労働問題1007 休職期間満了ギリギリで復職を求めてくる社員の対処法
解説動画
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最低条件は主治医の「復職可」診断書——なければ原則として復職不可 復職を認めるための最低条件は主治医の診断書に復職可能と記載されていること。それがなければ原則として復職を拒否できる。そのまま満了すれば退職・解雇になる |
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就労制限の内容で復職可否の判断が変わる 「残業不可」「出張不可」「短時間勤務」などの就労制限が記載されている場合、その制限が相当な範囲なら復職検討へ。制限が過大で労働契約で予定されている労務提供ができないと評価されるなら復職を認めない判断もあり得る |
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診断書があっても即復職でなく、しっかり確認してから判断する 産業医面談・主治医への面談申し入れ・試し出社などを通じて本当に働けるかどうかを確認する。確認の時間が足りない場合は休職期間の延長も検討する |
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試し出社では朝の始業時刻に出勤できるかどうかが重要な確認ポイント メンタルの問題がある方は朝の出勤が特に辛いことが多い。定時出勤できるかどうかは回復程度を判断する重要な指標 |
目次
01なぜ満了ギリギリで復職の申し出が来るのか
休職期間満了の直前になって復職を求めてくる社員は、意外と多くいます。なぜかといえば、理由は明確です。多くの会社では、休職期間が満了しても復職できない場合は退職または解雇という扱いになります。退職になりたくないから、満了ギリギリになって慌てて手続きを取ってくるのです。
本当に回復して働けるようになったのであれば、会社も復職を認めたいと考えるでしょう。しかし特にメンタルの問題の場合、本当に治ったのか、実際に働けるのか、疑いたくなるような状況も少なくありません。外から見ても分かりにくいのがメンタルの問題です。
よく分からないまま復職させると、本人の体調をさらに悪化させてしまう可能性があります。また安全配慮義務違反を問われることにもなりかねません。戻したはいいが全然仕事にならないということにもなりかねません。
こういった問題への対応の要点を以下で解説します。
02最低条件——主治医の「復職可」診断書がなければ原則復職不可
まず最低限必要なのは、主治医が「復職可能」と記載した診断書です。これが最低条件です。
この診断書がない場合、原則として復職を認めません。そのまま休職期間が満了すれば、就業規則の定めに従って退職(自然退職)または解雇という扱いになります。
特別な事情がある場合に限って、診断書なしでの扱いが問題になることもありますが、それは例外です。基本として「主治医の復職可能という診断書がなければ復職は認められない」という原則を守ってください。
03就労制限の内容で復職可否が変わる
主治医の診断書に「復職可能」と記載されていても、同時に就労制限(残業不可・出張不可・短時間勤務など)が記載されていることがあります。
この就労制限の内容によって、復職を認めるかどうかの判断が変わります。
判断の軸は「労働契約で予定されている労務提供ができるかどうか」です。制限があっても予定された仕事が一応できる状態であれば復職を検討します。制限が過大で予定された仕事ができない状態であれば、復職を認めないことが正当な判断になります。
04診断書があっても即復職でなく確認が必要
主治医の診断書に復職可能と記載されていたとしても、すぐに復職させることは原則として避けてください。
「診断書で復職可能と書いてあれば即復職させる」という対応を取って後に困る相談は多くあります。復職させてみたら全然働けなかったというケースです。こうした問題を防ぐためにも、診断書はあくまで最低条件であり、そこからさらに確認作業を行うことが必要です。
ただし、面談してみたら明らかに元気で、社長や幹部が「これは大丈夫だ」と確信できるほどはっきりしているケースでは、即復職という判断もあり得ます。しかしこれは例外的なケースです。基本として、確認作業を経てから復職させるという姿勢を保ってください。
05確認時間が足りない場合は休職期間の延長を検討する
