労働問題874 兼業・副業が発覚した労働者を懲戒処分することはできますか。
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兼業・副業自体は懲戒処分の対象にならないのが原則 兼業・副業は、労働時間外の私生活上の行為ですので、労働契約における規律・秩序を保持するための制裁である懲戒処分の対象とはならないのが原則です。 |
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一定の弊害があれば注意指導を経て懲戒処分を検討する 無許可兼業、頻繁な欠勤、業務への支障、競業会社の役員就任等の場合には、まず書面で注意指導し、それでも改善しない場合に懲戒処分を検討していくことになります。 |
797の記事で解説した企業外犯罪行為・情報漏洩・兼業・競業行為と懲戒処分の枠組みを踏まえ、本稿では、兼業・副業が発覚した場合の会社側の具体的な対応を、より実務的に整理します。
会社側専門の弁護士の立場から、兼業・副業が発覚した労働者への懲戒処分の可否を解説します。
01兼業・副業への懲戒処分の原則不可
兼業・副業は、労働時間外の私生活上の行為ですので、労働契約における規律・秩序を保持するための制裁である懲戒処分の対象とはならないのが原則です。近年、政府も副業・兼業を推進する方針をとっており、単に副業をしているというだけで懲戒処分を行うことは、原則として認められません。
02懲戒処分の検討が必要になる具体例
もっとも、就業規則で無断兼業・無断副業の禁止規定があるにもかかわらず無許可で兼業・副業している場合、兼業・副業が原因で何度も欠勤している場合、兼業・副業によって業務に支障が生じている(兼業・副業で深夜まで働いているために遅刻や居眠りが目立つ等)、競業会社の役員になっている等の場合には、懲戒処分を検討する余地が生じます。
これらの共通点は、単なる「兼業・副業をしている」という事実だけでなく、①就業規則違反(無許可)、②本業への具体的な支障(欠勤、遅刻、居眠り等)、③競業避止義務違反(競業会社の役員就任)といった、追加的な問題が伴っている点です。809・810の記事で解説した競業避止義務の考え方も、この文脈と関わりがあります。
03注意指導から懲戒処分への段階的対応
上記のような問題がある場合には、いきなり懲戒処分に踏み切るのではなく、兼業・副業を辞めるよう書面で注意指導しましょう。それでも改善しない場合は、懲戒処分を検討していくことになります。この段階的な対応は、791の記事で解説した懲戒処分の手続的相当性(弁明の機会等)とも通じるものであり、いきなり重い処分を科すよりも、まず注意指導によって改善の機会を与えることが、後の紛争予防・処分の有効性確保の両面で重要です。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、まず、就業規則に兼業・副業に関する規定(許可制、届出制等)を明確に定めておくことが出発点になります。そのうえで、兼業・副業を理由に懲戒処分を検討する際には、単に「兼業をしている」という事実だけでなく、無許可であるか、業務への具体的な支障が生じているか、競業関係にあるかを、客観的な資料(勤怠記録、遅刻・欠勤の実績、業務パフォーマンスの低下等)で裏付けられるようにしておく必要があります。
注意指導を行う際には、書面で行い、改善を求める期限を明示し、その後の改善状況をフォローアップする体制を整えることをお勧めします。この過程を記録化しておくことが、最終的に懲戒処分に至る場合の有効性を支える重要な証拠になります。
05よくある質問(FAQ)
Q. 従業員が副業をしているだけで、懲戒処分できますか。
できません。兼業・副業は私生活上の行為であるため、原則として懲戒処分の対象にはなりません。無許可兼業、業務への支障、競業関係等の弊害がある場合に検討対象になります。
Q. 副業により遅刻や居眠りが目立つ場合、どう対応すればよいですか。
まずは書面で兼業・副業を辞めるよう注意指導することをお勧めします。それでも改善しない場合に、懲戒処分を検討していくことになります。
Q. 従業員が競業会社の役員に就任していた場合、どうすればよいですか。
懲戒処分の検討対象になり得る典型例の一つです。まず注意指導を行い、改善しない場合は懲戒処分を検討します。競業避止義務の観点からの対応もあわせて検討が必要です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。兼業・副業への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日