労働問題218 時間外・休日・深夜割増賃金の計算方法と割増率一覧【会社側弁護士が解説】
残業代(割増賃金)のトラブルを予防するには、まず会社側が正しい計算方法を把握しておくことが不可欠です。残業代の計算は、「通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価」に、種類ごとに定められた割増率を掛ける方法で行います。
割増率は時間外労働・休日労働・深夜労働の種類によって異なり、それぞれ法律で最低限の割増率が定められています。会社側として正確な計算方法を理解し、賃金規程・給与計算に反映させることが重要です。使用者側弁護士の立場から、各種残業代の計算方法を解説します。
01時間外割増賃金(残業代)の計算方法
時間外割増賃金(残業代)は、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働に対して支払う割増賃金です。計算式は以下のとおりです。
時間外割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×1.25
なお、1か月60時間を超える時間外労働に対しては、割増率が1.50に引き上げられます。ただし、中小企業(資本金・出資額が3億円以下の法人等)については、従来は1.25の割増率が適用されていましたが、2023年4月1日以降は中小企業にも1.50の割増率が適用されています。会社規模に応じた適用を確認する必要があります。
02休日割増賃金の計算方法
休日割増賃金は、法定休日(労働基準法35条が定める週1日の休日)に労働させた場合に支払う割増賃金です。計算式は以下のとおりです。
休日割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×1.35
注意が必要なのは、「法定休日」と「所定休日(会社が定めた週の法定休日以外の休日)」の区別です。法定休日に労働させた場合の割増率は1.35ですが、所定休日(祝日・会社独自の休日等)に労働させた場合は1.35ではなく、時間外労働として1.25(月60時間超は1.50)を適用することになります。就業規則で法定休日と所定休日を明確に区別することが重要です。
03深夜割増賃金の計算方法
深夜割増賃金は、深夜時間帯(午後10時から午前5時)に労働させた場合に支払う割増賃金です。計算式は以下のとおりです。
深夜割増賃金=通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×0.25
深夜割増賃金は、時間外労働・休日労働と重複して適用されます。たとえば、法定時間外労働かつ深夜(午後10時以降)の場合は、1.25+0.25=1.50(合計50%増)となります。法定休日かつ深夜の場合は1.35+0.25=1.60(合計60%増)となります。
04各種割増賃金の重複適用
残業代(割増賃金)の重複適用について整理すると、以下のようになります。通常の法定時間外労働(深夜以外)は×1.25、法定時間外労働かつ深夜は×1.50(1.25+0.25)、1か月60時間超の法定時間外労働(深夜以外)は×1.50、法定休日労働(深夜以外)は×1.35、法定休日労働かつ深夜は×1.60(1.35+0.25)です。
なお、法定休日の労働に対しては、その日の労働時間が8時間を超えても、時間外割増賃金は重複して発生しません(休日割増のみ)。ただし、深夜割増は重複して適用されます。この点は誤解が生じやすいため注意が必要です。
05会社が取るべき実務対応
まず、現在の給与計算において正しい割増率が適用されているかを確認してください。特に、法定休日と所定休日の区別、月60時間超の割増率(中小企業への適用開始)、深夜の重複適用が正確に処理されているかを精査することが重要です。
残業代の計算誤りが発覚した場合、退職後3年分を遡って請求されるリスクがあります。弁護士法人四谷麹町法律事務所の藤田進太郎弁護士は、残業代トラブルの予防・解決を専門とする会社側弁護士として、給与規程の法的診断・整備をサポートしています。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代(割増賃金)の計算方法や給与規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 時間外割増賃金、休日割増賃金、深夜割増賃金の割増率はそれぞれいくつですか。
A. 時間外割増賃金は×1.25(月60時間超は×1.50)、休日割増賃金(法定休日)は×1.35、深夜割増賃金は×0.25です。深夜割増は時間外や休日と重複して加算されます(例:時間外かつ深夜は×1.50)。
Q2. 法定休日と所定休日で割増率は違いますか。
A. 違います。法定休日(週1回の法律上の休日)に労働させた場合は×1.35の休日割増賃金が発生します。所定休日(会社が定めた法定休日以外の休日)に労働させた場合は、1.25(週40時間超の場合)の時間外割増賃金が適用されます。就業規則で法定休日を明確に指定することが重要です。
Q3. 法定休日に8時間を超えて働かせた場合、時間外割増も加算されますか。
A. 加算されません。法定休日の労働に対しては、労働時間の長さにかかわらず1.35の休日割増賃金のみが適用されます。ただし、深夜時間帯(午後10時以降)に及ぶ場合は0.25の深夜割増が加算されます。
Q4. 月60時間超の割増率の引き上げは中小企業にも適用されますか。
A. はい。2023年4月1日以降、中小企業にも1か月60時間超の時間外労働に対する50%割増(×1.50)が適用されています。中小企業でも月60時間超の残業には高い割増率での支払いが義務付けられており、長時間残業を放置すると未払いリスクが高まります。
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最終更新日:2026年5月10日