労働問題228 特例措置対象事業場で週44時間以内でも1日8時間超は残業代が必要な理由

この記事の結論
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「週44時間以内なら残業代不要」は誤り。1日8時間超は残業代が必要

特例が緩和するのは週の基準のみです。週の合計が44時間以内でも、1日8時間を超えた分は1日単位の時間外労働として割増賃金が必要です。

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毎日8時間半×5日(週42.5時間)でも各日30分・計150分の残業代が発生

週44時間以内でも、各日30分の1日単位の時間外労働が生じます。見落とすと退職後に3年分の未払い残業代を請求されるおそれがあります。

 飲食店・小売業・接客業などの小規模事業場(特例措置対象事業場)の経営者の方から、「週44時間以内に抑えれば残業代を支払わなくてよいのですか」というご質問を受けることがあります。しかし、これは特例措置の内容を誤解した理解です。小規模事業場の労働時間の特例は、週当たりの法定労働時間の上限を40時間から44時間に緩和するものにすぎず、1日の法定労働時間(8時間)は特例の対象外です。

 したがって、1日8時間を超えて労働させた場合は、週の合計が44時間以内であっても残業代(時間外割増賃金)を支払う必要があります。会社側専門の弁護士の立場から、この誤解を正確に解説します。

01よくある誤解:「週44時間以内なら残業代不要」は誤り

 特例措置対象事業場では、「1週間について44時間まで労働させることができる」とされています。これにより、週40時間超44時間以内の部分については、週単位の時間外労働が発生しないという効果があります。

 しかし、「週44時間を超えて労働させなければ残業代は一切不要」という理解は誤りです。1日8時間を超えて労働させた場合は、週の合計が44時間以内であっても、1日単位の時間外労働として残業代の支払いが必要です。特例措置が緩和するのは週単位の基準のみであり、1日の上限は変わりません。

よくある誤解

誤解 「特例で週44時間まで働かせてよいのだから、週44時間以内に収めれば残業代はまったく不要だ」

正しい理解 緩和されるのは週の基準(40時間→44時間)だけです。1日8時間を超えた分は、週の合計が44時間以内でも1日単位の時間外労働として割増賃金が必要になります。残業代が不要になるのは、各日8時間以内かつ週44時間以内の場合に限られます。

02特例措置が緩和する範囲の正確な理解

 特例措置対象事業場における残業代の発生基準を正確に整理すると、次のとおりです。1日単位については、1日8時間を超えた部分が時間外労働となり(特例に関係なく発生)、残業代の支払いが必要です。週単位については、1日単位で既に時間外と判定された時間を除いた残りが週44時間を超えた部分が時間外労働となります(通常の事業場は40時間が基準)。

 つまり、特例措置によって恩恵を受けるのは「週の所定内労働時間(1日8時間以内分)が40時間超44時間以内の部分」についてのみです。1日8時間を超えた部分については、特例の影響を受けません。

03誤解によるトラブルの実例

 特例措置を誤解して「週44時間以内なら残業代不要」と思い込んで運用している事業主の場合を考えます。たとえば毎日8時間半を5日間(計42時間30分)働かせているとします。週44時間以内なので残業代不要と思っていても、実際には各日30分(計150分)の1日単位の時間外労働が発生しており、その分の割増賃金(25%以上)を支払う義務があります。

計算例|毎日8時間半×5日(週42時間30分・特例事業場)
週の総労働時間 8.5時間 × 5日 = 42時間30分(44時間以内)
週単位の時間外労働(44時間超) 0時間(44時間以内のため)
1日単位の時間外労働(8時間超) 各日30分 × 5日 = 150分
残業代が必要な時間 150分(2時間30分)

 週の合計が44時間以内でも、この150分(2時間30分)については25%以上の割増賃金が必要です。これを見落として支払っていない場合、退職した社員から3年分の未払い残業代を請求されると、大きな金額になることがあります。特例措置の正確な内容を把握し、正しい給与計算を行うことが重要です。

04会社が取るべき実務対応

 まず、自社が特例措置対象事業場に該当するかどうかを確認してください。該当する場合であっても、1日の労働時間が8時間を超えないよう管理するか、超えた分については正確に残業代を計算・支払う体制を整えることが必要です。

 給与計算において、1日8時間超の時間外労働分が正しく計算・支払われているかを確認してください。問題がある場合は早期に是正し、就業規則・賃金規程の整備とあわせて弁護士・社会保険労務士に相談することをお勧めします。残業代トラブルの予防には、正確な労働時間管理と適切な残業代支払い体制の構築が不可欠です。

05よくある質問(FAQ)

Q. 週44時間以内に抑えていれば残業代は一切不要ですか。

不要ではありません。週の合計が44時間以内であっても、1日8時間を超えた部分については1日単位の時間外労働として残業代の支払いが必要です。特例措置は週単位の基準のみを緩和するものであり、1日8時間の上限は通常どおり適用されます。

Q. 毎日8時間半を5日間(週42時間30分)勤務させた場合、残業代は発生しますか。

発生します。週の合計は42時間30分で特例の44時間以内ですが、各日30分(1日8時間超の部分)が1日単位の時間外労働となります。5日間で合計150分(2時間30分)の残業代が必要です。この点を見落とすと未払い残業代が累積するリスクがあります。

Q. 特例措置対象事業場において、残業代が発生しないのはどのような場合ですか。

各日の労働時間が8時間以内であり、かつ週の総労働時間が44時間以内である場合に限り、残業代は発生しません。1日単位(8時間超)でも週単位(44時間超)でも超えていない場合のみ、残業代は不要となります。

Q. 特例措置対象事業場になることで、時間外労働に関する36協定は不要になりますか。

不要にはなりません。特例措置対象事業場であっても、1日8時間・週44時間を超えて労働させる場合は36協定の締結・届出が必要です。36協定なしに法定労働時間を超えて労働させることは違法です。

経営上のポイント 特例措置対象事業場で最も多い誤解が、「週44時間以内なら残業代は不要」というものです。特例が緩和するのは週の基準(40→44時間)だけで、1日8時間の上限は変わりません。毎日8時間半×5日(週42時間30分)のように週44時間以内でも、各日30分×5日=150分の1日単位の時間外労働が発生し、25%以上の割増賃金が必要です。残業代が不要になるのは「各日8時間以内かつ週44時間以内」の場合に限られます。この点を見落とすと、退職後に3年分の未払い残業代を請求されるリスクがあります。1日の労働時間を8時間以内に収める運用にするか、超過分を正確に計算・支払う体制を整えてください。特例措置対象事業場の要件と週44時間特例とあわせて、給与規程の整備について会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。小規模事業場特例の残業代計算や給与規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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