満了ギリギリで復職の申し出が来た場合、産業医面談や試し出社などの確認をする時間が十分に取れないことがあります。
その場合は、休職期間の延長を検討してください。就業規則の定めや個別の事情によって延長できる範囲は異なりますが、確認のための時間を確保するために休職期間を延長することは、適切な対応の一つです。
一方、確認が間に合いそうであれば延長は不要です。状況に応じて判断してください。
06産業医面談・主治医への面談申し入れ・試し出社——確認の方法
産業医面談——最も基本的な確認方法
産業医がいる会社では、産業医面談を行った上で産業医の意見を聞いて判断することが基本です。特に職場の状況をよく把握していてメンタルの問題に強い産業医であれば、その意見は信頼性が高いです。
産業医が復職可と言うなら復職させる方向で検討します。産業医が復職不可と言った場合は、主治医の診断書との食い違いがあることになりますので、どちらの信用性が高いかを確認する作業を続けることになります。
主治医への面談申し入れ
本人の同意を得た上で、主治医に面談を申し入れることも有効な方法です。会社の仕事内容を伝えながら「この仕事はできますか」という形で確認します。
本人が主治医との面談に同意しない場合、それ自体が一つの考慮要素になります。やましいことがなければ普通は同意するはずですから、同意しないことで「本当に働けるのか」という疑問が強まることがあります。
試し出社——特に朝の始業時刻出勤が重要
正式な復職の前に試し出社を行い、実際に出勤できるか・仕事らしきことができるかを確認することも重要な方法です。
特に確認すべきは、朝の始業時刻に出勤できるかどうかです。メンタルの問題がある方は、朝の出勤が特に辛いことが多く、帰宅時間より朝の方がずっと難しいのです。定時に出勤できているかどうかは、回復の程度を判断する重要な指標になります。
各確認方法の中でどれをどのように組み合わせて進めるかは、個別の事情によって変わります。医学的な判断はお医者さんと、法律的な要件の判断は弁護士と協力しながら、会社経営者が最終的な判断を下していくことになります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。休職・復職対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 満了まで残り1週間のところで「復職したい」という申し出がありました。診断書もありません。拒否できますか。
A. 主治医の復職可能という診断書がない場合は、原則として復職を認めません。診断書なしでの復職申し出は最低条件を満たしていないため、そのまま休職期間が満了すれば就業規則の定めに従って退職または解雇の扱いとなります。特別な事情がある場合はその都度弁護士に相談してください。
Q2. 「残業不可・短時間勤務(2時間短縮)」という制限付きの診断書が提出されました。復職を認めるべきですか。
A. 3か月程度の期間限定で2時間程度の短縮勤務という制限であれば、相当な範囲の制限として復職を検討する方向になることが多いです。ただし制限期間と内容を本人に確認しながら、その後は通常通りの勤務に戻ることを前提として進めることが大切です。残業不可については、その業務においてどの程度残業が必要かを踏まえて個別に判断してください。判断に迷う場合は弁護士に相談してください。
Q3. 産業医が「復職不可」、主治医が「復職可」と言っています。どちらを信じればよいですか。
A. 産業医は職場の状況を把握しているため、職場への復職可否という観点からは産業医の意見が重要です。食い違いがある場合は、確認作業を継続することが基本です。産業医から主治医への情報提供や問い合わせ、本人の同意を得た上での主治医への面談申し入れなどを通じて、どちらの意見の信用性が高いかを確認していきます。状況によっては弁護士に相談しながら判断してください。
Q4. 試し出社を行いたいのですが、この間の賃金はどう扱えばよいですか。
A. 試し出社中の賃金の扱いは、試し出社の法的な位置づけ(欠勤期間中か、休職期間中か)や就業規則の規定によって異なります。一般に試し出社は正式な復職ではないため、就労義務のある出勤とは扱わないことが多いです。無給での試し出社とする場合は本人への事前説明が重要です。具体的な扱いについては自社の就業規則を確認した上で、弁護士にご相談ください。
最終更新日:2026年5月10日
