労働問題889 降格をするには就業規則上の根拠が必要ですか。
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降格の種類によって就業規則上の根拠の要否が異なる 降格は4つの類型(懲戒処分としての降格、人事権による役職・職位の降格、職能資格の引下げ、職務・役割等級の引下げ)に分けられ、それぞれ就業規則上の根拠の要否が異なります。 |
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職能資格の引下げは根拠規定が必須、他は原則不要 職能資格制度上の資格・等級は本来引下げが予定されていないため、規定と周知が必要です。役職・職位の降格と職務・役割等級の引下げは、原則として就業規則の根拠は不要ですが、濫用は無効になり得ます。 |
目次
888の記事で解説した降格の大分類(懲戒処分としての降格・業務命令としての降格)を踏まえ、本稿では、業務命令としての降格をさらに細かく分類し、それぞれ就業規則上の根拠が必要かを整理します。
会社側専門の弁護士の立場から、降格に就業規則上の根拠が必要かを4類型に分けて解説します。
01懲戒処分としての降格
懲戒処分としての降格をするためには、懲戒処分の該当事由と、懲戒処分の種類として降格があることを就業規則に定めた上で、就業規則を周知させておく必要があります。888の記事で解説したとおり、これは789の記事で解説した懲戒処分一般の規制がそのまま及ぶ類型です。
02人事権による役職・職位の降格
人事権による役職・職位の降格は、使用者の裁量的判断により行うことができますので、就業規則上の根拠は不要ですが、相当な理由のない降格は人事権の濫用として無効になる可能性があります。「課長から係長へ」といった役職・職位そのものの引下げは、この類型に該当します。
03職能資格の引下げ措置としての降格
通常、職能資格制度における資格や等級は、積み重ねによる職務遂行能力の到達レベルを表すものですので、当該認定を引下げることは本来予定されていません。職能資格・等級の引き下げをする場合は、当該引き下げに関する規定を就業規則に明記した上で、就業規則を周知させておく必要があります。890の記事で解説するとおり、この類型は特に厳格な規制を受けます。
04職務・役割等級制における等級の引下げ(降級)
職務・役割等級制における等級の引下げは、制度の枠組みの中での人事評価の手続と決定権に基づいて行われている限り、原則として使用者の裁量的判断に委ねられていると考えられていますので、当該引下げに関する就業規則上の根拠は不要とされています。もっとも、相当な理由のない引き下げは人事評価権の濫用として無効になる可能性があります。
職能資格制度が「積み上げ型」で本来引下げを予定していないのに対し、職務・役割等級制は、担当する職務・役割に応じて等級が変動することが制度上想定されているため、この違いが、根拠規定の要否の違いにつながっています。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、自社の人事制度が「職能資格制度」(積み上げ型、本来降格を予定しない)なのか、「職務・役割等級制」(職務内容に応じて変動する)なのかを、まず正確に把握する必要があります。この制度設計の違いによって、降格実施時に就業規則の根拠が必要か否かが変わってくるためです。
職能資格制度を採用している会社が、資格・等級の引下げを実施したい場合には、就業規則にその根拠規定がなければ実施できないため、規定の整備を優先的に検討する必要があります。役職・職位の降格や、職務・役割等級制の降級については、就業規則の根拠がなくても実施できますが、相当な理由のない濫用的な運用は無効リスクを伴うため、降格に至る評価プロセスの合理性・客観性を確保しておくことが重要です。
06よくある質問(FAQ)
Q. 課長から係長への役職の降格に、就業規則の根拠は必要ですか。
必要ありません。人事権による役職・職位の降格は、使用者の裁量的判断で行えますが、相当な理由のない降格は人事権の濫用として無効になる可能性があります。
Q. 職能資格制度の等級を下げるには、何が必要ですか。
職能資格・等級は本来引下げが予定されていないため、引下げに関する規定を就業規則に明記し、周知させておく必要があります。
Q. 職務等級制の等級引下げにも、就業規則の根拠は必要ですか。
原則として不要です。制度の枠組みの中での人事評価の手続と決定権に基づく限り、使用者の裁量的判断に委ねられていると考えられています。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。降格の実施でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日