう明確に業務指示を出す(333番)・口頭注意に従わない場合は物理的に退出させる(334番)・残業の事前許可制を採用して事前許可のない残業を許さない運用を徹底する(338番)等の対応が必要です。
Q3. 勤務態度が悪くて残業代が多い社員への報酬はどのようにすればよいですか。
A. 残業代は現実に発生した時間外労働に対して支払う義務があるため直接減らすことはできませんが、賞与の比率を高め(332番参照)、能力・業績評価に応じて賞与額に大きな差をつけることで、年収水準を能力・業績に応じた適正水準に調整することができます。人事考課において低い評価をつけることで昇給・昇格への反映も可能です。
Q4. 能力が低いことを理由に残業代を減額する合意を社員から取ることはできますか。
A. できません。労基法13条(強行的効力)および労基法37条(割増賃金の支払義務)により、残業代を支払わない旨の合意は、合意の内容にかかわらず、管理監督者の実態がなければ無効となります(326番参照)。「能力が低いから残業代は半額でよい」という合意も同様に無効となります。
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最終更新日:2026年5月10日