労働問題331 未払残業代(割増賃金)請求対策としては、どのようなものが考えられますか。
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未払残業代(割増賃金)額は「残業代単価×残業時間-支払済み残業代」という計算式で求められる この計算式の各要素に対応する3方向の対策が考えられます |
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対策①——基礎賃金を抑制することで残業代(割増賃金)の「単価」を引き下げる。基礎賃金の抑制の仕方には注意点がある(332番で詳解) 単に基礎賃金を下げるだけでは人材確保に支障が出るため、能力・貢献度に応じた賃金設計が必要です |
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対策②——残業時間を抑制することで残業代の「量」を減らす。残業の事前許可制や業務の効率化等が有効 残業時間の削減は社員の健康管理・ワークライフバランスの観点からも重要です |
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対策③——残業代(割増賃金)を適正に計算・支払い「支払済み」にすることで未払残業代をゼロにする。定額残業代制度の活用も有効 「支払済み」にすることが最も確実な未払残業代ゼロの実現方法です |
目次
01未払残業代の計算式と3方向の対策の全体像
未払残業代(割増賃金)額は、以下の計算式で求められます。
未払残業代額 = 残業代単価 × 残業時間 - 支払済み残業代
この計算式を見ると、未払残業代を減らすためには、①残業代単価を引き下げる、②残業時間を減らす、③支払済み残業代を増やす(=支払済みにする)——の3方向からのアプローチがあることが分かります。
02対策①——基礎賃金を抑制して残業代単価を引き下げる
残業代(割増賃金)の単価は、基礎賃金(割増賃金の計算の基礎となる賃金)をもとに計算されます。基礎賃金を抑制することで残業代の単価を引き下げ、未払残業代のリスを減らすことができます。
ただし、332番で詳しく解説するとおり、単に基礎賃金を低く設定するだけでは、能力や貢献度に見合った賃金が支給できず、優秀な人材が確保できなくなるという問題があります。そのため、基礎賃金を抑制しつつ、能力や貢献度に応じた賃金(賞与・除外賃金・定額残業代等)を適切に設計することが必要です(332番参照)。
03対策②——残業時間を抑制する
残業時間を減らすことで、発生する残業代の総量を減らすことができます。残業時間の抑制は未払残業代の削減にとどまらず、社員の健康管理・過重労働防止・ワークライフバランスの実現という観点からも重要です。
残業時間を抑制するための具体的な手法
・残業の事前許可制の採用:事前に上司の許可を得た残業のみを有効な残業として扱い、無断残業(未届残業)は原則として業務命令を出していない残業として扱う(ただし、適法な運用には注意が必要——関連FAQ記事参照)
・業務の効率化:IT ツール・AI の活用、不要な会議・書類作成の削減等による業務効率の向上
・適正な人員配置:業務量と人員のバランスを見直し、特定の社員への業務集中を解消する
・管理職による残業管理:部下の残業状況を把握し、不必要な残業を防ぐための管理体制の整備
04対策③——残業代(割増賃金)を支払済みにしておく
330番で解説したとおり、発生した残業代は「支払済み」にしなければリスはなくなりません。発生した残業代を適正に計算・支払い「支払済み」にすることが、未払残業代をゼロにする最も確実な方法です。
毎月の実際の残業時間を正確に把握し、適正な計算方法(割増率:時間外25%以上・法定休日35%以上・深夜25%以上)で残業代を計算して支払うことが基本です。定額残業代制度(固定残業代制度)を適法な形で採用することも、一定時間分の残業代をあらかじめ「支払済み」にする有効な手法の一つです。
053つの対策の組み合わせ方
①②③の3方向の対策は、それぞれ単独で行うよりも組み合わせて実施することが効果的です。例えば、①基礎賃金の抑制(賞与の比率向上・除外賃金の活用・定額残業代制度の採用)と③残業代の適正支払を組み合わせると、残業代の単価を適正水準に維持しながら発生した残業代を確実に「支払済み」にする制度を構築できます。
また②残業時間の抑制と組み合わせることで、残業代の総額を抑えながら適正に支払うという制度設計が可能です。3方向のバランスをどのように取るかは、各社の業種・業態・人員構成等によって異なりますので、使用者側弁護士・会社側弁護士のサポートを受けながら検討することをお勧めします。
06まとめ
未払残業代(割増賃金)額は「残業代単価×残業時間-支払済み残業代」という計算式で求められます。未払残業代の請求対策としては、①基礎賃金を抑制して残業代(割増賃金)単価を引き下げる(332番で詳解)、②残業時間を抑制する(事前許可制・業務効率化等)、③残業代(割増賃金)を適正に計算・支払い「支払済み」にしておく——の3方向からのアプローチが考えられます。いずれも法律の枠内での適法な取り組みであり、組み合わせることで効果的な残業代トラブルの予防が可能です。具体的な制度設計については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代トラブルの予防・賃金制度の整備・就業規則の見直しでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。
Q&Aよくある質問
Q1. 未払残業代請求対策として考えられる3つの方向を教えてください。
A. ①基礎賃金を抑制して残業代(割増賃金)単価を引き下げる、②残業時間を抑制する、③残業代(割増賃金)を適正に計算・支払い「支払済み」にしておく——の3方向です。これらは「未払残業代額=残業代単価×残業時間-支払済み残業代」という計算式の各要素に対応しています。
Q2. 残業の事前許可制を採用すれば残業代を支払わなくてよいですか。
A. 事前許可を得ずに行った残業であっても、使用者がその残業を認識・黙認していた場合や、業務量・職場の実態から残業が必要であることが明らかだった場合は、残業代の支払義務が生じることがあります。残業の事前許可制は残業代対策として有効な面がありますが、適法な運用には細心の注意が必要であり、使用者側弁護士への相談をお勧めします。
Q3. 定額残業代制度(固定残業代制度)とはどのような制度ですか。
A. 一定時間分の時間外労働に対する割増賃金をあらかじめ毎月の賃金に含めて支払う制度です。対策①(基礎賃金を除く形で組み込むことで単価抑制の効果)と対策③(一定時間分を支払済みにする)の両方の機能を持ちます。ただし、適法な定額残業代制度として認められるためには様々な要件があります。
Q4. 3つの対策の中でどれが最も重要ですか。
A. 最も確実なのは③「残業代を支払済みにする」です。330番で解説したとおり、発生した残業代は「支払済み」にしなければリスはなくなりません。①②は発生する残業代の量・単価を減らすものであり重要ですが、それでも発生した残業代は③として適正に支払うことが不可欠です。3方向を組み合わせて取り組むことが最も効果的です。
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最終更新日:2026年5月10日