労働問題897 休憩時間を分割して与える場合の注意点【会社側弁護士が解説】

 会社が従業員の休憩時間を分割して与えることは法律上認められていますが、その分割の仕方によっては法律違反や賃金支払義務が発生するリスクがあります。休憩時間の設計を誤ると、労働基準監督署の是正指導や、残業代請求の根拠となる「手待時間」認定につながる可能性があります。

 従業員数が増えるほど、休憩時間の管理は複雑になります。実務上の安全な運用方法を理解しておくことは、会社の労務リスク管理にとって重要です。

 本記事では、会社側専門弁護士の視点から、休憩時間の分割付与に関する法的ルールと実務上の注意点を解説します。

01労働基準法における休憩時間の基本ルール

 労働基準法第34条は、使用者が労働者に対して付与すべき休憩時間について、次のとおり定めています。労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分の休憩を、労働時間が8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、それぞれ付与しなければなりません。

 また、同条は「一斉付与の原則」を定めており、休憩は原則として事業場の全従業員に一斉に与えなければなりません。ただし、労使協定によって一斉付与の例外を設けることができます。

 さらに、付与した休憩時間は「自由利用の原則」に基づき、従業員が実際に自由に利用できるものでなければなりません。会社が休憩中も業務の応答や顧客対応を求める場合、その時間は休憩時間ではなく労働時間(手待時間)と判断されます。

02休憩時間の分割付与は認められる

 労働基準法には休憩時間の「連続付与」を義務付ける規定はありません。したがって、法定の休憩時間(45分または1時間)を複数回に分割して与えること自体は法律上認められています。

 たとえば、45分の休憩を「午前15分+午後30分」の2回に分割して付与することは問題ありません。分割付与の方法についても、就業規則に明記された上で適切に運用される限り、法律上の問題は生じません。

 ただし、分割の仕方が「小刻みすぎる」場合には、後述のとおり法的リスクが生じます。

03小刻みな分割による法的リスク

 45分の休憩を「5分×9回」などと極端に小刻みに分割する設計は、休憩時間本来の趣旨(心身の疲労回復)に反するとして問題視されます。このような設計では、従業員が実質的に休息を取れず、休憩の効果が失われます。

 さらに重大なリスクとして、小刻みな休憩時間が「手待時間」(労働時間)と認定されるおそれがあります。手待時間とは、業務の指示を受けるために待機している時間であり、実質的に使用者の指揮命令下にある時間です。5分程度の短時間では、従業員が事業場外に出てリフレッシュすることもできず、実質的な自由利用が確保されていないとして労働時間と認定されるケースがあります。

 手待時間と認定された場合、その時間分の賃金支払義務が生じ、割増賃金の問題も発生します。過去の未払い分を遡及して請求される可能性もあるため、リスクは軽視できません。

04実務上の安全な運用方法

 休憩時間を分割して付与する場合、会社が実務上取るべき対応として次の点が挙げられます。第一に、分割回数を最小限にし、1回当たりの休憩時間をある程度まとまった長さにすることです。目安として、1回当たり10〜15分以上は確保することが望ましいとされます。第二に、就業規則に休憩時間の開始・終了時刻と分割方法を明記することです。第三に、休憩時間中に業務対応を求めない運用を徹底することです。

 また、飲食業・運輸業など変形労働時間制や不規則な勤務形態を採用している業種では、休憩時間の管理が特に複雑になります。業種・業態に応じた休憩制度の設計と就業規則への反映について、専門家への相談を検討してください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

05よくある質問(FAQ)

Q1. 休憩を複数回に分割することを就業規則に定めていない場合、問題はありますか?

 就業規則に分割方法の明記がない場合、従業員との間でトラブルになるリスクがあります。会社が一方的に分割した休憩を与えても、就業規則の根拠がなければ適法性が問われる可能性があります。就業規則に休憩の開始・終了時刻や分割の方法を明記しておくことが重要です。

Q2. 電話当番中の休憩時間は労働時間になりますか?

 電話当番など業務の応答義務が課されている時間は、従業員が実質的に使用者の指揮命令下に置かれているため、休憩時間ではなく労働時間(手待時間)と判断されます。この場合、その時間に対する賃金支払義務が生じます。

Q3. 変形労働時間制を採用している場合、休憩時間の付与ルールは変わりますか?

 変形労働時間制を採用しても、1日の労働時間が6時間を超える日は45分以上、8時間を超える日は1時間以上の休憩付与義務は変わりません。変形労働時間制の導入にあたっては、各日の休憩時間の設計も合わせて確認する必要があります。

Q4. 休憩中に自席で食事をとる場合、業務の呼出しがあれば手待時間になりますか?

 休憩中に業務への対応を求められる可能性がある場合、たとえ自席での食事中であっても手待時間と認定されるリスクがあります。休憩時間中は従業員が業務から完全に解放された状態を確保することが必要です。

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最終更新日:2026年5月10日

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