労働問題260 休憩時間の自由利用に制限を加えることはできますか。

この記事の要点

使用者は労働者に休憩時間を自由に利用させなければならない(労基法34条3項)

休憩時間中は使用者の指揮命令権の拘束を離れ、労働者は自由に過ごすことができます

ただし、事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えない

行政解釈(昭和22年9月13日基発第17号)による立場です

企業施設内での自由利用は、使用者の管理権の合理的な行使として是認される範囲の制約を免れない(最高裁判例)

米軍立川基地事件(昭和49年)・目黒電報電話局事件(昭和52年)の各最高裁判決が判示しています

休憩中もビラ配りなどの行為は自由だが、企業施設内で行う場合は管理権の合理的行使による制約を受ける

就業規則による合理的な規律に基づく制約は、休憩中の行為にも及ぶと最高裁は判断しています

01休憩時間の自由利用の原則——労基法34条3項

 使用者は、労働者に対し、休憩時間を自由に利用させなければなりません(労基法34条3項)。これが「自由利用の原則」です。休憩時間中は使用者の指揮命令権の拘束を離れ、労働者は原則として自由にその時間を過ごすことができます。

 この原則は、253番で解説した「労働からの解放の保障」と表裏一体の関係にあります。真の意味での「休憩時間」であるためには、労働者が権利として労働から離れることを保障されていなければならず、使用者がその時間の使い方を一方的に制限することは本来認められません。

 もっとも、自由利用の原則は絶対的なものではなく、事業場の管理・規律保持の観点から一定の制限が許容される余地があります。以下では、その許容される制限の範囲について、行政解釈と最高裁判例の立場を整理します。

02自由利用に認められる制限——行政解釈の立場

 休憩時間の自由利用も絶対的なものではなく、事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えありません(昭和22年9月13日基発第17号)。

 つまり行政解釈では、①事業場の規律保持上必要であること、②休憩の目的を損なわないこと——という2つの要件を満たす範囲内であれば、休憩時間中の行動に一定の制限を加えることができるとされています。

許容される制限の判断基準(行政解釈)
①事業場の規律保持上、必要性があること
②制限を加えても、休憩の目的(心身の疲労回復)を損なわないこと
この2要件を満たさない制限は、労基法34条3項に違反するものとして無効となります。

03外出許可制は違法か——昭和23年基発第1575号の立場

 休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせることも、事業場内において自由に休息し得る場合には、必ずしも違法にはなりません(昭和23年10月30日基発第1575号)。

 この行政解釈のポイントは「事業場内において自由に休息し得る場合には」という条件です。外出そのものを全面的に禁止したり、事業場内でも自由に休憩できない状態を作り出したりする場合は、自由利用の原則を侵害することになります。しかし、事業場内で自由に休憩できることが確保されていれば、外出に所属長の許可を求める制度自体は違法とはならないという考え方です。

 会社経営者としては、外出許可制を設ける場合には、あくまで事業場内での自由な休憩が保障されていることを前提として、セキュリティや安全管理上の合理的な必要性に基づいて設計することが重要です。

04米軍立川基地事件最高裁判決(昭和49年)の判断

 使用者の事業所等の管理権に基づく労働者に対する行動規制は、休憩時間中のものであっても、管理権の合理的な行使として是認され得る範囲内にある限り、有効なものとして拘束力を有することになります(米軍立川基地事件最高裁昭和49年11月29日第三小法廷判決)。

 この判決が示した重要な考え方は、「休憩時間中であっても、使用者の管理権に基づく合理的な範囲内の行動規制は有効である」という点です。休憩時間中は指揮命令権から解放されるとはいえ、企業施設の管理権という別次元の権限に基づく規制は、合理的な範囲内であれば休憩時間中にも及びます。

05目黒電報電話局事件最高裁判決(昭和52年)の判断

 目黒電報電話局事件最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決は、休憩時間の自由利用と企業施設内での制約の関係について、より詳細な判断を示しています。

 同判決は、「一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法三四条三項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法三四条三項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。」としながらも、「しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。」と判示しています。

制約の種類 休憩時間中の適用
指揮命令権に基づく業務上の制約 休憩時間中は受けない
労務提供に直接附随する職場規律に基づく制約 休憩時間中は受けない
企業施設の管理権の合理的行使に基づく制約 休憩時間中も及ぶ(合理的範囲内)
企業秩序維持の要請に基づく規律による制約 休憩時間中も及ぶ

06まとめ——会社経営者が押さえるべき考え方

 休憩時間の自由利用の原則(労基法34条3項)は、使用者の指揮命令権による業務上の制約から労働者を解放するものです。しかし、①事業場の規律保持上必要な制限(行政解釈)、②企業施設の管理権の合理的行使による制約、③企業秩序維持の要請に基づく規律による制約——については、休憩時間中であっても及ぶことが、最高裁判例(米軍立川基地事件・目黒電報電話局事件)により確認されています。

 会社経営者として実務上重要なのは、就業規則に規定された合理的な職場規律は休憩時間中にも効力を持つという点です。ただし、制限が合理的な範囲を超えていると判断された場合は労基法34条3項違反となりますので、休憩時間中の行動規制の内容・範囲については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。休憩時間中の行動規制の適法性・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 休憩時間中に社員に企業施設内にいるよう義務付けることはできますか。

A. 行政解釈(昭和23年10月30日基発第1575号)によれば、事業場内において自由に休息し得る場合には、外出に所属長の許可を求めることも必ずしも違法ではありません。ただし、事業場内での自由な休憩が確保されていることが前提条件です。また、米軍立川基地事件最高裁判決は、企業施設の管理権の合理的行使として是認される範囲内の制約は有効としています。

Q2. 休憩時間中の外出に所属長の許可を求めることは違法ですか。

A. 一概に違法とはなりません。昭和23年の行政解釈によれば、事業場内において自由に休息し得る場合には、外出の許可制は必ずしも違法にはなりません。ただし、許可が合理的な理由なく恣意的に拒否されるなど、実質的に外出の自由が奪われるような運用は問題となります。

Q3. 休憩時間中に社員が企業施設内でビラを配る行為を禁止できますか。

A. 目黒電報電話局事件最高裁判決によれば、休憩時間中のビラ配り自体は自由ですが、企業施設内で行う場合は「使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制」には従わなければなりません。就業規則に合理的な根拠のある規制があれば、それに違反するビラ配りを禁止・制限することは可能です。

Q4. 休憩時間中の行動規制を就業規則に定めることはできますか。

A. できます。目黒電報電話局事件最高裁判決は、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従う義務があり、労務提供に直接附随する職場規律に基づく制約は受けないものの、企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は休憩時間中も免れないと判示しています。就業規則に定めた合理的な職場規律は休憩時間中にも効力を持ちます。

最終更新日:2026年5月10日


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