労働問題261 「休憩時間」(労基法34条)中の外出を制限することはできますか。

この記事の要点

休憩時間中の外出を許可制とすることは、事業場内で自由に休憩できる場合には必ずしも違法ではない

昭和23年10月30日基発第1575号による行政解釈の立場です

外出許可制を採用しても、労働者が権利として労働から離れることを保障されていれば「休憩時間」と評価される

外出の許可制と休憩の実質(労働からの解放)は別の問題です

外出許可制を採用すると電話・来客対応が義務付けられがちになり、労働時間と評価されるリスクがある

外出を制限する運用は手待状態を生みやすく、実態が「休憩時間」でなくなる危険があります

外出許可制を採用する場合は、労働からの解放が保障されるよう十分に配慮した労務管理が必要

外出許可制と電話・来客対応義務を同時に課すことは避けるべきです

01休憩時間中の外出制限(許可制)の適法性——行政解釈の立場

 休憩時間中の外出を許可制とすることも、事業場内において自由に休憩し得る場合には必ずしも違法にはなりません(昭和23年10月30日基発第1575号)。

 260番で解説したとおり、労基法34条3項は「使用者は労働者に対して休憩時間を自由に利用させなければならない」と定めています。しかし、この自由利用の原則は絶対的なものではなく、事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り許容されます。外出許可制は、こうした制限の一つとして、一定の条件のもとで認められています。

 ただし、「事業場内において自由に休憩し得る場合には」という条件が付されている点が重要です。外出そのものを全面的に禁止したり、事業場内でも自由に休憩できない状態を作り出したりする場合は、自由利用の原則を侵害することになります。

02外出許可制でも「休憩時間」として評価される条件

 休憩時間中の外出を許可制としたとしても、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間と評価することができるのであれば、労働時間ではなく「休憩時間」(労基法34条)と評価されることになります。

 253番で確認した「休憩時間」の定義——「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」——を満たしているかどうかが、外出許可制の採用にかかわらず、その時間が「休憩時間」か「労働時間」かを分ける基準です。

「休憩時間」として評価されるための条件
外出許可制を採用した場合でも、以下の条件が満たされていれば「休憩時間」として評価されます。
①事業場内で自由に休憩できること(横になる・外食の代わりに持参した食事を食べるなど)
②電話対応・来客対応等の業務義務が課されていないこと
③呼び出しに備えて待機している状態でないこと
④実態として労働から完全に解放されていること

03外出許可制が労働時間と評価されるリスク

 休憩時間中の外出を許可制としている場合、実態として電話や来客の対応が義務付けられがちであり、労働からの解放が保障されていなかったと評価されるリスクがあります。

 「外出するなら許可を求めること」という制度が定着すると、社員は「席を外せない」という心理的拘束を受けやすくなります。その結果として、次のような状況が生じやすくなります。

外出許可制が労働時間評価につながる典型的なパターン

電話・来客対応を「念のため」義務付けているケース
「外出する社員がいない時間帯の電話対応は在席者に頼む」という運用が慣行化すると、在席者は実質的に手待状態となり、労働時間と評価されるリスがあります。

「すぐ戻れるよう」待機を求めているケース
「急な来客や電話に備えて席を大きく離れないように」という暗黙の了解がある場合、実質的に手待時間として労働時間と評価される可能性があります。

許可申請のハードルが高く事実上外出できないケース
形式上は許可制でも、実際には許可が下りにくく外出できない状況であれば、事業場外での休憩が実質的に禁止されていると評価されます。

04実務上の対応——労働からの解放を確保するために

 休憩時間中の外出を許可制とする場合は、労働からの解放が保障されているといえるよう十分に配慮した労務管理を行う必要があります。

番号 実務上の対応策
休憩時間中の電話・来客対応義務を明確に排除する
就業規則や運用上のルールで「休憩時間中は電話・来客対応の義務なし」と明確にし、実態として徹底する
外出許可制の目的・基準を合理的に設定し文書化する
許可制の目的(セキュリティ・安全管理等)と許可基準を明文化し、恣意的な運用を防ぐ
事業場内での休憩場所・設備を整備する
外出しなくても十分に休憩できる環境(休憩室・食事スペース等)を整備し、外出しないことが不利益にならないようにする
「在席」と「休憩中の待機」を明確に区別する
休憩時間中に在席している社員に業務対応を求めることがないよう、当番制や着信転送などで対応を切り分ける

 外出許可制の設計と実態の整備については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。

05まとめ

 休憩時間中の外出を許可制とすることは、事業場内において自由に休憩できる場合には必ずしも違法ではありません(昭和23年10月30日基発第1575号)。外出許可制を採用した場合でも、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間と評価できれば、その時間は「休憩時間」として取り扱われます。

 ただし、外出許可制を採用すると電話や来客の対応が義務付けられがちとなり、労働からの解放が保障されていなかったと評価されるリスがあります。外出許可制を採用する場合は、電話・来客対応義務の排除、許可基準の明文化、休憩環境の整備など、労働からの解放が保障されているといえるよう十分に配慮した労務管理を行うことが重要です。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。休憩時間の運用設計・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 休憩時間中の外出を許可制にすることはできますか。

A. できます。行政解釈(昭和23年10月30日基発第1575号)によれば、事業場内において自由に休憩し得る場合には、外出に所属長の許可を求めることも必ずしも違法にはなりません。ただし、「事業場内で自由に休憩できる」ことが前提条件であり、電話・来客対応義務が課されている場合は休憩時間と評価されないリスがあります。

Q2. 外出許可制を採用した場合、その時間は労働時間になりますか。

A. 許可制を採用しただけで自動的に労働時間になるわけではありません。労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間と評価できれば「休憩時間」として扱われます。しかし、電話・来客対応が義務付けられる状態になった場合は、手待時間として労働時間と評価されるリスがあります。

Q3. 休憩時間中の外出許可制と電話対応義務を同時に課してもよいですか。

A. 同時に課すことは避けるべきです。外出許可制(事業場内滞在)と電話対応義務を組み合わせると、社員は実質的に手待状態に置かれることになり、その時間全体が労働時間として評価されるリスが高まります。電話・来客対応については当番制や着信転送などで休憩時間中の社員に対応が及ばないよう切り分けることが重要です。

Q4. 外出許可制を適法に運用するためのポイントは何ですか。

A. ①休憩時間中の電話・来客対応義務を明確に排除すること、②許可の目的・基準を合理的に設定し文書化すること、③事業場内の休憩環境(休憩室等)を整備すること、④在席中の社員への業務対応依頼を制度的に排除すること——の4点が重要です。設計については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年5月10日


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