労働問題221 基本給と歩合給が併用される場合の残業代計算方法|会社側弁護士が具体例で解説
基本給と歩合給が併用される場合の残業代計算
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基本給部分は通常の計算(×1.25等)、歩合給部分は特則で計算する 労基法37条の特則により、歩合給分は「歩合給総額÷総労働時間×0.25」が割増賃金となる |
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月60時間超の50%割増は歩合給にも適用——2023年4月から中小企業も対象 歩合給部分の月60時間超分は「歩合給総額÷総労働時間×0.50」となる |
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歩合給の割増賃金計算は「0.25倍」——既に通常賃金が含まれているため 歩合給は残業した時間分の賃金が既に含まれているため、割増分(0.25相当)のみ追加で支払えばよい |
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残業代の時効は3年——退職後の請求に備えた記録整備が必要 2020年改正で時効延長。歩合給と実労働時間の記録が残っていないと、請求額を争う術がなくなる |
目次
01基本給と歩合給が併用される場合の残業代の考え方
営業職などで月給制の基本給に加えて成果に応じた歩合給(出来高払い)が支給される場合、残業代の計算は二つの部分に分けて行います。
一つ目は基本給部分です。これは通常の時間給換算による残業代計算と同じです。月の基本給を所定労働時間で割った1時間あたり単価に、割増率(法定時間外は1.25など)を掛けます。
二つ目は歩合給部分です。歩合給は仕事の出来高に応じて支払われるものであり、その中には残業時間中に行った業務の対価も既に含まれています。そのため、歩合給から改めて時間単価を計算し、割増分(通常は0.25相当)のみを追加で支払えばよいとされています(労働基準法第37条および同法施行規則第19条第1項第6号)。
02歩合給部分の割増賃金の計算方法と具体例
歩合給部分から生じる割増賃金の計算式は以下の通りです。
歩合給部分の時間外割増賃金
その月の歩合給総額 ÷ その月の総労働時間 × 0.25 × 法定時間外労働時間
具体例:ある月に基本給25万円・歩合給10万円の合計35万円が支給された社員が、その月に所定労働時間170時間・法定時間外労働20時間・総労働時間190時間だったとします。
03月60時間超の50%割増が歩合給にも適用される
月の法定時間外労働が60時間を超えた場合、歩合給部分についても超過分は50%割増で計算します。2023年4月1日から中小企業にも適用されているため、歩合給制を採用している中小企業は計算方法の見直しが必要です。
月60時間超の部分については、上記計算式の「0.25」が「0.50」に変わります。歩合給が高い社員ほど、超過分の割増賃金も大きくなります。
経営者が見落としやすいポイント
歩合給制の残業代計算は月ごとに変動するため、毎月の計算が複雑になりがちです。また歩合給の支払いタイミング(翌月払いなど)によって計算基礎となる月が変わる場合があります。計算方法が誤っていると、退職後に差額を請求されるリスクがあります。自社の計算方法が正確かどうか、一度弁護士または社会保険労務士に確認することをお勧めします。
04歩合給制で起きやすい残業代トラブルと会社側の対応
歩合給制の職場では、残業代請求にあたって以下のようなトラブルが起きやすいです。
第一に、実際の労働時間の把握が難しいことです。営業職では外出・直帰が多く、タイムカードがない会社も少なくありません。退職者が「実際の労働時間はもっと長かった」と主張した際に、会社側で反証する記録がなければ、社員側の主張が採用されやすくなります。
第二に、歩合給の計算方法が就業規則・雇用契約書に明記されていないケースです。計算の根拠が不明確な場合、どの月の歩合給を計算基礎にするかで争いになることがあります。
会社側の予防策として、労働時間の客観的な記録(スマートフォンの業務アプリの記録、メール送信時刻など)を整備すること、歩合給の計算方法を就業規則・雇用契約書に明確に記載することが重要です。また、2020年改正により時効が3年に延長されたため、記録の保存期間も3年以上とする必要があります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 歩合給の割増賃金計算で「0.25倍」するのは、なぜ「1.25倍」ではないのですか。
A. 歩合給は仕事の出来高(成果)に対して支払われるものであり、残業時間中に行った業務に対する賃金も既に出来高の中に含まれています。そのため、歩合給部分の時間外割増賃金としては、通常賃金部分は既払いとみなされ、割増分(0.25相当)のみを追加で支払えばよいと解されています(労基法施行規則第19条第1項第6号)。
Q2. 歩合給の計算基礎となる「その月の総労働時間」はどう把握すればよいですか。
A. タイムカード・業務日報・入退館記録など、客観的な記録に基づいて把握します。外勤が多い営業職では、業務アプリのログやスマートフォンの位置情報記録なども活用できます。記録がなければ退職後に「実際の労働時間はもっと長かった」と主張された際に会社側が反証できなくなります。
Q3. 歩合給が翌月払いの場合、残業代の計算基礎はどの月の歩合給になりますか。
A. 原則として、その残業が発生した月の歩合給を計算基礎とします。ただし歩合給の支払いが翌月以降になる場合、計算が複雑になります。就業規則や雇用契約書に計算方法を明確に定めておくことが重要です。不明な点は弁護士または社会保険労務士に相談してください。
Q4. 退職した営業社員から未払い残業代を請求されました。どう対応すればよいですか。
A. まず当時の労働時間記録・歩合給の支払い記録・賃金台帳・雇用契約書を収集し、会社側専門の弁護士に相談してください。請求額の計算が正確かどうか、固定残業代(みなし残業代)の合意があったかどうか、時効の起算点はいつかなどを法的に検証した上で対応方針を決めます。
最終更新日:2026年5月28日
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