労働問題282 第一審判決で残業代と付加金の支払を命じられた場合、付加金の支払を免れる方法はありますか
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裁判所は、未払残業代(割増賃金)がなければ付加金の支払を命じることができない——第一審判決後も同じ 付加金は「未払残業代の存在」を前提とする制度であることは、第一審判決後の段階でも変わりません |
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第一審判決に対して控訴し、未払残業代の全額を弁済した上で控訴審において弁済の事実を主張立証すれば付加金の支払を免れることができる この場合、未払残業代の請求も付加金の請求も棄却されます |
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弁済は「全額」が必要——一部のみでは付加金の免除には不十分 未払残業代の「全額」を弁済した場合に、未払残業代も付加金も存在しない状態となります |
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控訴と弁済のどちらを先に行うかの検討、弁済金額・方法・源泉徴収については使用者側弁護士に相談が必須 手続きの誤りは取り返しのつかないリスクにつながります |
目次
01第一審判決後も「未払残業代の存在」が付加金の前提
278番・281番で解説したとおり、裁判所は未払残業代(割増賃金)がなければ付加金の支払を命じることができません。この原則は、第一審判決が下された後の段階でも変わりません。
第一審判決で残業代と付加金の支払を命じられた場合、会社経営者としてはその判決に従い全額を支払うか、控訴して控訴審で争うかを選択することになります。後者の場合、控訴審の段階で未払残業代の全額を弁済することで付加金の支払を免れる可能性があります。
02控訴+未払残業代の全額弁済で付加金を免れる方法
第一審判決に対して控訴し、未払残業代(割増賃金)の全額について弁済した上で控訴審において未払残業代(割増賃金)弁済の事実を主張立証すれば、未払残業代(割増賃金)の請求も付加金の請求も棄却されますので、付加金の支払を免れることができます。
①第一審判決(残業代+付加金の支払命令)に対して控訴する
②控訴審の係属中に、第一審判決で命じられた未払残業代(割増賃金)の全額を弁済する
③控訴審において、未払残業代を弁済した事実を主張立証する
④控訴審の裁判所は「未払残業代の存在」という前提を欠くものとして、未払残業代の請求と付加金の請求をいずれも棄却する
→ 結果として、付加金の支払を免れることができる
ただし、この方法は「未払残業代の全額」を弁済することが前提です。一部のみを弁済した場合は、残存する未払残業代に対する付加金の請求が残る可能性があります。
03281番との違い——訴訟中の弁済との比較
281番では、訴訟の係属中(口頭弁論終結前)に未払残業代相当額を任意弁済することで付加金の支払命令を回避できることを解説しました。282番で解説する方法は、第一審判決が下された後という点が異なります。
04実務上の注意点
控訴期間の厳守
第一審判決に対する控訴は、判決書の送達を受けた日から2週間以内に行わなければなりません(民事訴訟法285条)。この期間を徒過すると第一審判決が確定してしまい、控訴審での争いができなくなります。第一審判決を受けたら速やかに控訴の要否を検討し、必要であれば期間内に控訴状を提出することが必要です。
弁済金額の確認と源泉徴収
弁済すべき「未払残業代の全額」は、第一審判決で命じられた未払残業代の金額を基本として検討します。ただし、残業代(割増賃金)は給与所得として所得税の課税対象となりますので、源泉徴収した上で弁済する必要があります(281番参照)。弁済金額・源泉徴収の方法については、使用者側弁護士・会社側弁護士および税理士に相談の上、慎重に確認することが重要です。
強制執行への対処
第一審判決が下された場合、原告側が仮執行(判決確定前の強制執行)を申し立てる可能性があります。仮執行を回避するためには、控訴と同時に強制執行停止の申立てを行うことも検討が必要です。この点も速やかに使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
05まとめ
第一審判決で残業代と付加金の支払を命じられた場合でも、付加金の支払を免れる方法があります。第一審判決に対して控訴し、未払残業代(割増賃金)の全額について弁済した上で控訴審において弁済の事実を主張立証すれば、未払残業代の請求も付加金の請求も棄却され、付加金の支払を免れることができます。
控訴期間(判決書送達から2週間)の厳守、弁済金額の確認、源泉徴収の処理、強制執行への対処など、実務上の注意点が多いため、第一審判決を受けた段階で速やかに使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することが不可欠です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代請求訴訟・控訴対応・付加金リスクの軽減でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 第一審で残業代と付加金の支払を命じられた場合、どうすれば付加金を免れることができますか。
A. 第一審判決に対して控訴し、控訴審係属中に未払残業代(割増賃金)の全額を弁済した上で、控訴審において弁済の事実を主張立証することで、未払残業代の請求も付加金の請求も棄却されます。付加金は「未払残業代の存在」を前提とする制度であるため、未払残業代が存在しない状態となれば付加金の支払命令もできなくなります。
Q2. 控訴した上で残業代を弁済すれば、必ず付加金は免れますか。
A. 未払残業代の「全額」を弁済して控訴審で弁済の事実を適切に主張立証した場合、未払残業代が存在しない状態となるため、付加金の支払命令もできなくなります。ただし、弁済金額の認定・源泉徴収の適切な処理・弁済の事実の立証方法など、実務上の注意点がありますので、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することが重要です。
Q3. 第一審判決後に残業代を弁済する際に注意すべき点はありますか。
A. 主な注意点として、①控訴期間(判決書送達から2週間以内)の厳守、②弁済すべき「全額」の確認(第一審判決で命じられた金額を基準)、③源泉徴収の適切な処理(残業代は給与所得として課税対象)、④強制執行(仮執行)への対処——の4点が特に重要です。これらについては速やかに使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
Q4. 控訴せずに残業代だけを支払えば、付加金の支払も免れますか。
A. 第一審判決が確定(控訴期間の徒過または控訴棄却)した後は、付加金の支払命令も確定します。第一審判決を受けた後に控訴せず残業代だけを支払っても、確定した付加金の支払義務は消えません。付加金の支払を免れるためには、控訴期間内に控訴した上で、控訴審の係属中に全額弁済・弁済の事実の主張立証という手順が必要です。
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最終更新日:2026年5月10日