労働問題236 残業代(割増賃金)計算の基礎となる労働時間は、どのように把握すればいいでしょうか。

この記事の結論
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労働時間把握の原則は「使用者による現認」か「タイムカード等の客観的記録」

始業・終業時刻の確認・記録は、①使用者が自ら現認する方法、②タイムカード・ICカード等の客観的記録による方法が原則的方法とされています(労働時間適正把握ガイドライン)。

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自己申告制は例外。多くの会社では客観的記録による把握が現実的

全員の始業・終業を毎日現認するのが難しい会社が多いため、実務上はタイムカード等による把握が原則的方法となります。自己申告制は例外として一定の措置を要します。

 残業代(割増賃金)計算の基礎となる労働時間の把握方法として、行政の指針は、始業・終業時刻の確認・記録の原則的な方法を、①使用者が自ら現認して確認・記録する方法、②タイムカード・ICカード等の客観的な記録を基礎として確認・記録する方法の2つに整理しています(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン・平成29年1月20日基発0120第3号)。自己申告制は、これらによりがたい場合の例外的方法と位置付けられています。

 労働時間の把握方法は、残業代トラブルにおける労働時間の立証に直結するため、原則的方法を理解し、自社の体制を整えておくことが重要です。会社側専門の弁護士の立場から解説します。

01労働時間把握の根拠となるガイドライン

 労働時間の把握方法については、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日基発0120第3号)が指針を示しています。このガイドラインは、従来の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日基発339号。通称46通達)を引き継いだもので、現在はこのガイドラインが実務上の基準となっています。

 ガイドラインは行政指導の基準であり、労働基準監督署はこれに沿って指導を行います。使用者には労働時間を適正に把握・管理する責務があることを前提に、始業・終業時刻の確認・記録の方法が具体的に示されています。

02始業・終業時刻の確認・記録の原則的方法

 ガイドラインは、始業・終業時刻の確認・記録の原則的な方法として、次の2つを掲げています。

始業・終業時刻の確認・記録の原則的方法
使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること
タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること

 使用者が毎日、社員全員の始業・終業を実際に現認することは、多くの勤務形態の会社にとって現実的ではありません。そのため、実務上は、②のタイムカード・ICカード等の客観的記録による確認・記録が、原則的方法として採用されることになるものと考えられます。

03自己申告制は例外的方法

 上記の原則的方法によることなく、自己申告制により始業・終業時刻の確認・記録を行わざるを得ない場合には、③自己申告制を採用することも認められています。ただし、自己申告制はガイドライン上あくまで例外的方法と位置付けられており、採用する場合には所要の措置を講じる必要があります。

経営者が見落としやすいポイント自己申告制は「客観的記録による把握が難しい場合の例外」です。原則的方法(現認・客観的記録)が採れるにもかかわらず安易に自己申告制のみで運用していると、労働時間管理が曖昧との評価を受けやすく、残業代トラブルの際に不利に働くことがあります。自己申告制を採る場合の具体的な注意点は、別記事で解説しています。

04会社が取るべき実務対応

 まず、自社の労働時間把握が、現認またはタイムカード・ICカード等の客観的記録という原則的方法で行われているかを確認してください。自己申告制のみで運用している場合は、その必要性を再検討し、客観的記録による把握への切り替えや、自己申告制を採る場合の措置の整備を検討することをお勧めします。

 労働時間の把握方法は、残業代の立証・管理の土台となります。自社の体制がガイドラインに沿っているか判断に迷う場合は、会社側・使用者側専門の弁護士または社会保険労務士に確認することをお勧めします。

05よくある質問(FAQ)

Q. 労働時間の把握方法は法律で決まっていますか。

労働基準法に具体的な方法の定めはありませんが、厚生労働省のガイドライン(平成29年1月20日基発0120第3号)が、原則として現認またはタイムカード等の客観的記録によることを示しています。監督署はこれに沿って指導を行います。

Q. タイムカードは必ず導入しなければなりませんか。

タイムカードに限らず、ICカードやパソコンの使用時間の記録など、客観的な記録による把握であれば原則的方法として認められます。使用者が自ら現認する方法も原則的方法の一つですが、全員分を毎日現認するのは現実的でない会社が多いといえます。

Q. 自己申告制で労働時間を把握してもよいですか。

客観的記録によることが難しい場合には認められますが、ガイドライン上は例外的方法です。採用する場合は、労働者への説明や実態調査など所要の措置を講じる必要があります。安易な自己申告制のみの運用は避けるべきです。

Q. 旧「46通達(基発339号)」はまだ有効ですか。

平成13年4月6日基発339号(46通達)は、平成29年1月20日基発0120第3号のガイドライン策定により廃止されています。現在は、この新しいガイドラインが労働時間把握の基準となります。原則的方法の考え方は引き継がれています。

経営上のポイント 残業代計算の基礎となる労働時間の把握は、①使用者による現認、②タイムカード・ICカード等の客観的記録が原則的方法とされ、自己申告制は例外的方法と位置付けられています(労働時間適正把握ガイドライン・平成29年1月20日基発0120第3号)。全員の始業・終業を毎日現認するのは現実的でない会社が多いため、実務上は客観的記録による把握が原則的方法の中心になります。使用者には労働時間を適正に把握・管理する責務があり、把握が曖昧だと残業代トラブルで不利に働きます。自己申告制のみで運用している会社は、原則的方法への切り替えや、自己申告制を採る場合の措置整備を検討しておくことが、退職後の未払い請求への備えになります。自己申告制を採用する場合の注意点とあわせて、労働時間管理の整備について会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働時間の把握方法や労働時間管理の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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