労働問題229 特例措置対象事業場の時間外労働時間算定の具体例・月〜土各9時間勤務の場合【会社側弁護士が解説】

 特例措置対象事業場(飲食業・小売業等で常時10人未満の事業場)における時間外労働時間の算定は、通常の事業場と同じ「1日単位」と「1週間単位」の二つの基準で行いますが、週の法定労働時間が44時間に緩和されている点が異なります。

 前のページ(faq1/226.html)の具体例(通常事業場・週40時間基準)と同じ勤務形態で、特例措置対象事業場ではどのように時間外労働時間が算定されるかを比較すると、制度の違いが理解しやすくなります。使用者側弁護士の立場から、具体例で解説します。

01具体例の設定

 日曜日を法定休日として月曜日から土曜日まで毎日9時間ずつ労働させた場合を例に考えます(特例措置対象事業場)。週の内訳は以下のとおりです。

 日曜日:法定休日(休み)。月曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。火曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。水曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。木曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。金曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。土曜日:9時間労働。週の総労働時間は9時間×6日=54時間です。

021日単位の時間外労働の集計

 月曜日から金曜日の各日について、1日8時間を超えた時間は1日単位の時間外労働として確定されます。特例措置対象事業場であっても、1日単位の基準(8時間超)は変わりません。

 月〜金の各日1時間ずつ、5日間の合計5時間が1日単位の時間外労働となります。

03週単位の時間外労働の判定(44時間基準)

 特例措置対象事業場では、週単位の法定労働時間が44時間です。週の総労働時間から1日単位の時間外労働を除いた残りが44時間を超えた部分が、週単位の時間外労働となります。

 週の総労働時間:54時間。1日単位の時間外労働(月〜金各1時間、計5時間)を除く:54時間から5時間を引いて49時間。法定の44時間を超えた部分:49時間から44時間を引いて5時間。この5時間が週単位の時間外労働となります。

 この5時間は土曜日の労働時間9時間のうち4時間を超えた部分(4時間+5時間=9時間)に当たります。つまり、土曜日に4時間を超えて労働し始めた時点から週44時間超の時間外労働となります。

04通常の事業場との比較

 同じ勤務形態(月〜土各9時間)の場合、通常の事業場(週40時間基準)では週単位の時間外労働は9時間(土曜日全体)ですが、特例措置対象事業場(週44時間基準)では5時間(土曜日の4時間超え分)となります。

 一方、1日単位の時間外労働(月〜金各1時間、計5時間)は両者で同じです。この結果、通常事業場の時間外労働合計は14時間、特例措置対象事業場では10時間となります。特例措置対象事業場の方が時間外労働時間が4時間少なく、その分残業代が少なくなります。

05会社が取るべき実務対応

 特例措置対象事業場に該当する場合は、週44時間を基準として週単位の時間外労働を算定する必要があります。ただし、1日単位の時間外労働(8時間超)は変わらずに発生するため、この点を正確に把握したうえで給与計算を行ってください。

 給与計算において正しい基準が適用されているかを定期的に確認し、誤りがある場合は早期に是正することが重要です。残業代に関する法的疑問は、労働問題に強い会社側弁護士または社会保険労務士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR
弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。特例措置対象事業場の残業代計算や給与規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 月〜土各9時間勤務の場合、特例措置対象事業場では時間外労働の合計は何時間ですか。

A. 1日単位(月〜金各1時間×5日=5時間)と週単位(週44時間超の5時間:土曜日の4時間超え分)の合計10時間が時間外労働となります。通常の事業場(14時間)と比べて4時間少なくなります。

Q2. なぜ土曜日の4時間を超えた時点から週44時間超の時間外労働となるのですか。

A. 月〜金の1日8時間以内部分(8時間×5日=40時間)に土曜日の4時間を加えると44時間になるためです。土曜日の5時間目(4時間を超えた部分)から週44時間超の時間外労働が始まります。

Q3. 特例措置対象事業場でも1日単位の時間外労働(8時間超)は通常どおり発生しますか。

A. 発生します。特例措置が緩和するのは週単位の基準のみです。1日単位については8時間超の部分が時間外労働となる点は、特例措置対象事業場でも変わりません。

Q4. 特例措置対象事業場が通常の事業場より有利な点は何ですか。

A. 週単位の時間外労働が発生する基準が40時間ではなく44時間になる点です。これにより、週40時間超44時間以内の労働については、週単位の残業代が発生しません。飲食業・小売業・接客業等の特例対象業種では、この恩恵を受けられます。

最終更新日:2026年5月10日

労働問題FAQカテゴリ


Return to Top ▲Return to Top ▲