労働問題851 労働者の同意があれば、労働者が壊した備品の修理代と賃金を相殺することができますか。

 労働者の同意があれば、労働者が壊した備品の修理代と賃金を相殺することはできますが、賃金が修理代と相殺されることの同意は労働者にとって不利益ですから、同意の有無は慎重に判断されます。裁判例も、賃金の相殺に関する同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することを求めています(日新製鋼事件最高裁平成2年11月26日判決)。
 労働者から同意を得るのであれば、賃金と損害賠償額を相殺する理由、経緯を労働者に丁寧に説明し、十分納得してもらった上で、相殺に同意する旨記載された書面に署名押印してもらう必要があります。
 もっとも、労働者に損害を賠償してもらうのであれば、賃金から控除するのではなく、賃金全額を支払った上で別途賠償金を支払ってもらう方法が望ましいと考えます。

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