労働問題253 労基法に基づく残業代(割増賃金)計算の基礎となる労働時間から除外される「休憩時間」とは、どのような時間のことをいいますか。
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「休憩時間」とは労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいい、単に作業に従事していない時間は含まれない 行政解釈(昭和22年9月13日基発17号)による定義です。作業に従事していなくても手待ち状態であれば休憩時間にはなりません |
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最高裁(大星ビル管理事件・平成14年)も「労働からの解放が保障されていて初めて休憩時間といえる」と判示 仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合は労基法上の労働時間に当たります |
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就労要求があれば直ちに就労できる態勢で待機している「手待時間」は、休憩時間ではなく労働時間 手待時間は労基法上の労働時間として取り扱われるため、残業代計算の基礎に含まれます |
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名目上「休憩時間」とされていても、実態が手待状態であれば残業代の支払い義務が生じる 休憩時間の設定と実態の乖離は残業代請求トラブルの温床となります |
目次
01「休憩時間」の行政解釈による定義
行政解釈では、「休憩時間」(労基法34条)の意義に関し、「休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと」(昭和22年9月13日基発17号)とされています。
この行政解釈によれば、「休憩時間」といえるためには「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」である必要があります。単に実際の作業に従事していないというだけでは足りず、労働から離れることが保障されている状態でなければなりません。
労基法上の「休憩時間」といえるためには、①労働者が権利として、②労働から離れることを、③保障されている——という3つの要素が必要です。形式上「休憩時間」と呼ばれていても、この要件を満たさない時間は休憩時間ではなく、労基法上の労働時間として取り扱われます。
02最高裁判決(大星ビル管理事件)による判断基準
大星ビル管理事件最高裁平成14年2月28日第一小法廷判決は、実作業に従事していない仮眠時間の労働時間性に関し、以下のように判示しています。
「労基法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない仮眠時間(以下「不活動仮眠時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである」
「そして、不活動仮眠時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。」
この判決からすると、最高裁は、当該時間に労働者が労働からの解放が保障されていて初めて「休憩時間」といえ、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、「休憩時間」ではなく労基法上の労働時間であると捉えているものと考えられます。
03「手待時間」は休憩時間ではなく労働時間
現実に作業に従事してはいないが、使用者から就労の要求があれば直ちに就労しうる態勢で待機している時間(手待時間)は、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間とはいえませんので、「休憩時間」(労基法34条)ではなく、労基法上の労働時間と評価されることになります。
手待時間の典型的な例としては、電話対応や来客対応のために席を離れられない状態での「待機時間」、業務の合間に指示を待っている「待機状態」、客の来店を待っている「接客待機時間」などが挙げられます。これらはいずれも、使用者からの要求があれば即座に対応しなければならない状態であり、実作業に従事していないとしても労基法上の労働時間として取り扱われます。
04休憩時間と手待時間の比較と実務上の注意点
残業代請求トラブルの典型例
「昼食時間は休憩」としているが電話対応義務がある場合
昼食中に電話がかかってきたら対応しなければならないような状況では、労働から解放されているとはいえません。この時間は休憩時間ではなく手待時間として労働時間に算入されるリスがあります。
深夜の「仮眠時間」を休憩時間として扱っている場合
警備員・施設管理員・介護士等の仮眠時間が問題になるケースがあります。仮眠中も緊急対応義務がある場合や呼び出しに備えて待機している場合は、労働から解放されているとはいえず、労働時間として割増賃金を支払う必要があります。
05まとめ
労基法上の「休憩時間」とは、単に実作業に従事していない時間ではなく、「労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間」をいいます(行政解釈・昭和22年9月13日基発17号)。大星ビル管理事件最高裁判決も、労働からの解放が保障されていて初めて「休憩時間」といえると判示しています。
現実に作業に従事していなくても、就労の要求があれば直ちに就労できる態勢で待機している手待時間は、休憩時間ではなく労基法上の労働時間に該当します。名目上「休憩時間」とされていても実態が手待時間であれば、残業代計算の基礎に含まれます。休憩時間の設定と実態が乖離している場合は後に残業代請求トラブルに発展するリスがあります。実態に即した休憩時間の設計については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。休憩時間・手待時間の取り扱い・残業代トラブルの予防・就業規則の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 「休憩時間」と「手待時間」の違いは何ですか。
A. 「休憩時間」は労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいいます(行政解釈・昭和22年9月13日基発17号)。一方「手待時間」は、実作業に従事していなくても使用者から就労要求があれば直ちに就労できる態勢で待機している時間をいいます。手待時間は労働から解放されているとはいえないため、労基法上の労働時間として扱われます。
Q2. 仮眠時間は労働時間に該当しますか。
A. 仮眠中であっても労働からの解放が保障されていない場合は、労基法上の労働時間に該当します(大星ビル管理事件最高裁平成14年2月28日判決)。緊急対応義務がある場合や呼び出しに備えて待機している場合は、労働契約上の役務提供義務があるものとして割増賃金の支払いが必要となります。
Q3. 名目上「休憩時間」とされている時間でも、残業代を支払う必要がある場合はありますか。
A. あります。名目上「休憩時間」と定めていても、実態として電話対応・来客対応等で席を離れられない状態であれば手待時間として労働時間に算入されます。「休憩時間中も電話対応が義務」「昼食中も業務連絡対応」などの状況では、実態に即した残業代計算が求められます。
Q4. 適切な休憩時間を確保するための実務上の対応はどうすればよいですか。
A. 休憩時間中の対応義務(電話・来客・緊急連絡等)を完全に排除し、社員が本当に労働から解放される環境を整備することが必要です。休憩時間中に何らかの業務対応義務がある場合は、その時間を労働時間として賃金設計を見直す必要があります。具体的な対応については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
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最終更新日:2026年5月10日