労働問題235 労基法上の労働時間に該当するかが問題となりやすい時間|業種別の傾向

この記事の結論
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始業前準備・移動時間・待機時間・終業後在社・研修時間は労働時間性が争われやすい

労働時間に当たるかどうかは実態で客観的に判断されるため、これらの時間は労使の認識に齟齬が生じやすく、残業代請求で争点になりやすい時間です。

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業種によって争点になりやすい時間が異なる

オフィスでは終業後の在社時間、運送業では移動・待機時間、飲食業では始業前の仕込みや待機時間が争われやすい傾向があります。

 労基法上の労働時間に該当するかどうかは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたかで客観的に判断されますが、実務上は、その判断が微妙で労使の認識に齟齬が生じやすい時間帯があります。労働時間性が問題となりやすい時間とは、始業前の準備・朝礼、移動時間、休憩・待機(手待)時間、終業後の在社時間、研修・訓練の時間など、指揮命令下にあるかどうかの評価が分かれやすい時間をいいます。

 これらは残業代請求において争点になりやすく、業種によっても問題となる時間が異なります。会社側専門の弁護士の立場から、労働時間性が問題となりやすい時間とその業種別の傾向を解説します。

01労働時間性が問題となりやすい5つの時間

 労基法上の労働時間に該当するかどうかが問題となりやすい時間には、主に次の5つがあります。

労働時間性が問題となりやすい時間
出社後、始業時刻までの時間(朝礼や仕込み等の時間)
出社後、作業現場までの移動時間や、作業現場から会社に戻るまでの移動時間(会社から自動車で作業現場に向かう場合等)
休憩時間・待機時間(手待時間)
終業時刻後、退社までの在社時間
スキルアップのための研修・訓練の時間

02それぞれの時間が問題となる理由

 これらの時間は、いずれも「実際に業務をしているとまではいえないが、まったくの自由時間ともいえない」という微妙な性質を持っています。労働時間に当たるかどうかは、その時間に使用者の指揮命令下に置かれていたか、行為が義務付けられ、または余儀なくされていたかで判断されるため、実態の評価をめぐって労使の認識に齟齬が生じやすくなります。

 たとえば始業前の朝礼や仕込みが事実上義務付けられていれば労働時間となり得ますし、待機時間も、指示があればただちに対応しなければならない状態であれば労働時間に含まれ得ます。逆に、労働から離れることが保障されていれば労働時間には当たりません。名称ではなく実態が基準となる点が、争いの生じやすさの背景にあります。

03業種によって争点になりやすい時間が異なる

 どの時間が問題となりやすいかは、業種によって傾向が異なります。実務上よく見られる傾向を整理すると、次のとおりです。

業種別・争点になりやすい時間の傾向
オフィスでの仕事 ④終業時刻後、退社までの在社時間が何時までなのか、在社していてもそれが労働時間に当たるのかが問題となりやすい
運送業 ②移動時間や、③休憩・待機(手待)時間が問題となることが多い
飲食業 ①始業前の朝礼・仕込み等の時間や、③休憩・待機(手待)時間を中心に争われることが多い

 自社の業種で争点になりやすい時間を把握しておくことで、労働時間の記録・管理の重点を定めやすくなります。特に、移動時間や待機時間が多い業種では、その時間が労働時間に当たるかどうかで残業代の総額が大きく変わることがあります。

04会社が取るべき実務対応

 まず、自社において労働時間性が問題となりやすい時間を洗い出し、それぞれについて実態として指揮命令下に置かれているか(義務付け・余儀なくされた状態がないか)を確認してください。労働時間に当たる可能性が高い時間は、正確に把握・記録し、残業代の対象に含めて計算する必要があります。

 労働時間に当たらないように運用したい時間については、就業規則の文言を整えるだけでなく、実際に労働者が労働から解放されている状態にすることが必要です。判断に迷う時間がある場合は、会社側・使用者側専門の弁護士に相談し、記録方法や運用の見直しを進めることをお勧めします。

05よくある質問(FAQ)

Q. 始業前の朝礼や準備の時間は労働時間になりますか。

事実上参加や準備が義務付けられている場合は、指揮命令下に置かれたものと評価され、労働時間に含まれ得ます。任意参加が徹底され、労働者が自由に不参加を選べる実態であれば、労働時間に当たらない場合もあります。

Q. 移動時間は労働時間になりますか。

一律には決まりません。会社から作業現場への移動を指示され、業務として拘束されている場合には労働時間となり得ます。運送業などでは移動時間の労働時間性が争点になりやすいため、実態に応じた検討が必要です。

Q. 休憩時間中の待機(手待時間)は労働時間になりますか。

指示があればただちに対応しなければならず、労働から離れることが保障されていない待機時間は、労働時間に含まれ得ます。休憩として自由に利用できることが実態として保障されているかが分かれ目です。

Q. 研修・訓練の時間は労働時間になりますか。

参加が義務付けられ、または事実上余儀なくされている研修・訓練は労働時間に含まれ得ます。業務命令によらず、労働者が自由に参加を選べる自己啓発であれば、労働時間に当たらない場合もあります。実態に応じた判断が必要です。

経営上のポイント 労基法上の労働時間に該当するかが問題となりやすいのは、始業前の準備・朝礼、移動時間、休憩・待機(手待)時間、終業後の在社時間、研修・訓練の時間です。いずれも「業務そのものとまではいえないが、完全な自由時間ともいえない」微妙な時間で、指揮命令下にあるかの評価が分かれやすく、残業代請求の争点になりがちです。争点になりやすい時間は業種で異なり、オフィスは終業後の在社時間、運送業は移動・待機時間、飲食業は始業前の仕込みや待機時間が典型です。自社の業種で問題になりやすい時間を洗い出し、実態として指揮命令下にあるかを点検したうえで、労働時間に当たる時間は正確に記録・計算しておくことが、退職後の未払い請求への備えになります。労働時間該当性の判断基準とあわせて、労働時間管理の適正化について会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。始業前準備・移動・待機時間などの労働時間管理でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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