労働問題878 賃金全額払原則とはどのような原則ですか。
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賃金は原則として全額支払う必要がある 賃金全額払原則とは、労働者に賃金を全額支払わなければならないという原則です。労働者の生活の糧である賃金が労働者に全額手に渡るようにすることを趣旨としています。 |
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法令の定めと労使協定の2つの例外がある 法令の定め(源泉徴収、社会保険料控除等)と、労使協定による控除(社宅費・組合費等)の2つの例外を除き、賃金からの控除は許されません。 |
目次
850・851・852の記事で解説した賃金控除・相殺の議論の根底にあるのが、この賃金全額払原則です。877の記事で解説した直接払原則と並ぶ、賃金支払における最も重要な原則の一つです。
会社側専門の弁護士の立場から、賃金全額払原則の内容を解説します。
01賃金全額払原則の内容
賃金全額払原則とは、労働者に賃金を全額支払わなければならないという原則です。労働者の生活の糧である賃金が労働者に全額手に渡るようにすることを趣旨としています。以下の2つの例外を除き、賃金からの控除は許されません。
02例外①(法令の定めによる場合)
法令の定めには、給与所得税の源泉徴収や社会保険料の控除があります。これらは、税法や社会保険法という別の法令によって、控除することが明文で義務付けられているため、賃金全額払原則の例外として認められているものです。
03例外②(労使協定による場合)
労使協定による控除には、例えば、社宅、寮その他福利厚生施設の費用や、労働組合費が挙げられます。これらは、法令上の義務ではありませんが、労使間の合意(協定)によって、賃金からの控除を可能にするものです。
04労使協定に必要な当事者
労使協定により賃金控除を行う場合には、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合との書面による協定、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定が必要です。864の記事で解説した過半数代表者の選出手続に瑕疵があると、この労使協定自体が無効になり、控除の根拠を欠くことになるため、選出手続の適法性を確保しておくことが重要です。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側が社宅費・寮費・組合費等を賃金から控除する運用を行っている場合には、その控除の根拠となる労使協定が、適法な手続(過半数代表者の適正な選出、書面による協定の締結)を経て有効に成立しているかを、改めて確認する必要があります。労使協定なく控除を行っている場合、あるいは協定はあっても選出手続に瑕疵がある場合には、賃金全額払原則違反となるリスクがあります。
850〜852の記事で解説した損害賠償や過払賃金の相殺は、この2つの例外(法令・労使協定)のいずれにも該当しないため、原則どおり許されないか、あるいは851の記事で解説した「労働者の自由な意思による同意」という別の例外的な理論構成が必要になる点に、改めて留意が必要です。
06よくある質問(FAQ)
Q. 社宅費を給与から天引きしていますが、これは問題ありませんか。
適法な労使協定に基づいていれば問題ありません。過半数労働組合または過半数代表者との書面協定が必要です。
Q. 労使協定なく控除を行っていた場合、どうなりますか。
賃金全額払原則違反となるリスクがあります。控除の根拠となる労使協定を早急に整備することをお勧めします。
Q. 過半数代表者の選出手続に問題があった場合、控除の効力に影響しますか。
影響します。選出手続に瑕疵があると労使協定自体が無効となり、控除の根拠を欠くことになります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。賃金控除実務の適正化でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日