労働問題279 残業代(割増賃金)請求訴訟において、支払が命じられる可能性がある付加金の額を教えて下さい。
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残業代請求訴訟では付加金の請求もなされるのが通常——未払残業代300万円なら最大300万円の付加金(合計600万円)が命じられる可能性がある 付加金は278番で解説した制度であり、未払残業代と同額が命じられることが多い傾向にあります |
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付加金の額は裁判所の裁量による——同額・50%・80%と様々であり、全く命じられない場合もある 裁量による減額・免除の可能性があるため、会社側は積極的に主張立証することが重要です |
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東京地裁平成23年9月9日判決(当事務所使用者側代理人)は、裁判所が裁量により付加金を命じないまたは減額できると明示 「諸般の事情を考慮し、付加金を命ずることが不相当であると判断した場合にはこれを命じないことができ、また、裁量により減額することができる」と判示しています |
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会社側は付加金の支払が相当でない事情を積極的に主張立証すべき——主張しなければ同額が命じられるリスクがある 民事訴訟では弁論主義が適用されるため、有利な事情は会社側が積極的に主張する必要があります |
目次
01付加金の額——未払残業代と同額が原則
残業代(割増賃金)請求訴訟では、付加金の請求もなされるのが通常です。例えば、未払の残業代(割増賃金)の額が300万円の場合、さらに最大300万円の付加金の支払(合計600万円の支払)が判決で命じられる可能性があります。
278番で解説したとおり、付加金は労基法114条に基づく制度であり、裁判所は未払金と「同一額」の付加金の支払を命じることができます。使用者が残業代(割増賃金)の支払を怠っている場合、残業代(割増賃金)と同額の付加金の支払が命じられることが多くなっています。
残業代請求訴訟の支払総額イメージ
未払残業代(元本):300万円
遅延損害金(277番・276番参照):在職中分の年5〜6%・退職後分の年14.6%(期間による)
付加金(上記と同額が命じられた場合):300万円
支払総額(付加金同額の場合):元本300万円+付加金300万円+遅延損害金=600万円超
付加金が同額命じられると、元本・遅延損害金・付加金を合わせた支払総額は大きく膨らみます。
02付加金の額は裁判所の裁量による——様々なケース
付加金の支払を命じるかどうかは裁判所の裁量に委ねられており、全く付加金の支払が命じられないこともありますし、未払残業代(割増賃金)の50%とか80%といった金額の付加金の支払が命じられることもあります。
同額の付加金が命じられることが多い傾向にありますが、会社側が付加金を命じるのが相当でない事情を積極的に主張立証することで、付加金が減額または免除される可能性があります。
03東京地裁平成23年9月9日判決——当事務所が使用者側代理人を務めた事案
当事務所が使用者側代理人を務めた事件の東京地裁平成23年9月9日判決でも、付加金の裁量性について以下のように明示されています。
付加金の裁量性(東京地裁平成23年9月9日判決)
同判決は、「原告は、・・・本件割増賃金について労基法114条本文に基づき付加金の請求をしているところ、同条は『裁判所は・・・付加金の支払を命ずることができる。』と規定しているにとどまるのであるから、裁判所は、諸般の事情を考慮し、付加金を命ずることが不相当であると判断した場合にはこれを命じないことができ、また、これを命ずる場合であっても裁量により減額することができるものと解するのが相当である。」と判示しています。
この判決は、付加金の命令・不命令・減額のいずれも裁判所の裁量に委ねられていることを明示しており、会社側としては「付加金を命じるのが不相当な事情」を適切に主張立証することの重要性を示しています。
04会社経営者側の対応——付加金を減額・免除するための主張立証
会社経営者側としては、付加金の支払を命じるのが相当でない事情があるのであれば、その事情を主張立証しておくべきです。
民事訴訟では弁論主義が適用されるため、有利な事情は会社側が積極的に主張しなければなりません。付加金を減額・免除する方向に働く事情があっても、会社側が主張しなければ裁判所はその事情を考慮してくれません。
①未払いが故意によるものではなく、法令の解釈上の誤解等によるものであった
②訴訟提起前または口頭弁論終結前に未払い分の一部または全部を支払った
③残業代の存否・金額について合理的な理由に基づき争っていた(276番参照)
④会社の経営状況が厳しく、全額の支払が会社経営に深刻な影響を与える
⑤その他、付加金の支払を命じることが諸般の事情に照らして不相当といえる事情
これらの事情を法的に整理して主張するためには、使用者側弁護士・会社側弁護士に依頼することが重要です。
05まとめ
残業代(割増賃金)請求訴訟では付加金の請求もなされるのが通常であり、未払残業代と同額の付加金が命じられると支払総額が最大2倍になります。付加金の額は裁判所の裁量によるものであり、同額・50%・80%・ゼロと様々であり、当事務所が使用者側代理人を務めた東京地裁平成23年9月9日判決でも、「諸般の事情を考慮し、付加金を命ずることが不相当であると判断した場合にはこれを命じないことができ、また、これを命ずる場合であっても裁量により減額することができる」と判示されています。
会社経営者側としては、付加金の支払を命じるのが相当でない事情があれば積極的に主張立証することが重要です。残業代請求訴訟における付加金の減額・免除の主張については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代請求・付加金リスクへの対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 付加金はどのくらいの額になりますか。
A. 最大で未払残業代と同額(例:未払残業代300万円なら付加金も最大300万円)です。使用者が残業代の支払を怠っている場合、同額の付加金が命じられることが多い傾向にありますが、50%・80%に減額されることも、全く命じられないこともあります。
Q2. 付加金を全額命じられないことはありますか。
A. あります。付加金の支払命令は裁判所の裁量によるものであり、付加金を命じないことも、減額することもできます(東京地裁平成23年9月9日判決)。会社側が付加金の支払を命じることが不相当な事情を主張立証した場合、付加金が免除または減額される可能性があります。
Q3. 付加金を減額させるために何を主張すべきですか。
A. 「付加金を命じることが不相当な事情」を積極的に主張立証することが重要です。未払いが法令解釈の誤解によるものであった、訴訟前に一部支払いを行った、残業代の存否について合理的な理由に基づき争っていた、などの事情が考慮されます。具体的な主張内容については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
Q4. 付加金と遅延損害金は同時に請求されますか。
A. はい。残業代請求訴訟では、元本(未払残業代)・遅延損害金(276番・277番参照)・付加金の三つが同時に請求されるのが通常です。例えば、未払残業代300万円に対して遅延損害金(退職後は年14.6%)が加算され、さらに付加金最大300万円が命じられると、支払総額は600万円を大きく超える可能性があります。
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最終更新日:2026年5月10日