労働問題896 労働審判手続中に会社更生手続が開始した場合、手続はどのように取り扱われますか。

この記事の結論
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労働審判は原則として中断されず更生管財人が承継する

会社更生手続が開始した場合も、係属中の労働審判手続は原則として中断されません。更生管財人が手続を承継し、当事者の地位に就くことになります。

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共益債権か優先的更生債権かで手続の進め方が異なる

共益債権(会社更生法130条)に当たる賃金は労働審判の審理が続行されますが、優先的更生債権に当たる賃金は更生計画によらなければ弁済を受けられないため、労働審判の続行は認められません。

 895の記事で解説した破産手続との関係と並び、労働審判係属中に会社更生手続が開始した場合の取扱いも、実務上重要な論点です。会社更生手続は、経営危機に陥った大企業が事業を継続しながら再建を図るための法的手続きであり、破産とは異なる考慮が必要になります。

 会社側専門の弁護士の立場から、労働審判手続中に会社更生手続が開始した場合の取扱いを解説します。

01原則:労働審判手続は中断されない

 会社更生手続が開始した場合も、係属中の労働審判手続は原則として中断されません。会社更生法に基づく管財人(更生管財人)が手続を承継し、管財人が当事者の地位に就くことになります。これは、労働審判が迅速な紛争解決を目指す手続きであること、また会社更生においては事業の継続が前提とされているため、すべての手続を一律に停止する必要がないためです。ただし、請求の内容が「共益債権」に当たる賃金か「優先的更生債権」に当たる賃金かによって、その後の手続の進め方が大きく異なります。

02共益債権となる賃金債権の場合

 共益債権に当たる賃金債権(会社更生法第130条)は、更生計画によらず随時弁済することができます。これは、会社の事業継続のために必要な費用として優先的に弁済される債権です。共益債権に当たる賃金については、会社更生手続開始後も労働審判手続の審理が進められます。更生管財人が当事者として対応し、審理・調停・審判の各段階を経ることになります。

 この場合、更生管財人は速やかに弁護士に審判対応を依頼し、期日への出席、主張・立証の継続を行う必要があります。共益債権部分について不利な審判が確定すると、更生財団からの弁済義務が生じるため、慎重な対応が求められます。

03優先的更生債権となる賃金債権の場合

 優先的更生債権に当たる賃金債権は、更生計画の定めによって弁済されるため、更生計画の認可前に他の手続で弁済を受けることは認められません(会社更生法第47条等)。この場合、労働審判委員会は、申立てを不適法として却下するか、少額債権として裁判所の許可に基づき調停を行うことを検討することになります。労働者側としては、更生債権の届出を行って更生手続内での弁済を求める流れとなります。

 会社(管財人)の側では、請求の内容が優先的更生債権に当たるかどうかを精査した上で、裁判所への報告と適切な手続き選択を行うことが重要です。

04会社・管財人が取るべき実務対応

 会社更生手続開始後に労働審判手続が続行する場合、更生管財人はいくつかの点に注意が必要です。まず、労働者の請求が共益債権か優先的更生債権かを区分し、それぞれの取扱いを整理することです。次に、共益債権部分については、審判期日に適切に対応し、不要な認定を避けることです。さらに、優先的更生債権部分については、更生手続内での届出・弁済に移行するよう調整することです。

 会社更生は通常、大規模企業を対象としていますが、労働者との間に係属中の労働審判があれば、その対応を放置することは許されません。更生管財人は、会社更生と労働審判の両手続を適切に管理できる弁護士と早期に連携することが不可欠です。

05よくある質問(FAQ)

Q. 会社更生手続が開始すると、労働審判は自動的に中断しますか。

中断しません。原則として労働審判手続は続行され、更生管財人が手続を承継して当事者となります。

Q. 共益債権と優先的更生債権の違いは何ですか。

共益債権は更生計画によらず随時弁済できる債権で、優先的更生債権は更生計画の定めによってのみ弁済される債権です。この区別が労働審判続行の可否を左右します。

Q. 優先的更生債権に当たる部分は、労働審判で審理を続けられますか。

続けられません。裁判所は申立てを不適法として却下するか、少額債権として調停を検討することになります。労働者は更生手続内での届出により弁済を求めることになります。

経営上のポイント 会社更生手続が開始した場合も、係属中の労働審判手続は原則として中断されず、更生管財人が手続を承継します。共益債権(会社更生法130条)に当たる賃金は労働審判の審理が続行されますが、優先的更生債権に当たる賃金は更生計画によらなければ弁済を受けられないため、審理の続行は認められません。会社・更生管財人としては、労働者の請求内容を精査して区分し、共益債権部分は審判対応を、優先的更生債権部分は更生手続内での処理を進めることが重要です。会社更生と労働審判の両手続への対応は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。会社更生・労働審判への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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